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ノエル先生のことは、俺が理解(わか)っているから(月姫Rネタバレあり感想)

※このnoteは『月姫 -a piece of blue glass moon- 』のネタバレを存分に含みます。ご注意ください。




タイトル出落ち100%、それはさておきだいぶ時間が経ったが月姫感想文の後半……の予定だけど、まずはこれを見て欲しい。



月姫のアルクェイドルートEDであるReoNaが歌う『LOST』。作詞作曲の毛蟹さんが同人時代に作った、ある意味でのオリジナルバージョンだ。

何がすごいってメロディラインがReoNaさんバージョンと全く同じなんだよね……10年以上前に作った同人ソングが公式としてほぼそのまま収録とか、この前のシャーマンキングの『恐山ルヴォワール』もそうだけど凄まじいことだよね。もう『LOST』を見ながら月をみたら条件反射的に泣く怪しい男が完成しました。どうしてくれる

日本語歌詞もまた2人についての激情に溢れてて、

『呼吸をする様に
 血を吐き出す様に
 枝を伸ばす様に
 弧を描く
 嘘を奏でた事
 優しかった事
 手を繋いだ事も
 思い出せない』

……月姫、というか志貴とアルクへのクソデカ感情が過ぎるでしょ。リメイク版の『LOST』歌詞と比較して聴いてもう情緒が死にそう、今なら死の線まみれな気がする俺の感情。

ということで『LOST』の宣伝も終わったのでさっそく本題に入ろうと思う。大まかにはシエルルートについて、月姫全体の感想について、細かいネタについて、そしてノエル先生について。

なお前回みたいな口調の気取った語りはしないです。アルクェイドルートだからこそああして語りたかったっていうのもあるし、あと文章作成のカロリーが高い。さくっと雑に語りますので、お手隙ならばお付き合いくださいませ。あ、もし前編を読んでいないのならぜひそちらもどうぞ。


・シエル is ヒロイン

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前にも語ったけど、俺はこの月姫Rが初めての月姫で、原作はおろか漫画版すらちゃんと読んでなかったんですよね。そのせいで俺の中のシエルって

・カレー狂いの聖堂協会シスター

・黒鍵投げる

・なぜかパスタにされた人

・アルクとは志貴を取り合って仲良くはない(byカニファン)

くらいのイメージしかなかった……改めてみて酷いな、エロ同人だけで得た東方キャラのイメージよりあやふやが過ぎるだろ。

で、もう俺がアルクルート終わって感情ぐっっちゃぐちゃになったまま、ただ流れでシエルルートやってたんですよ……最初、分岐ミスってアルクルートもう1回行っちゃったけど。それでしばらくやって感想が

『このカレー女……もしかして、ヒロイン!?』


最低な事前イメージからの最低な評価にも程がある。いやなんていうか、シエルルートとはわかってたんだけど、このキャラをヒロインとしてまっったく認識してなかったんですよ。なんでかわからんけどシエルがヒロインだっていう事実に結構改めて驚いた。事前の公式供給がカニファンくらいだったとはいえ、どんだけなんだよ俺の事前認識。

よくよくちゃんとやると割と好みな感じなんだよね……健康活発系な雰囲気とかより先輩キャラってところは好みにヒットしてたし。編み上げブーツにあのシスター服とか、決戦服とかはモロに大好き。ぴっちりスーツにゴテゴテアーマーとか最高ですよ。

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それでシエルルートなんだけど、全体を通すと『きのこ好き放題したんだな』ってまず思った。だってTrueのあれ絶対原作こんなんじゃなかったでしょ、ウルトラマンアルクなんて前作で出てたら絶対にネタになってたハズだろ!って月姫Rも前作もやった友人に確認したりしてたよね。というかあれヴェルバー!?あれ君アヴァロンで剪定されてなかったらエクスカリバーされてたんじゃありません!?1ヶ月前くらいに見たぞ!!!!どういうことだきのこ!!!!!!

