中学部活サボタージュ記

僕は中学校の頃、陸上部に入っていた。
僕は走ることが好きなわけでもなかったし、先生も先輩も嫌いだったのでサボることばっかり考えていた。体育準備室の中で走り高跳びの分厚いマットに二階から飛び降りたり、野球部のボールを屋上にあるプールに投げ入れたり、貯水タンクの上に乗ったり、とりあえずサボるのがかっこいいと思っていたのだ。

ある日、先輩だけが出る地区予選競技会があり、僕と友達のカイは何とかサボる方法を模索していた。
集合より10分早く落ちあって、無断欠席をする魂胆だったのが運悪く行きで先生と遭遇してしまったため、仕方なく他の部員たちと合流し、電車に乗った。
僕とカイはこそこそ、どうやってサボるかを話していたが、いい案が出なかった。もう強行突破しかないと確信した僕らは、どちらも「おばあちゃんが危篤です」と2人揃って、サボる口実第一位のセリフを口にし、怒る先生を巻いた。
僕らが向かったのは横浜。競技会は横須賀の方だったので、割と近かったのだ。着替えをあらかじめリュックに入れていた僕らは、屋根もなくむき出しのホームの先頭で着替えた。どちらも最近買った、つばが真っ直ぐなキャップを被った。これが一番かっこいい格好だった。
部活の遠征の朝というのはとても早いもので、横浜についてもほとんどのお店は空いていなかった。仕方なく僕らはワールドポーターズに入り、2人でその日1番に上映される映画を見た。映画がエンドロールに入り後ろを振り向くと、カップルがキスをしていた。
こんなにグロくて哀しい映画のエンドロールで、大人はなぜキスをするのか、と思った。その3年後、高校生の僕は彼女と映画でキスをした。
映画が終わると外は見違えるように明るくなり、人で溢れ、週末の活気に満ちていた。
次に僕らは、スターバックスで期間限定のフラペチーノを飲んだ。スターバックスはやはり、中学生の僕は日常では行かない場所であったのだ。
次に行ったのは、ワールドポーターズの目の前のコスモワールド。時刻を示す大きな観覧車は11時少し過ぎを教えてくれた。僕らはチケットを買い、ジェットコースターに乗った。こんなんじゃ怖くなくね?と言い合ったけど、思ったよりは怖かった。
次に乗ったのは海賊船を模した乗り物で、一回転をするかしないかを楽しむアトラクションだ。乗っている時、僕はカイの肩を叩き下に唾を吐いてみせた。その瞬間落ちたものだから唾は僕らの足元に落ちた。僕らはそれを見て大笑いをした。
そのあとはワールドポーターズでビュッフェに行って、親に怪しまれないように夕方に帰った。親にバレないかヒヤヒヤしたが、大丈夫そうだった。 
次の日、クラスや部活の仲間にその日あったことを全て話した。

昔の映画を見ると、中学生がタバコを吸ったりエッチなことをしていた。または、暴走族になりシンナーを吸っていた。僕の地域があまりグレている人もいないせいでもあると思うが、以上が中学生の僕の最大の反抗であり、かっこつけであった。
これと言って反抗期もなかった僕にとって、これが大切な思春期の思い出である。

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