雪が降る街

今日都心では初雪が降った。
昼1時に起きて横になったままベッド脇のカーテンを開けると、見慣れた庭が真っ白になっていて、そのまままた寝てしまった。
雪の日、人々は動きが一つ一つ丁寧になると、僕は思う。
電車に乗って地元では栄えている駅の古びたビルの喫茶店へ行く。駅から喫茶店への道は人が多く、髪に降る白い雪も気にせず歩いている。ビルの電灯はひっきりなしにちかちかとオレンジ色に点滅していて、このビルの最後の使命を全うしているようである。
案内されて僕は電車の見える窓際の端の1人席に座る。今日は心なしか喫茶店が盛り上がっていて、ここの常連達が雪の話題で盛り上がっている。
僕はいつも吸っているハイライトではなく、駅前で買ったセブンスターに火をつける。
ブランドコーヒーを飲み、タバコを口に吸い寄せると、セブンスター独特の甘みが口内に充満し、それをまたコーヒーで流し込む。
水を飲むとすぐに店員に注がれるのが申し訳なく、コーヒーだけを飲んでいる。
都心の住人達にとっては、年に一回あるかないかの雪のイベントを楽しむが、その輪に入れない自分を悉く嫌いながら、次のセブンスターに火をつけると、新たな客が隣に座ってきた。
帽子についた雪を払いながら、「ぜんざい!」と言うおそらく齢七五歳の彼を横目に降る雪とは対照に燻るタバコの煙を見ていたらテーブルに灰が落ちた。
黒と白の醜い灰は、申し訳なさそうに机の端に居座った。
明日は高校の同窓会。早く帰ろうと僕は思う。
まだ充分長いタバコの火を消して、僕は喫茶店を後にした。

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