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魔法鎖鋸少女✡平等院ひとみ 1-1話

[1話 1章] ←NOW!

廃墟の大広間は、死屍累々の地獄絵図☆

悪魔みたいな怪物人間と、二匹の双頭チワワモンスター。
怪物たちはみんな、全身釘まみれであの世行き!
まあ、殺ったのは私たちじゃないんだけどネ☆
っていうか、そんなことどうだっていいのよ!
さし当たって今、私たちがどうにかしなきゃいけないことは――

FVOOOOOOOOOOOO!

炎よ! 全周360度が炎の海!
炎上する廃墟の大広間には、天狗マスクのゴスパンク少女が二人!
――まあ正確には、その内の一人は少年なんだけどね☆
「アッそうだ忘れてた! ヤバいよひとみちゃん!」
私の隣で、ツインテールのゴスパンク女装少年……たっくんが一言。
「アッツ! アッツウウウウイ!」
私は蒸し焼きの恐怖で、大慌て!
「このままじゃ、ボクたち揃って黒焦げだッ!」
たっくんの両手には火炎放射器。
「もー! たっくんが焼いちゃうからじゃないッ!」
そして私の両手にはチェンソー。
「その前に、ひとみちゃんも散々ぶっ壊してただろッ!」
私たちはその場にたたらを踏みながら、二人で口論!
「いや言い合ってる場合じゃない!」
「たっくん、あれを見て!」
私はたっくんの手を取って、大広間の壁の一方を指差し!
そこには、バッサリ三角に切り開かれた大穴が開通!
勿論、やったのは私よ!
「エッ? いやひとみちゃん……まさかとは思うけど……」
「律儀に一階まで降りてる暇なんか無いわよ、たっくん!」
「いや、だけど――」
「かくなる上はあああああ!!!!!」
私はたっくんの手を引いて、猛スピードで壁の穴にダッシュ!
ねームリムリムリ! ホント無理だって! ひとみちゃん!
「大ジャンプ、あるのみよおおおおお!!!!!」
燃え盛る壁と、穴の向こうの薄暮が迫るわ!

JUMMMMMMMMMP!

飛び出せ!
廃墟の三階から、フォールイントゥーザグラウンド☆
「エエエエエイメン!!!!!」
「あっひええええええええッ!!!!!」
炎に包まれる、謎の廃墟……。
教祖オジサンと、怪物に変わった信者たち……。
双頭のチワワモンスター……。
そして変態天狗ジーザズ刺青オジサン……。
何より、私たちに芽生えたこの、新たな力!

私たちの愛♡と闘い⚔の物語が、この日から始まるの!
でも私たち、絶対に負けないんだから!


【魔法鎖鋸少女✡平等院ひとみ】
【第1話/冒涜! 魔法少女爆誕!】


ねえ知ってる?

京都って、実はキリスト教にとって、因縁深い土地なんだって。
私、宗教とかそういう難しいことって、良く分からないんだけど。
たっくんがそういうの詳しくって、正直驚いちゃった。
ああ、たっくんは私の幼馴染の男の子、大門寺泰人くん!
だいもんじ・たいと……だから、たっくん。
私たち、小学校からずっと同じ学校の仲良しコンビ!
二人が恋人同士なのは学校ではナイショ。
でもみんなが私たちの仲を囃し立てるのよ、一体どうして?
あっそうだ! 言い忘れたけど私、平等院ひとみ
府立八賀谷高校の1年生なの、みんなヨロシクね!

私たちの街「八賀谷(やつがたに)」へようこそ!

八賀谷は京都の小さな田舎町。
あるものといえば、山と川と、小さな商店街と、新興宗教の本拠地くらい。
北に聳える「天狗山」は、その名の通り天狗が住んでるんですって!
おかげで、街のあちこちには天狗の像が一杯。
どこもかしこも天狗、天狗……全くイヤになっちゃう。
ところで私、この前 Wikipedia で「天狗山」を調べてみたの。
……そしたらビックリ! 日本中、天狗山で一杯じゃない!
どっひゃー! 競争相手は山のよう!
八賀谷も、天狗にあやかった街起こしで天狗になってる場合じゃないわ!


――――――――――


さてさて、話は遡ること数ヶ月前!

場所は、商店街のカフェ「だいうす丁」のテラス席。
私はいつものように、学校帰りにたっくんとお茶してた所。
「ねぇねぇーキミたち、ちょっとお話いいかな?」
どこからともなく、短パンに水玉シャツのオニーサンが出現!
ハンディカメラを携えた長身ロン毛のオニーサンも一緒。
私は抹茶あんみつを一口食べて、ビビッと来たわ!
「ねぇねぇ、取材? 取材? テレビに出れるの?」
「ちょ、ひとみちゃん落ちついて!」
「イェーイ☆ みんな見てるぅ?」
ロン毛オニーサンのハンディカメラに接近してピース!
「アッハハハ! いいね、今時珍しいテレビっ子なんだね!」
やったわ! オニーサンたちに大受けよ!
こういうのは掴みが大事なのよ! 私は詳しいの!

