魂をうりかけたとある独りの"がんこ"な髭のラーメン屋の話。と僕の出会い

魂をうりかけたとある独りの髭のラーメン屋の話。と僕の出会い

先に言っておく、

これは僕の中で人生を一番変えたであろうかもしれない人との出逢いである。



ある日、オヤジが言った

オヤジ「おう、ラーメン食いに行こうぜ」

お袋「えー、どこどこ」

オヤジ「相模原のー。とりあえず行ってみるか」

当日僕は小学5年生、11才。
この時僕の人生の歯車が狂い出すとは。


およそ20分くらい
車に揺られて親父が手探りで車を進める中

オヤジ「この辺なんだよな~、あーあったあったここじゃねー」

「駐車場ないからこことめるか」

近くの駐車場に止めて店の前に来た


なんだか、不気味である。


真っ黒のせり出した壁に、やたら小うるさい文句のような。

会員制のラーメン
約束守れない人はお断り。

ぶっとい牛骨がチェーンでガラガラとぶら下がる

「なんだここは、」


ラーメン屋とはあきらかに違う出で立ちに不信感が募る。

何人か並んでいるので後ろに並んでみることに


この日は一般開放
「悪魔と天使だけ、自己責任で。」

当日僕は意味が分からなかったけど、とりあえず店内に入ると店先とは明らかに違う明るい中華そばのカウンターの店。風。


店内に入ると凄い鶏の香り。と、きょーれつな醤油の香り。

カウンターの後ろのベンチで待っている。
今でも鮮明に覚えているのはカウンターの、左に座った常連らしきおじさんが天使の後悪魔を食べて連杯してたこと。

待ってる間に店内を見渡すと
張り紙&張り紙

家系、博多顔負けの
麺のゆで時間5秒単位の指定から、スープの濃さ約10段階、香味油選べます。
から始まり
ケータイ禁止
とか。マナーに関するまで。

ちょっとビビるよねw


ラーメンに、ついてだけど、

あ、そうそう天使と、悪魔っていうのは
年末になるとやるイベント的なやつで

「天使の塩ラーメン」

「悪魔の醤油ラーメン」
てのがあるんだ。

天使の塩ラーメンはまじで優しい。むしろ薄いくらい。スープを大事に大事に育てた味でございますが


悪魔はヤバい、
悪魔👿デビル肉が乗る。

一言で言うなら
「しょっぱい」。

スープ「しょっぱい」
肉「しょっぱい」
全てが
「しょっぱい」

悪魔の由来は3回食べると病みつきになり、辞められなくなってしまうから(悪魔に取り憑かれたように)欲する かららしい。真相はわからない。


家族3人、共にラーメン好きだった

そして、出てきたラーメンを、すすって口にしたオヤジとお袋はなんだこれ、と度肝を抜かれたよう。

半分怒りながら?こんなしょっぱいのによく並ぶよ、と店を後にするオヤジとお袋。



普段食べ慣れない人が、普通の人向けに作られてないラーメンを食べるのだから文句がでて当然
むしろ店からしたら自分からそんな日に来て文句を言うならそれこそ文句をいいたいと思うはず


そんな中、会員制のラーメン屋であるが故、会員になりたかった小学5年生の僕。

くそしょっぱいスープの中で、真っ黄色の妙に太い麺はえげつねぇうまかった。

帰り際
「どうやったら会員になれますか?」

髭の大将「んぁぁ、今度来たときに、悪魔の日に来たっていってくれりゃイイから」

「ふーん」

なんてふてぶてしい子供だろう。2回り以上違う髭の大将にむかって、ふーんって、自分でもかわいげがないと思う。


そんなこんなで中学生になった。
自転車で通学するようになり、駅前の学習塾まで自転車で。

部活もやってたし。腹も減っていた。

そんな中、ふと気になった


いつぞやのあのラーメン屋、どうしたんだろう?




