Le Cubisme Littéraire

(心象風景)
大事に大事に抱きしめていた小さな袋、事故の時も狂気の日も、それだけは肌身離さず持ち運んでいた袋、中には何も入っていない。跡形もなく、消えてしまっていた。だから私は、空の袋を抱きしめる、ありきたりの狂人になって、それでもいいし、そうでなくてもいい、と思っているから、たぶんそういう所が、ありきたりの狂人なのだと得心する。今日も私は、何も入っていない袋、口をしっかり閉じて、どこに行くにも持ち歩く。

(症状)
かろうじて、このように読み書きはできる。だけど私は、歩く屍だ。生きているのに、死んでいる、という言葉を滑稽に思う人は、それは幸せですよ。歩かない屍の皆さんとの唯一の違いは、可逆性という麻薬を信じられるか否か、それだけだ。

(夢)
帰りたい、という独り言が、死にたいの次に多い。どちらも同じこと、現存在の全否定を無限回繰り返す現存在を生きる、とは、そのような nowhere and nowhere への憧れしか、思うことの許されない生き/死に方である。少なくとも、「こんなんではなかった」のは確か。いつ「こんなん」になったのか、辿ればついこの前のようでもあり、いや、空でぱんぱんの空袋を、それは長いこと浮かれて持ち運んできたようでもあり。

正気が少しだけ顔を出したら、いつも思う。死ぬくらいなら、帰ればいい。そしたら君が言う、「場所と時間を切り離そうなんて、気狂いじみてるよ。」 Exactly, that's what the wise have named NOSTALGIA.

(1005号室)
そこは夢の頂点、愛の結晶、幸せの空間化、病の始まり、崩壊の兆し、rage and misery, 「すべてなくなっちゃったね……」、強制送還と囚われたる流浪、
帰りたい、帰りたい、帰りたい、帰りたい、帰りたい、帰りたい、帰りたい、帰りたい、帰りたい……

(娘、かわいそうな)
いちばん大事なあなたと共有した、この数年は、壊れた父にとっては、鑿と鉋でざくざくと削り抉り投げ棄てたい、そのような数年です。そのことだけでも、私は、惨めで哀れで、ただ胸が潰れる。あなたにだけは、すべてを晒して、何もかもを謝りたい。可逆性の麻薬を信じる、白痴の頭で藁ほどの手応えもない夢を語るのは、何もかも、あなたのためでしかないよ。

(冬)
こんな腐った日々のはるか北には、真っ白な弾むような足取りの日々がある。昨日も、何かを叫びながら目が覚めた。何か? 覚えてるよ、「ぜんぶ、ぜんぶ、違う!」と、私は夢の中で叫んでいたんだ。

(技術)
ねえ、ドクター、そうだねえ、2011年から今日までのあらゆる記憶を消すことはできないか? 多少の危険は構わない、そういうものには、なにも未練はないです。そしてね、出来たら術後に、北の、S駅前に、ただ放り投げておいてほしい。この袋だけ持っていければ、それでいいんです。

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しりん

スーパー素数歳/ 「むしゃくしゃして書いた、なんでもよかった」と述べ、「見えない力に書かされている」などと意味不明の供述を/ 重症筋無力症的 essay

essay/poem

コメント4件

おかえり
おかえりなさい
今更ながら、気付くのが遅れてしまいました
帰りたい 帰れないかもしれない けど多分 帰れるはずだよ #極短詩返信
この宇宙では可逆性ではなくて不可逆性でのみ成り立っていると信じている者です。
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