短編:無題・殺し屋パルプ(表)

警告:暴力シーンとグロテスクな描写が含まれております
対象年齢:15歳以上推奨

――01――

「いいか。手巻きタバコってヤツぁ、分量が大事だ」
無精髭の黒スーツ男は、そう言って薄茶色の紙巻きを咥えた。
「適量がある。闇雲に詰めればいいってモンじゃねぇ」
男の名は不破定(フワ・サダム)……職業・殺し屋

手狭のオフィスには、死体と空薬莢が散乱していた。
カーテンの隙間から差す日光が、吐き出される紫煙を白く映し出す。
荒らされた部屋の中央には、椅子に縛られたジャージ男。
股座は失禁し、顔は恐怖に凍りついていた。

「詰め過ぎれば燃え難いし、味がしなくなる。わかるだろ?」
不破が一歩踏み出し、サンダースの黒革靴で空薬莢を踏みしだいた。
「……い、一体何の話だ?」
ジャージ男は、疲れ顔の中年男と視線を合わし、冷や汗を流した。

「これからお前が喋ることになる話さ」
不破が紫煙を吐きかけると、ジャージ男は激しく噎せ返った。
「ゲホッ、ゲホッ! は、話すことなんか何もねぇ! さっさと殺せ!」
不破は懐からスイス・アーミーナイフを取り出す。

「ハハハ……よし、よし。男ってのはそうでなくっちゃな!」
カチリ。五徳ナイフの白刃が閃く。
「な、何を……」
次の瞬間、ジャージ男の右太腿に、白刃の2/3ほどがめり込んだ!
「ンアアア゛――ッ!?」
男は激痛に悶絶!

「さぁ、大腿動脈が切れたぞ。抜いたら1分で失血死だ。分かったか?」
不破が面倒臭そうに言うと、ナイフを僅かばかり引っ張った!
「ザッケンナテメッ……ア゛――ッ!」
ジャージ男は天を仰ぎ、脂汗を垂らして全身痙攣!

――02――

「て……手前、何モンだ! 何だって俺たちを狙いやがる!」
不破は気怠げに紫煙を吐いた。唇に巻紙が貼りついて裂け、舌打ちする。
「俺が聞きたいのは、お前らが攫ったアバズレ女の行方だ……」
ジャージ男が身震いした。

彼の脳裏に、数日前に現れた二人組の姿が蘇る!
『俺たちのことは詮索するな。命が惜しければな……ククク』
体長2メートル近い、アロハシャツの筋肉ハゲ男!
隣には、血のように赤いスーツを着た、冷酷なインテリ眼鏡男!

「何か思い出したって面だな。違うか?」
不破は、背負った緑灰色のカービン銃……SAN SG553Rに手を伸ばす。
銃にはサイレンサーと、グレネードランチャーが装着済みであった。
不破は咥えタバコで、おもむろに銃を構える!

銃口の先に転がる死体!
シュボンッ! サイレンサーが硝煙を噴き、死体の茶髪頭が爆散!
「お……俺たちは、ただ連れて来いって言われただけだ!」
ジャージ男が再失禁し、懇願めいて叫ぶ!
「よし、よし。雇い主は誰だ」

ジャージ男は視線を彷徨わせ、口を噤んだ。
「引き伸ばし作戦か? その手は食わねぇ」
不破は紫煙を吐くと、レビュートーメンの懐中時計を取り出す。
「時間切れだ……」
わざとらしく文字盤を眺め、ジャージ男に屈み込む!

「か、かかカレイドケミカル! 確かそんな名前だった!」
ナイフが引き抜かれ、噴血!
「ナンデ――ッ!?」
不破はジャージ男の襟元で、淡々と血を拭った。
「ウワ――ッ!」
絶叫する男を背に、不破は踵を返して歩き出す!

――03――

帝都に輝く摩天楼! 威容を放つ、製薬会社・カレイドケミカル本社ビル!
地下駐車場のゲート前に、1台のプロボックス!
「ムグーッ、ムグーッ!?」
荷台に縛られた黒ドレスの女! 猿轡を噛んで暴れ、豊満な胸が揺れる!

『社員証ヲ提示シテ下サイ』
「エッ、社員証!?」
運転席から飛び出さんばかりのアロハ筋肉ハゲ男が狼狽!
「忘れたのか、馬鹿野郎!」
助手席のインテリ眼鏡が叱責!
「クソ!」
筋肉男が瞬間的に激怒し、ゲート端末を殴打!