その時
何かが動き出した。


記憶を頼りに、セブンイレブンの近く、交差点。

あった、この店だ


ほう、どうやら一条流がんこと言うらしい

「骨がぶら下がってたらやってるョ!」

あぁ、ぶら下がってるわ。

入ることにした。
謎に、店にはいるまでに2枚の扉をくぐる。

相変わらず。へんな赤紫の照明をくぐると、普通のカウンターの中華そばの店があった。

「あのっ、悪魔の日に来たんですけどー…」

大将「おー、満席だから後ろ座ってて」

スクッと座った。
スクワットしたわけではない。


大将「うちはね、まず初めに醤油か塩、普通のラーメン食べて貰ってんだけど」

「じゃあ、醤油で」

大将「はいよ」


しばらく待ってると出てきた

大将「ハイ、お待たせね。醤油」

ちなみに。今でもハイお待たせね、○○
は変わらない口癖なのである。

麺とスープを啜った


ごめん、ちょっと読んでもらってる人には悪いんだけど

【ウマくてウマすぎてウマかった】

しか言えないんだわ


ウマかった。
とにかく、肉も柔らかくて(バラがお気に入りだった)麺もプリプリ、スープも、鶏にカツオと昆布がきいてうますぎた
穂先メンマが気に入った

目が輝いた

まさか、このラーメンに溺れることになろうとは。

帰りに会員証という名の骨の絵の書いた名刺カードをもらい店を後にする。

ところが大変、
何日かすると、また行きたくなる

完全に中毒である。

またいく。
また醤油ラーメン

ちなみに、22才以下は500円で3玉までラーメン食べれる
これはたまらなかった

2回目帰り際に
「メンマのせれますか?」

大将「50円ね。どんぶりにいれて」

当日この店は、どんぶりの中にお金を入れて、おつりをどんぶりの中から取るセルフスタイル。

前には
お金は不潔だから触りたくないよ、的なことが書いてある。

なんか、髭の大将、可愛い。

そして気づいたら
週5で通っていた

死ぬ、、確実に。

そんなことはお構いなし
体がそっちに向かっていた。


平均すると週3、
ヤバいときは週5で足を運ぶ
完全にがんこに犯された生意気なクソガキが出来上がった

ある日、塾の友達が言う

「おまえ、いつもふらっと居なくなるけど、何してるの?」

「ラーメンくってる。」

「今度俺も行くわ」


そんなこんなして、その友達もどっぷり

俺と同じ経過を辿った。

生憎そいつは会話のキャッチボールがデキないやつだった。

しかも、めっちゃ濃い味を食う。

謎に大将に話し掛ける
大将忙しそうにしてる
構わず話し掛ける

謎のやつだっだ。

そんなこんなで時は過ぎる。

そんなある日の出来事で得る

2015年くらいだろうか 
世間は増税した。
まさにそのタイミング


ふと、トイレを借りた。

トイレに入って、出ようとした。ドアノブに手をかけたその時
カレンダーくらいの大きさに
「後継者募集 300万」
あとは要件が、かいてあった

冷や汗がでた。

それから何回か通った後、ひっそりと聞いた

「ここ、閉めるんですか?」

大将「うーん、そうね、世の中厳しいもんだよ。誰か後継ぎがいればいいんだけど」

僕は迷った

迷った。

凄い長い間迷った

そしてある日、家で家族で飯を食ってたとき口を開いた

「お袋。300万かしてくれない?俺、ラーメン屋やりたいんだ」

返ってきた一声
「はぁ?なにいってんの、そもそもどこのラーメン屋よ。」

「がんこだよ、がんこ」

「えー?あのしょっぱいとこ?何で急に」

「やめちゃうんだって。俺ずっと通ってたんだ。あの味、無くなるのやなんだよ」

返答は意外にも前向きなモノだった
「はー、もっと早く言ってくれれば。マンションたてて家賃収入だけで暮らせるようにしてやったり、私立の中高なんて通わなくても良かったのに、ほんとにラーメン屋がよかったら早く言ったら何とかしてあげれたのに急すぎて無理!」