……っていうのをネタバレ厳禁なせいで語れる相手が中々いないのは結構辛かった。コロナ感染して自宅療養中に進めまくって、語れる友人との速度の足並み乱してたのは俺なんだけどさ。


とまぁこれは展開についての感想で、それじゃあシエルって女はどうだったのかって話なんだけど。思ったのは『君けっこうアルクに近しい感じあるね?』って感じだった。これ直に言おうものなら殺されそうだな。

なんていうか、結局シエルも何もかもを簒奪されてどうしようもなくて、それでも空回りしながら足掻いてた女の子だったんだよね。そこで空っぽなのに、それでも他人へと手をのばす志貴を見ることで自分を振り返るって話。

決定的で、そしてシエルルートで一番好きだったのはやっぱり、もう一度シエルが立ち上がる『ルナ・ボウ』だ。

月の虹。戦う理由も、それを支える心も全て失った夜に浮かぶ、奇跡のような光。ノエルの魂も穢して、己のやってきたことにすら意味も価値も見いだせなくなって。でもそんな彼女に、空っぽのくせに手を差し伸べる“お人好し”。今までは贖罪の為で、許されない為に戦ってた。そこで彼女はもう一度、膝に力を込める。“誰かのために”戦おうとする、その優しさに応えるために。

……ツイッターでもこの前呟いたんだけど、この『一度膝を折って、それでも違うものを頼りにもう一度立ち上がる』って展開が死ぬほど性癖なんだよね。ありがちで王道だけど、それでも好きなものは好き。

それが奈須きのこの世界だと、改めて立ち上がる理由が本当にささやかなもののことが多くてそれが本当に良い……キャストリアにとっては名前のない妖精だったり、臙条巴にとってはそれは家族だったり。そしてシエルにとっては、それは自分の善性なんかを信じてる、空っぽなはずの人間の祈りだった。


『そんな人が、自分わたしの為に願うと言ってくれた。
それだけの強さを持った人が、わたしなんかを選んでくれた。

なら――――わたしも、その価値を示さないと。
それだけが、自分に残された意義だと思い出した。』


ここ普通に泣いてた。いやさ、正直シエルのことヒロインとすら最初認識できてなかったし泣くとは思ってなかったんだよ。BGM『月虹』と合わせてここの演出本当に刺さった。アルクの『旅の終わり』と同じく、ここも盛り上がりとBGMの合わせたシーンが最高なんだよな……まぁお前の涙腺ガバガバだって指摘は認める、『ハイスクールD×D』のイッセー vs サイラオーグですらガチ泣きした男だ俺は。

シエルとしての救い、彼女としての物語ってある意味ここで決着してると思うのよね。後の話は蛇足ってことではないけど、Trueの話なんて盛大な痴話喧嘩にアイドルの認知を迫った厄介ファンが合流してるって話だからな。改めて短く纏めるとひどいなコレ。

というわけで次は認知求める厄介オタク君ことロアについて。


・ロアという良い悪役

まぁでも彼のことは軽くだけ触れときたいというか、纏めると上記の通りでどうしようもない。ただ前のnoteの通り俺本人としては彼に嫌悪感もそんなないし少しシンパシーみたいなものを勝手に感じているまである。

手段としての永遠を求めたはずが、月光に惑って永遠を目的にした神学者。そしてその月の美しさに狂って、最後の最後は『俺を見ろ』とばかりに彗星のようにアルクェイドを志貴と共に討ち果たす。

なんていうか、俺の中で憎めない悪役というか、かなり好きな方なんだよね。俺の好きな悪役でいうと未だに『魔人探偵脳噛ネウロ』の“電人HAL”がダントツなんだけれど、こいつとロアには共通点がある。たった1人への深すぎる愛情もしくは激情だ。