ガガーピピピ! 画面に走る砂嵐と、端末から吐き出される駐車券!
『ガガピー……オ疲レ様デス!』
「この手に限る!」
筋肉男が駐車券をむしり取ってキメ顔! 白い歯がキラリと輝く!
インテリ眼鏡は呆れ顔で頭を振った!

ブロロロンッ! ターボ音を轟かせ、プロボックスは駐車場構内を疾走!
ギャリギャリギャリッ! エレベーター前でドリフト停車!
インテリ眼鏡と筋肉男は、即座に降車!
荷台を開くと、筋肉男がドレス女を肩に担ぎ上げる!

「ムグーッ、ムグーッ!」
女が暴れ、豊満な胸も暴れる!
「大人しくしろ、このアバズレがッ!」
スパンッ! インテリ眼鏡が、豊満な尻を平手打ち!
ポーン! エレベーターが開くと、白詰襟の警護社員が無数に歩み出た!

白詰襟の群れが左右に割れ、長身で杖を突いた眼帯男が登場!
傍らには背の低い、白衣の老研究者!
「お疲れ様です、専務! 回収した『素体』をお届けに参りました!」
「よくやった。これで、計画の完成まであと一歩だ!」

――04――

ドルルルッ! 深緑の矢めいて、路上を疾走する旧式クーペ!
ボルボ P1800E……不破の愛車だ!
エンジン全開で水溜りに飛び込み、派手に水飛沫を散らす!
ワイパーが泥水をかき分け、冴えない無精髭の中年顔を映し出す!

不破は片手でブラックベリーを操作した。
ズド―――――ンッ!
ルームミラーの向こうで、雑居ビルの3階オフィスが爆発炎上!
制圧したチンピラたちの拠点だ!
不破はミラー越しに黒煙を一瞥し、咥えた紙巻きに火を点ける。

ポタッ、ポタッポタッ……ザザ――ッ!
鏖殺された犠牲者の魂が天に上り、メガロポリスの黒雲が涙雨を降らす!
不破はサンバイザーに挟まれた写真を取り、女の横顔を一瞥した。
「殺人ウィルスの保菌者(キャリア)……か」

カレイドケミカル本社ビル!
不破は荒っぽいハンドル捌きで、車を歩道に乗り上げて急ブレーキ!
噴水めいた水飛沫が、通行人のビジネスマンをずぶ濡れに!
「バカヤローッ!」
ビジネスマンが傘を投げ捨て、車を睨んで激怒!

不破は助手席のSG553Rを掴むと、残弾を確認して降車。
すかさず詰め寄るビジネスマン!
「30万のスーツがパァじゃねえか! 弁償できんのかコラァ!」
「何か言ったか?」
ビジネスマンは、不破の銃を見るや否や走り去る!

激しい雨が、不破の黒スーツを一瞬で水浸しに変える。
不破は感情の窺えぬ無表情で、正面玄関へと続く石段を昇った。
カレイドケミカルの野望などどうでも良い。
彼はただ、依頼に従って敵を殺戮し、女を奪還するのみだ。

――05――

エントランスホール。
芝居がかった回転ドアが、濡れそぼつ不破を迎え入れた。
豪奢な総大理石の床に、滴った水が足跡を残す。
「何だあいつ!?」
「銃、銃持ってるぞ!」
「警備員――ッ!?」
突然の闖入者にホールは騒然!

ただならぬ雰囲気に、駆け寄る警備員たち!
腰のホルスターから、ストライク・ワン拳銃を抜き放つ!
「貴様、止まれ! 動くと撃つぞ!」
「止まれと言ってるんだ!」
ドン、ドドンッ! 容赦の無い発砲! だが威嚇射撃だ!

「「「ギャーッ!?」」」飛び交う絶叫! 逃げ惑う人々!
不破は赤子をあやすように、顔の横で両掌をひらひらさせた。
三人の警備員が拳銃を構え、注意深く歩み寄る!
次の瞬間、不破は懐から緑灰色の二挺拳銃を抜き放つ!

警備員たちは銃を構え直すが、遅い!
不破が片目を窄め、獰猛に笑った!
シュボンッ、シュボンッ、シュボンッ!
両手のスフィンクス・SDPが、サイレンサーの銃口から硝煙を噴く!
警備員たちの手から、拳銃が弾け飛んだ!

「三下はすっこんでな! 命は大事だぜ!」
警備員たちは冷や汗を流してホールドアップし、壁際まで後退した。
スーツ男は欠伸をこぼし、床の拳銃を蹴ってカウンターに歩み寄る。
「どうもー。危険物の回収に伺いました」

薄桃色の制服を着た受付嬢たちが、視線を交わした。
ビガービガービガービガー! 鳴り響く警報音!
「ま、そうなるか」
シュボンッ! 受付嬢のイヤリングが爆散!
「次は頭撃つぞ。余計なことすんな」
受付嬢は無言で失禁!