ですよね~

そのまま月日が流れ
閉店を迎える

あの時、Twitterでメッセージ送った

「最後なので。よかったら開店前に一緒に写真撮ってもらえますか?」

大将「いいよ~時間あればね。忙しくなりそうだけど」
そんな感じだったと思う

開店の30分前についたら
まさかの大行列。
こりゃだめだ。2時間並んだけどタイムリミット。僕もその後予定で、中に入れなかった。


皆に愛されたマジでウマいラーメン屋はあっけなく店を閉じた。

通りかかる度解体は進み
あの、張り出したドアは何だろうと思うくらい何もないシャッターの、テナントとなった。


また月日が流れる。
実家の家業は歯医者であるが、ちょっとしたコネにより飲食店の経営が進んだ。

幸いにも、歯医者を田舎のハズレのショッピングモールでやっていたこともあり、そのショッピングモールからの空きで飲食店(イタリアン🇮🇹)をやることに。

その評判がよび、飲食店の打診がきた。
建設会社の社長夫人が油そばの店を経営してたことより、なぜかラーメン屋の流れに。

問題は何を売るか、ではなく
「どのラーメンか、」だった。

そんなとき、お袋から話が回ってくる
「誰かいいラーメン屋いない?下町で愛されそうな」

お袋は社長でもある。飲食店、歯医者共に経営もとはお袋で、

あいにく、お袋はよく飲み歩いててそこら中に顔が広かったものの、ラーメン屋には疎いようだった

下町か…
その頃から僕はチラホラ色々ラーメンを食べ歩くようになっていた。

先の記事でも書いたが。ショッピングモール、地域のみんなに愛される。というワードより出てきたのは武蔵堂であった。

が、武蔵堂夫婦とも、お店があるので畳んでこっちに来いとは言えないもので。

お袋が好きなあじ、それは武蔵堂

その路線で攻めるのもありだけど

俺は
俺の好きなものが
俺の育った街相模原で
地元の人に
俺の好きな味で勝負したいと思った。

お袋に
「ひとり、聞きたい人がいるんだけどイイ?間違いない職人が1人いる」

「だれ?」

「がんこだよ」

「ええ?しょっぱいのはモールじゃ無理だよ」

「違うよ。レギュラーで勝負すんの、一回食わせてもらう?まじで腰抜けるぞ」

お袋は怪訝な顔しながらも
そこは母親なだけあって

俺がどうしてもと言うなら、その味でいきたいとのことで落としがついた。

即座にダメ元で連絡した。

とも。いかず、少し迷った

ラーメン屋を開く経緯

伝えて

店をやる人のGoサインをもらわなきゃいけない。

迷ってる時間はなかった

迷ってる時間なんてなかった

だって、俺が食べたいあの味は一つしかないから。

メッセージを送った

「あの時のよねおです。よければ話したいことがあるので電話ください080-xxxx-xxxx」

ご無沙汰です、も挨拶もなく失礼極まりない文だと今では思う

ほどなく1分くらいで知らない番号から電話かかってきた

大将「もしもーし」

ぼく「もしもし」

大将「おー、久し振りだね。げんき?」

こっちが気を使われてしまった瞬間だった。

で、ラーメン屋を開きたいこと、
任せたい人はこの人しかいないこと、
色々話して一度話にくることになった。

久しぶりにあった、3年越しの大将はなんだかげっそりしていた。

庭仕事してるらしい。手を見たら真っ黒。

熱意を伝えた

できるかぎりつたえた

あなたの味に惚れてます、と。

迷った結果意外にもOKの返事をもらえた。

が、事はそううまくいくわけではなかった。

ショッピングモール側が店舗の明け渡しに時間を要したのである。

あれよあれよと月日が流れるうちにどうやら大将はやる気をなくしかけてるようだった。

これは、悪いことをしたな、と思った。
いっそ呼ばない方がいいかな、と思った。

ここから先は僕の勝手なエゴである。

呼んだからには、絶対にウケさせる
俺が信じた味は間違いない

そう思い続けるしかなかった。

あの、何をしたわけではないよ

僕は電話かけただけ。

大将、相当悩んだと思う

自分の店だけど、あくまで雇われるわけであって 

売上をあげなきゃいけない、
食材も制限がある、
好きなときに休めない。

葛藤はあったであろう、
でも渋々okしてくれた。

開店する直前、大将が仲良くしてるラーメン屋の忘年会に呼んでもらった。
そこで、大将の白濁しない豚骨スープを久しぶりに食べた。

勝った
そう思った、これならいける