悪を為すことを自覚してなお行う人間の原理として、そこがたった1個人を理由にするものが完全に自分の性癖なんだよな。思いの原点オリジナルはささやかなものでいい。それこそ先に述べた、折れた膝を再び掴む理由もそう。たった1人を対象にするが故の感情の濃度の濃さによって突き動かされている姿が、純粋に好きだ。もちろんあまりに自己勝手すぎる理由もあるし、執着してれば何でも好きってわけではないけど。白純くん君のことだぞ。

だからロアのことはかなり好意的に見ている。月に惑ったあとの行動はもちろん純然たる悪であろうが、彼の意識は既にただの術式に成り下がろうが、その根底は変わっていない。それこそ電人HALのように。好ましい、とてもいい悪役だった。


・細々した要素とかとか

ちょっと細かい要素を語ると、ほんのちょっとしか出なかった要素とかすげえ好きなのが多かった。アル美先生のメガネがあるのに、エ○チシーンでメガネ選択肢ないのおかしくない??PC版ではあるんだよね???

あとはアルクのドヤァの立ち絵とか、作中2回くらいしか使われて無かった気がするけど印象に残るよね。アルクかわいい。ホントにずっとかわいいなコイツ。シエルルートの最中ですらかわいいんだもん。

あとやっぱパスタだよパスタ。あれもうクッソ笑ってたけど、伏せてる意味もひでえだろ。『俺はカレー版の先輩を食べてくるから、お前はパスタ版の先輩でも食ってろ』とすら読める。やっぱきのこアニメ版月姫に対して未だ根に持ってるだろコイツ!まぁその後のufotableによる怒涛の型月アニメ化の作品を観るとどうしても比べちゃうところはあるのかもしれないけど。ufotableさんどうですか……?って思ってたらまさかのまほよアニメ化。びっくりして腰抜かしたゎ。マンパワーが尋常じゃねぇ。でもワンチャンでアルクルートのアニメ化お願いします。


・ノエルという、強い凡人について

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さてようやく本題、ノエルについて語ろう。どんなキャラか、とかはもうプレイ済みを想定してるので省くとして、俺はこいつに本気で救われて欲しいしその意味でのノエルルートが欲しいってずっと思っているんだよね。当然のことながら見た目と声と正確はどストライク。イケナイ誘いをする女教師かつ聖職者とかエロゲかよ、って感じでしょ。なんでこいつ原作のときにいなかったの!!!今からでもイベントCG描いて社長!!!!!

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ノエルの始まりは純然たる被害者だ。もちろん、災害に巻き込まれたようなものでありそれはどうしようもないただの不運でしかない。でも何が不幸って、あの災害で生き残ってしまえたことが最大の不幸だったと思う。これが既に救いようがない

日常は凄惨な事件で跡形もなくなり、生き残ってしまったが故に一生飼い殺しか代行者としての道しか残ってなかった。死にものぐるいで代行者の道を選んだ先には、ロアに乗っ取られていたとはいえ自分の日常幸せを奪った張本人たるシエルが上司。不幸の連続にも程があるし、繰り返すがここまでの中に彼女に非は無い。

理性的に考えれば、シエルだって被害者だ。それでも理性だけで感情のケリがつくのならこんな簡単は話はない。シエルと同じように、ノエルは元々ただの女の子だったのだから。同じ事件に巻き込まれ、どちらも被害者ではあるが当事者たちの意識はまるで違う。シエルは己をどうしようもない悪で加害者だと認識し、ノエルは純然たる被害者でしかない。彼女たちの関係においてどっちが強い影響かって、それは当然マクロよりミクロの方がより彼女たちにとっての真であることは言うまでもないだろう。

凡人ならばここで心折れて当然だ。でもノエルは凡人でありながら、己を偽り続けてどうしようもない努力を続けてきた。彼女はただの凡人ではない、不幸な苦境にそれでもと彼女なりに足掻き抗う強く気高い凡人だ。

吸血鬼に対する異常な嗜虐性とかはあるけど、悪を持たぬ人間はいないというか、彼女の苦境を考えれば正直許容範囲内だとも思うのよね……苦しめた吸血鬼の中に自分と同じような被害者がいたかもしれないけれど。それでもまぁ、彼女が受けた苦痛とそれに対する取り組みに対して、帳消しにする程かと聞かれれば否と思う。俺が入れ込んでいるせいかもしれないけどさ。