――06――

総ガラス張りエレベーターの外には、雨打つメガロポリスの幻想的風景。
ビガービガービガービガー! 警報音と赤色点灯!
「何の騒ぎだ?」
「ムガーッ、ムガーッ!」
インテリ眼鏡の呟きと、筋肉男に担がれ暴れるドレス女!

「ヤツら、取り返しに来たか。三下を雇ったようだな、輿水(コシミズ)」
眼帯男は床を杖で突き、冷笑めかして低く告げた。
「ハッ! 面目次第もございません!」
輿水と呼ばれたインテリ眼鏡は、素早く45度敬礼で謝罪!

ピピピ、ピピピ! 緊急連絡の電子音だ。
輿水は血のように赤いスーツの袖をまくり、スマートウォッチを確認。
「相手は一人か。安く見られたもんだな」
「俺たちが出張るまでもねぇ!」
筋肉男がつまらなそうに吐き捨てた。

そして、エントランスホール。
ポーン、ポーン、ポーン! 数基のエレベーターが立て続けに到着!
武装した白詰襟たちが、続々と吐き出されてホールに集結!
彼らの手にはPP2000短機関銃! 警備員の拳銃より遥かに強力だ!

指揮官の女がA-91ブルパップ銃を携え、ブーツの音を響かせ颯爽と現る!
白詰襟の豊満な胸元に、社員バッジが輝く!
「フルオートの使用を許可する! 客人を丁重に”おもてなし”しろ!」
ガシャッ! 女は銃に弾を装填した!

「「「「「イラッシャイマセ! ゴユックリドウゾ――ッ!」」」」」
バラバラバラバラ――ッ! 白詰襟たちが前進しながら短機関銃を乱射!
吹き抜けの2階からも援護射撃だ!
受付嬢たちは慌ててカウンター下に潜り込む!

――07――

「ヤツら、本気みてぇだな! 手加減なしかよ!」
不破は素早く身を翻し、大理石柱の影に滑り込む!
大量の9mm徹甲弾が大理石で跳弾!
「ア゛――ッ!?」
逃げ遅れた警備員が流れ弾でハチの巣に! 全身から噴血して即死!

「ホラホラ――ッ、撃って来いよ――ッ! どうしたどうした――ッ!」
指揮官の女は2階で腕組みし、数人の盾兵に守られながら哄笑!
バボッ、ギ―――――ンッ!
次の瞬間、耳を聾する轟音と共に、視界が閃光に包まれる!

バラバラバラバラ――ッ! ガチンガチンガチン、ガチンッ!
目潰しを食らった白詰襟たちは、短機関銃を撃ち尽くして棒立ちに!
「マズイッ!? 伏せろ――ッ!」
指揮官の叫びも届かず!
ガポンッ! ズド―――――ンッ!

轟音がエントランスホールを揺らし、2階の手摺が炸裂!
人間の手足や頭部と共に、大理石の破片が剥落する!
「クソッ、こいつは高いんだぞ!」
不破は毒づき、走りながらSG553Rのランチャーを再装填!
40mmグレネードだ!

ガポンッ! ズド―――――ンッ! 再び2階で榴弾が炸裂!
「「「グワアアア――ッ!?」」」
手足を失い、白詰襟たちが床を転がり泣き叫ぶ!
シュボボボボボ――ッ!
不破は1階の棒立ちした白詰襟たち目がけて水平射撃!

今度は7.62mmAK弾の連射が、白詰襟たちを襲う番だ!
貫通、流血、脳漿炸裂! 指が弾け、骨が砕け、腸が引きずり出される!
「「「ウガアアア゛――ッ!」」」
不破は再び、手近な石柱の影に身を隠し、SG553Rを再装填!

――08――

ガシャッ! 不破は銃に初弾を装填すると、石柱の影から半身を乗り出す。
白詰襟の生き残りたちが、銃を再装填! 閃光弾の影響から脱しつつある!
シュボボッ、シュボボッ、シュボボッ!
石柱で身を庇いつつバースト射撃!

「ングウ……ハッ!?」
女指揮官は全身に鈍い痛みを感じ、石床の上で意識を取り戻す。
盾兵たちは盾を構えたまま、彼女を下敷きに引っ繰り返っていた。
「ゲホッ、ゲホッ……おい、起きろ!」
女指揮官が盾兵を叩き起こす!

