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銀皮88 役者インタビュー #4 ナカメキョウコ(エイチエムピー・シアターカンパニー)

空降る飴玉社のクラシックシアター
『銀皮の中のY(M)は、88℃の熱さを知っている。』
役者インタビュー #4 ナカメキョウコ(エイチエムピー・シアターカンパニー)


Q. 今作で演じる役はどのような人物ですか

ナカメ:皆のお姉さんタイプだと思う。皆はいろいろなことに悩んでいる最中だけど、悩みを一回抜けてしまった人。抜けたら抜けたで、日々があるよっていうことを知っているし、悩んで諦めてっていう辛さも知っているし、一歩引いてじゃないけど、達観して眺めている。眺めながら応援している人。

–ご自身と近いところはありますか

ナカメ:京都でお芝居やらせてもらうと若い人と絡むことが多くて、話聞いていたり悩んでいる様子を見たりしながら「ああ、こんな頃もあったな」と思う。それはそれで、なんとかなるもんだよって思いながら、真っ只中にいる人たちは大変なんだなって思っている節はあります。まあ、続けている限り、新しい悩みは次々と出て来ますけど。

–悩んでいるところから抜け出したきっかけはありますか。何がターニングポイントだった?

ナカメ:もともとは劇作とか演出をやるほうだったんですよ。自分で劇団を立ち上げてて。でも、学生のときからやっているけど大学を卒業したら就職する子もいるしお芝居やらない子も出てくる。(そうしていくうちに)二人ぐらいでやってて、もう一人の子も家の事情でやめなきゃってなって、一人劇団になった。そこから私が表に出ないことには自分の劇団の名前が表に出ないと思って客演とかやるようになった。だから演劇やっている期間は長いけど役者やっている期間は比較的短い。
そうこうしていたら、エイチエムピー・シアターカンパニーに出てみないかって話が舞い込んで、役者として所属しています。猫壺企画という自分が脚本を書いて演出する集団の名前も一応残してはいるけど、今は出演するほうが多くなっています。

–そうですよね、よくナカメキョウコというお名前を拝見します。ご自身でも様々な背景がある中で、一番応援したい登場人物は誰ですか

ナカメ:意外と…意外じゃないか、悟衹くん。悟衹くんは悩み方が真っ当。多分、うまくいかないと思うんですよ、彼。この先彼の悩みはまだまだ長いんだろうな。だから、頑張れって。(笑)


Q. 今作の印象について聞かせてください

ナカメ:前に一度観たときに、すごく丁寧に物語をつくるんだなという印象が強かった。その印象は今も変わらず、やっぱり丁寧につくっているんだなって思いますね。ここしばらく、会話劇の出演が少なくて、ちょうど会話劇をやりたいと思っていた、細かく心情を考えられる稽古場なので久しぶりの会話劇として関わる作品としてはよかった。

–普段はどんな作風ですか

ナカメ:所属しているエイチエムピーがフィジカル系。身体性で表現していくほうなので、台詞は当然あって会話もしているけど、一般的な会話劇とは異なるので、そういった作風に出演するほうが多かったです。

–一風変わったナカメさんが見られるということですね。


Q. 珈琲がテーマということで珈琲にまつわるご自身のエピソードがあれば教えてください

ナカメ:濃い珈琲が好きなんですよ。なんで好きなんだろうって一生懸命考えていたら、大学入ってすぐぐらいにバイトしていた店が、お肉屋さんが出している喫茶店兼レストランみたいなところで、そこだと1日通しで入ると朝昼のご飯が出るのとマスターが晩御飯まで持たせてくれるんですよ、貧乏学生だったから。その店、珈琲は大量に作っておいて、お客さんから注文が入ったら雪平鍋で沸騰させるんですよ。ぐあーって沸騰させるホットコーヒー。それが煮詰めたような濃い珈琲だった。朝はその珈琲とトースト、昼はまかないと飲みたかったらその珈琲。夕方暇だったら、余らせてもしょうがないからって「飲むか?」と。1日いるとその濃い珈琲を飲む。だからいまだに好きなんだなって。
結構長いことそのバイト先にいたので。マスターがすごくいい人だった。晩御飯持たせてくれるなんてサービス。ピラフとか。で、ある日私に彼氏ができまして。

–おっ!