何より奈須きのこが彼女について語った4Gamerとの対談でも、彼女については凡人――というより、ある意味等身大の当たり前の人間性を持った人物として描かれているとしている。

『奈須氏:
 シエルに比べて弱くて頼りなーい,でも裏にはシエルの影がちらついて……という。でもシエルルートでは超人ではないからこその葛藤を,プレイヤーに投げかける役どころになりました。
 悪人ではないけど善人でもなくて,努力もするけどサボりもする。ズルいところもあるし,自分かわいさで悪に走ったりもするけれど,でもそれって,責められる? 皆だってそうでしょ? といったような。』


4Gamer.net 今甦る真月譚,新生「月姫R」クリエイターインタビュー。奈須きのこ&BLACK両氏が語る世界の裏側,そしてこれから より引用

空虚のまま他人の幸せを願う志貴や、どこまでも人間らしい怪物のアルク、とてつもないつよさを持ったシエル達――目も眩むような光を放つ、どこか超人然とした人間性を持つ人々――とは決定的に違う。善も悪も内包するどこにでもいる僕らの隣人として描かれているのが、ノエルという人間だ



シエルルートの最後で彼女は壊れてしまう。吸血鬼に噛まれ、体調は悪化する中で自分の仇敵と目されたロアを宿す少年はよりにもよってシエルに庇われる。プレイしながら『コレが人間のすることかよぉ!!!!』って叫ぶしか無かった。きのこ虐めるときとことんまで虐め抜くよな、先生そういうのどうかと思う。ノエル視点だとあんまりでしょうに。酷い目に合いながらも、それでも自分を支えてきた中にあったであろう敵討ちの機会が目の前に転がってきたっていうのに、あろうことかそれを阻むのはかつての加害者だ。『お前はずっと被害者でいろ』と言われるに等しい仕打ちだ。

そしてかつての加害者であろうシエルはおよそ人間性を喪っているようにノエルは思っており、加害者としてのより酷い目に自ら飛び込んでいるからこそノエルの精神の均衡は保たれていたのだ。なのに人間らしい心なんてものを得ようとしているシエルが、自分を阻む。奪われた日常幸せを、奪った側が得ようとしている。私の幸せを返せ、という彼女の叫びを誰が否定できるっていうんだ

体調は吸血鬼化ではなく、ただの風邪か何かだった。でもそれに気付けなかった、だって彼女は凡人だったのだから――繰り返すが、あんまりだろうにこんな仕打ちは。ただの凡人だったのに、強さで苦境を乗り越えようとしたのに、凡人故に地獄に行くなんて。

だから俺はノエルルートが欲しい。凡人でありながらも、それでも彼女なりに藻掻き続けて幸せを願ったノエルが幸せになる未来ルートが欲しい。俺の独りよがりな勝手な同情心かもしれないけど、この感情はずっと心にあった。最悪有彦とくっつくサブルートでもいいから幸せにしてくれません?俺はノエル先生のエ○チシーンとウェディングドレスが見たいんだよ!!!!!


まぁ冗談はさておき、とりあえず語ろうと思ったことは語れた。細かい設定とか、キアラお前とかまぁ語れるネタは尽きないのだけれど、ここで筆を置くとしよう。こんなネット世界の片隅の文など、当然ながら公式に届くはずもない。それでも自分なりの感想をまとめて、欲求をぶちまけることで満足を得ることはできた。ここまで感想をぶち撒けたいと、どうしようもなく語りたいと思えるくら入れ込める作品に出会えたのは本当に幸せな体験だった。そして次には、赤い月を待つばかり。それまでだいぶ長いようだが、決して待てない時間じゃない。その間に――


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コイツと向き合う時が来たのだ。対戦、よろしくお願いします。