人間の一部を蹴飛ばし、血溜まりを踏み締め、亀裂の入った手摺に近づく。「危険です、梧桐(アオギリ)課長!」
女指揮官・梧桐は制止を振り切り、手摺からA-91の銃口を突き出した!
眼下のホールは死屍累々の地獄絵図!

バララバララッ! シュボボッ、シュボボッ! 交錯する大量の銃弾!
不破は一ヶ所に留まることを避け、移動と短い連射を繰り返す!
「クソッ、ちょこまかとッ!」
「死ね――ッ!」
バララララッ! 徹甲弾が大理石を抉る!

「おのれッ! たった一人相手に、不甲斐ないッ!」
梧桐は2階から見下ろして激怒!
「お前らも銃を持て!」
盾兵たちが手近な負傷者からPP2000を奪い取り、盾の横に構える!
「私が仕留める! 援護射撃で釘付けにしろ!」

シュボボッ!
「ア゛――ッ!?」
不破のカバー射撃が、白詰襟の一人の脳天を粉砕したその時!
バラバラバラッ、ズドドドド――ッ! 2階から殺到する銃弾!
「何だッ!?」
不意打ちの連射! 間一髪で退き、石柱に隠れる!

――09――

シュボボボボボ――ッ!
不破は石柱の隙間から銃口だけ突き出し、ブラインドファイア!
「クソッたれ! 油売ってる暇ァ無ェんだ!」
ガチンッ! 弾切れ! 不破は冷静に退いて弾倉交換!
……その時、彼の背後に近づく影!

「死ねェ――ッ!」
血みどろの白詰襟が、PP2000をランボーめいて腰だめに構える!
「なッ……ヤッベェ!」
不破は白詰襟を尻目に見ると、SG553Rを放り捨て、懐の拳銃を抜いた!
バラララララ――ッ! シュボン、シュボン!

白詰襟のばら撒いた徹甲弾は、不破の手足を掠め、胴体に5発着弾!
高性能の防弾ベストが貫通を食い止める!
不破はSDP拳銃を左手で抜き、振り向き様にダブルタップ!
「ア゛――ッ!?」
白詰襟の喉首と額に着弾し貫通!

2階で盾兵と並び、梧桐が制圧射撃を敢行!
「今度は貴様が味わう番だ!」
A-91の前方トリガーから指を離し、後方トリガーに指をかけ替えた!
「くたばれッ!」
ガポンッ! 下銃身から40mmロケット・グレネード発射!

白詰襟が崩れ落ち、不破が拳銃を片手に尻餅をついた!
「クソッ! 危なかったぜ……」
ズド―――――ンッ! 榴弾の直撃で、石柱に亀裂が走る!
「グワ――ッ!?」
不破はSG553Rに手を伸ばしかけ、衝撃波で吹き飛んだ!

不破は石畳に転がり、数秒間の失神から目覚める!
「ゲッホ、ゴッホ!」
吐血! 爆音が耳の奥で何重にも反響し、身体が鉛のように重い!
「畜ッ生……!」
全身を苛む疼痛に顔を歪め、不破は這いずってSG553Rに手を伸ばす!

――10――

60階。研究フロアに繋がる一本道を、眼帯男ら一行が悠然と歩く!
彼らの周囲を、A-91ブルパップ銃で武装した白詰襟たちが厳重警護!
防弾ガラスのセキュリティドアで歩みを止め、眼帯男が端末で指紋認証!
ピー、ガチャン!

隔壁が開くと、電子機器が並べられた広大な研究エリア!
「お前たちはここで結構」
眼帯男は随伴の白詰襟たちに告げ、側近を引き連れてフロアに歩み入る!
「「「お疲れ様です、専務!」」」
白衣の研究者たちが続々と敬礼!

研究エリアの最奥。
バイオハザードマークの実験室前で、防護服姿の研究員たちが待機!
「よいしょっと!」
ドサリ。筋肉男が、担架にドレス女を下ろした。
ドレス女は己の末路を悟ってか、絶望の表情で呻き声一つ上げない。

「おい! 生物災害クラスの危険物じゃぞ、もっと慎重に扱わんか!」
「悪ィ。エスコートは不慣れなもんでな」
老研究者の怒声に、筋肉男が嘲笑で肩を竦めた。
「じゃ、専務……ワシはこれで」
「うむ。宜しく頼むぞ、教授」

ズン……。ビルを揺るがす微かな振動!
「何だッ!?」
インテリ眼鏡・輿水が苛立たし気にスマホを確認!
監視カメラ直結のリアルタイム映像……その惨状ぶりに輿水が息を呑む。
「無茶苦茶な、市街戦でもやってンのか!?」

ヒュウ! 筋肉男が口笛を吹き、瞳を胡乱に輝かせた。
コン……。眼帯男が杖を鳴らした。
「輿水、佐熊(サクマ)。鎮圧隊に合流しろ」
「捨て身の一匹狼(ローン・ウルフ)……楽しめそうだ!」
筋肉男・佐熊が獰猛に笑う!