ナカメ:彼氏ができたって話を他のバイトの子からマスターが聞いたらしくて、ある日突然二人分のご飯を持たせてくれるようになった。喜んで持って帰っていたんですけど、他のパートの人から聞いた話では、「キョウコに悪い虫がついた。腹が立ってしょうがない。」って怒っていたらしくて。「一人分のご飯を持たせたら、キョウコが食べんとその男に食べさせてしまうんじゃないかとか考えたら二人分持たせないわけにはいかない!」と。

–いい話ですね(笑)

ナカメ:いい話でしょ、お父さんみたい。いいマスターだったんですよ。

–家族みたいですよね。今も会いますか?

ナカメ:今ね、全然住む場所が違っちゃって、当時も60代ぐらいだったので元気かなあ会いたいなあって思うんですけどね。うん。だから、そのおかげで濃い珈琲が好きなんです。

–煮詰めると濃くなるんですね。風味飛んでそう

ナカメ:うん。風味は飛んでると思う。(笑)結構古い喫茶店だとそういう淹れ方しているところも多いみたいで、私がちょくちょく行く難波の喫茶店も雪平鍋であっためていそうな感じがする。

Q. 京都と大阪の稽古場の違いについて

–大先輩なので会う前は怖かったんですけど稽古場見ていて意外とよく笑う方だなと

ナカメ:あはは(笑)よく言われます。普通に楽しいので。年上なので、皆さん気を遣っているんでしょうけど、私自身は全然気にしていなくて。
京都来るといろいろな人がいて、私の扱いが雑な人もいるし。みんなそれぞれ面白い。時々稽古見ているとそれだけで楽しくなって満足しちゃう。ゲラゲラ笑っていて「あ、私もやるんや」みたいな。

–京都と大阪の違いとか感じますか

ナカメ:大阪も若手の皆さん面白いんですけど、自分は大阪で長いことやっている分、同世代とその上と絡む機会が多い。この人は、この劇団は、こういう作り方するっていうのがだいたい分かっていることが多い。京都に来ると、そういうのが自分の中でないのもあるし、若い人が多いっていう印象。

–劇団やユニットができてはなくなって、できてはなくなって

ナカメ:そういう集団がいっぱいあってそれぞれぶつかり合ったり切磋琢磨し合ったりしているのが面白いぞと思う。結構京都の雰囲気好きですね。私が来ても「なんか大阪からナカメという人が来た。なんだこの人は」みたいな、私を知らないところから始めてくれるから居心地がいい。

–なるほど。京都に来てくれてありがとうございます!

2019.7.28
インタビュイー:ナカメキョウコ(エイチエムピー・シアターカンパニー)
インタビュアー・編集:しき(來來尸來)

公演情報

空降る飴玉社のクラックシアター
『銀皮の中のY(M)は、88℃の熱さを知っている。』

脚本・演出:加藤 薫

《公演日時》
2019年8月15日(木)14:00/19:00
8月16日(金)13:00/18:00
8月17日(土)13:00/18:00
※開場は開演の30分前です。
※満席時はご予約にて日時指定頂いたお客様優先となります。

《料金》
当日 1,500円
前売 1,300円
Twitter割引1,000円

《会場》
人間座スタジオ
〒606-0865 京都府京都市左京区下鴨東高木町11

《予約》
https://www.quartet-online.net/ticket/ginpi_88

《Cast》
谷内 一恵
音蔵 乙葵
大谷 彩佳(同志社小劇場)
青木 琴音
出町 平次(來來尸來)
坂口 弘樹(勝手にユニットBOYCOTT)
ナカメキョウコ(エイチエムピー・シアターカンパニー)
藤村 弘二

菱井 喜美子(人間座)

《STAFF》
舞台監督 :長峯 巧弥
照明 :御手洗 幸助
音響 :鈴木 邦拡
舞台大道具:ユー(劇的集団忘却曲線/トイネスト・パーク)
舞台美術 :塚田 縁
衣裳 :松崎 雛乃
小道具 :加藤 薫
宣伝美術 :えび天(劇的集団忘却曲線)
イラスト :吉村 紗奈
制作・広報:吉田 香月(LPOCH)、しき(來來尸來)、田中 直樹(劇団ひととせ)、かづちやえ(演劇Unit∮Ring)

《あらすじ》
何百回も何千回も淹れた珈琲は、シンクに捨てられた。

毎年五山の送り火の夜に、祖母が大切な人たちに振る舞う珈琲は、人と人を繋ぐ力がある。たとえ離れてしまっても編んで繋いでいく不思議な力。
私にもいつか、そんな珈琲を淹れることが出来るだろうか。

ある日の夕方、実家にいる弟から電話がかかってくる。

ばあちゃんが怪我をして病院に運ばれた

淹れかけの珈琲をそのままに、私の夢が詰まった店に「closed」の看板をかけて深夜バスに乗り込んだ。

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