確信にかわった。

そしてなんとかめでたく開店に漕ぎ着けた。

オープンの日は300人以上の行列。

ほんとに、日本各地から再オープンを、聞いて熱血なファンがたくさんやってきた。

そんなオープンの日はめでたい反面、
ひさしぶりのオペレーションに疲れ果てている大将だった
でも、やっぱり、ラーメン作ってるのはどこか嬉しそうだった

それから、平日の日に落ち着き、
一時は売上がイマイチの日もあった。
でも、食材だけは変えないでくれと頼んだ

お袋にはそれが伝わった
食材に関しては文句は一切言わないことにしてるそうだ

なんでも、その味が好きになって

気がついたら、あんだけしょっぱいとか言ってたお袋も
毎週通う常連になってしまったのだ。

やっぱり、ウマくてしょうがないらしい。

コロナで大変な時期ですが

がんこ。ここ1年くらいなんか急にまた人気が増してきまして

うれしい所存であります。
ご来店誠にありがとうございます。

若い子達もたくさん入って、
まさか、あの、ワンオペしてたおじさんが
俺より若いこと仲良く働く日が来ることになろうとは思ってもなかったけどw

そんなこんなで
今日に至るまで

僕が魂を売りかけた悪魔
がきっかけのお話でした。

死ぬまでこの味は食べたいし

なによりあの時うんと言ってくれた大将には感謝してるし、今時がんこがなかったらどうしてるんだろうと思うことです

よく、オヤジは僕に言った
お前は何でも中途半端

ゲームでも何でもイイ、何か、一つでもやりきったことがあるのか

そう言われると何一つない宙ぶらりんですけど

形こそ無いけど、きっと僕は一条修とそのラーメンを多分日本で誰より愛してます

僕より古くから通うお客さんも居ます。

僕は25才になって、がんこに11才から食べたから人生の半分以上がんこを愛してきたつもりだけど

がんこ愛は誰にも負けませんよ
きっと、僕が一番

それだけは誇れる?(何に誇れるんだ、タダのデブ)

ほんとに、あの時紆余曲折あって
それでも今日まで心おれず厨房に立ち続けてラーメンつくってくれる一条修さんにはほんとに感謝するばかりです

僕の人生はあれを食べるためにあるようなもので。

でもものはいつか終わりは来るもので。
きっと、このまま生き長らえれば、一条修さんは僕より早く死んでしまう。

僕はこの世に生まれてきたのは
後世に一条修が築いたものを残すことだとかんがえている。

今度は僕が恩返しする番だから。

弟子入りは認めてもらうには
歯医者になってなにか一つでも1番になること
それが一条修との男の約束

だから、僕も何か手探りだけど、今の所計画では7年したら一旦落ち着く予定。

だから、死ぬまで厨房に立ち続けてもらう(酷だな…)
悪いけど、追いかけたい背中はすぐそこにありましたね。

僕が人生で尊敬する人、って5人くらいいるのよ

オヤジと、一条さんと
医学部の同期とかいるんだけど

その中で一番っていわれたら間違いなく一条修だね

人生観変わったの。

ずっと歯医者の家庭に生まれてきたから

ありがとうって言う、言葉の重みって少ないと思ってたの
だって。医者歯医者って、痛いのを治すのが当たり前で、それなりの対価をもらうんだから。

でも、飲食店って
お客さんが自ら自分の足で店を選んでやってきて、食べたものにありがとうっていう。
おいしくなかったらありがとうっていわれない、そんな、シビアな世界。

しかも、飲食店って同じものを使ってても違う味になると僕は思っていて、
よくある、息子の代になったら味が落ちたね、とかいうやつ。絶対あると思うの

やっぱり僕も、一条修の味がすきだから、きっとそのラーメンというよりあの人が好きなんだね。

って、いうのをずーーーっと、前に考えてから

一番尊敬する人って言われたら
一番人生観変えられた人
=一条修だと思ってる。

だって、たった800円の、その一杯で人の人生変えるんだから

すごいよ。

ほんとに悪魔😏

なんて、くだらないことを書いてましたが

悪魔に取り憑かれた僕が
どうやって悪魔に取り憑かれたかを書いたお話でした。

ぜひ、ラーメンすきでも好きじゃなくても
一度足をはこんでみて!

相模原市緑区向原4-2-3
コピオ相模原インター店内

元祖一条流がんこ総本家分店相模原

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