――11――

バラバラバラ――ッ!
白詰襟たちの一転攻勢に、ひび割れた石柱が破片を散らす!
「クソッ、クソッ、クソッ!」
不破は口元から血を垂らしながら、顔を苦痛に歪めて匍匐前進!
右手を伸ばし、愛銃のSG553Rを……掴み取る!

ガポンッ! ズド―――――ンッ! 石柱に榴弾炸裂!
亀裂が深まり、大きな破片が剥落! あと一発で崩落の危険!
「チッ……悠長にリロードしてる時間は無ェなッ!」
不破は舌打ち、SG553Rを肩に担いで手榴弾を抜いた!

「撃ち続けろ! そいつを絶対に逃がすな!」
銃声に劣らぬ大声を張り、梧桐が盾兵に守られながら登場!
カランコロンッ! その時、物陰から投げ込まれる銀色の物体!
「手榴弾――ッ!」
バボッ! ブシュウ―――――ッ!

「馬鹿なッ……催涙ガスッ!?」
呆気に取られる梧桐! 警護隊の眼前で、手榴弾から噴き出る白煙!
見る見る内に、CSガスが視界を白く染める!
「「「ゲボッ、ゲボ――ッ!?」」」
白詰襟たちが銃を投げ出して悶絶!

シュボンッ、シュボンッ、シュボンッ、シュボンッ!
不破はガスマスク姿で石柱から飛び出し、二挺拳銃を撃ちながら迂回!
「オゴ――ッ!?」
白煙の中で、白詰襟が喉を抑えて苦しむ!
シュボンッ! ヘッドショットで即死!

「ゲボッ……この、ガハッ……卑怯者……、オゴッ……がぁ――ッ!」
ズドドドドド――ッ!
梧桐は号泣しながら白煙を見渡し、A-91を全方位無差別フルオート掃射!「「「ア゛――ッ!?」」」
無数の白詰襟が被弾して倒れる!

――12――

ガポンッ! ズド―――――ンッ! 榴弾がひび割れた石柱を直撃!
大理石が完全に砕け、巨大な石礫が降り注ぐ!
「「「ア゛――ッ!?」」」
数人の白詰襟が崩落の巻き添えに!
バララバララッ! 銃を乱射しながら倒れる!

「ゴボォッ! ゲホッ、ゴホッ……逃がさん、逃がさん、ぞぉ……ッ!」
ホールに漂う白煙の中から、躍り出る一人の人影あり! 梧桐だ!
彼女は中央階段を駆け上がる不破の背中に、A-91の銃口を構えた!
「死に損ないめッ!」

カチリ……カチ、カチ。ランチャーの引き金が空撃ち!
「クソッ、何故だッ! 大事な時に、このポンコツめッ!」
否! 彼女は激昂して乱射する最中、既にグレネードを撃っていた!
だが自分でそのことに気づいていない!

ポーン! 不破は息も絶え絶え、到着したエレベーターに転がり込む!
「グハッ、ハァ……ハァ。何とか凌いだぜ」
ガスマスクを外し、放り捨てた!
「いやちょっと待て。あの女は何階だ?」
ボタンに手を伸ばしかけ、躊躇う!

選べるボタンは30階まで。ビルの大きさに比べると明らかに少ない!
「セキュリティ保全か。上層階と下層階で分かれてやがるな……」
不破は直感で30階のボタンを叩いた。
「その後どうするかは……上がってから考えるさ!」

凄まじい速度でエレベーター上昇!
「やれやれ。長い一日になりそうな予感だぜ」
総ガラス張りのエレベータの向こうには、雨打つメガロポリス。
不破は溜め息と共に、SG553Rの弾倉を交換した。
ガシャッ! 戦闘準備完了!

【短編:無題・殺し屋パルプ(表) 終わり】
【後編に続く……】

From: slaughtercult
THANK YOU FOR YOUR READING!
SEE YOU NEXT TIME!

頂いた投げ銭は、世界中の奇妙アイテムの収集に使わせていただきます。 メールアドレス & PayPal 窓口 ⇒ slautercult@gmail.com Amazon 窓口 ⇒ https://bit.ly/2XXZdS7