「こんな天狗しかない田舎町で、どんなお話を?」

たっくんは優雅にティーカップを揺らして一言。
「うん。僕たち、いまちょっとキリシタンの歴史について調べてるんだ」
「キリシ……えっー宗教? 私、そういうの良くわかんない」
私は即座にギブアップして、抹茶あんみつをパクリ。
「ああ、それってアレですよね。伏見から逃げてきたっていう……」
話に食いついたのは、意外にもたっくん!
「あーそれそれ! 何か知ってることあるかな?」
オニーサン二人が、顔を見合わせてサムズアップ!
たっくんはストレートの紅茶を一口飲んで、パラソルを見上げたわ。
「話では、慶長19年の大禁教令で、伏見のキリシタンが大弾圧。信者たちは方々逃げ出して、山間の八賀谷にも沢山逃げてきたとか……」
水玉シャツのオニーサンは、うんうん頷いてちらっと背後をチラ見。
(おーい、カメラ回ってるか?)
(……OKっす!)
そんな感じでアイコンタクトして、ロン毛オニーサンがサムアップ!
「それで、暫くは隠れてたんだけど、結局キリシタンなのがバレちゃって。河原に引き出されて、キリシタンは女子供見境なく処刑されちゃったとか。教会も、焼き討ちされたって話ですよね」
「えっー、えっぐう」
私が抹茶あんみつ食べてる時に、火炙りとか磔とか、打ち首獄門の話なんかやめてよね! ぷんぷん!

「いいね! やっぱ俺の直観キテるぜ!」

ロン毛オニーサンがニヤリ!
「半日取材して成果0だったのに、良く言うよ……」
水玉シャツのオニーサンは、エッホンと咳払い!
「それで、教会の詳しい場所とかは知ってるかな?」
「あー……でも大体は、その時の大弾圧で燃やされたって話ですが」
たっくん、クールに肩を竦めて紅茶を一口。
「あーそっかぁ……何か残ってるかなぁと思ったんだけど……」
「……でもね。街外れに、なんか怪しい建物、残ってるらしいですよ?」
水玉シャツのオニーサン、にわかに興奮!
「えッマジで!? ウッソ、まさか半日で収穫! やるじゃんキミ!」
口調が素に戻ってるわ!
たっくんは冷静に紅茶を一口飲んで、通りの北側を指差し!
「三階建ての廃墟で……ぱっと見では民家みたいな建物なんですけど、本当は明治時代に再建された、キリシタンの教会だとか何とか……噂ですけどね」
(おい、ちゃんと撮ってるか!)
(バッチリっす!)
水玉シャツのオニーサンが、ロン毛オニーサンにアイコンタクト!
「詳しい場所、教えてくれるかい?」


――――――――――


それで、オニーサンたちがどうなったか、聞きたい?

答えは数日後の京都日報。
テレビ取材班 行方不明
郊外の空き地に、無人の車両を発見
一人残らず、忽然と姿を消してしまいましたとさ!
八賀谷は狭い街だから、暫くはみんながこの話で大騒ぎ!
警察も消防も、総出で行方を捜したけれど、結局見つからず仕舞い。
それから1月過ぎ、2月過ぎ……。
さしもの田舎町の八賀谷でも、その話をする人は居なくなっちゃった。

というわけで、話は現在に戻るわね!

ところ変わって、府立八賀谷高校!
私は教室で、何気なく……本当に何気なく、その話を思い出したの。
「ねぇねぇたっくん、あのオニーサンたちどうなっちゃったのかな?」
「うーん……何だか気味が悪いね」
「ひょっとして、処刑されたキリシタンの祟り!?
火炙りとか磔とか打ち首獄門とか!
「ボク余計なこと言っちゃったかなぁ……何だか後味悪いよ」
たっくんは思い悩むようにしかめっ面!
「じゃあ、ここは一つ、私たちで確かめに行ってみよー!
「え……えぇッ!?」
たっくんの美少年フェイスが思わず二度見!
そう、たっくんは女子も男子も振り返る、類稀な美少年なのです!
女子の制服を着させれば、みんなたっくんが女子高生だって信じちゃう。
ええ、絶対そうよ!
何たって、私が実際に試してみたんですもの! えっへん!
「思いついたがきちじちゅ……その廃墟とやらに、肝試しよ!
「エ―――――ッ! 冗談やめてよ、ひとみちゃん!」


――――――――――


というワケで、街外れの廃墟に到着!

庭には木々が生い茂り、雑草が生え散らかしてるわ!
蝉が夏を先取りして、意味深にミンミン鳴いててムーディ!
錆びた門扉を掴んだら、赤錆がボロボロ! ばっちい!
「エッヘッヘ……ここまで来たら、もう後には引き返せませんぜ」
ギッ、ギギィ――ッ!
門は錆ついてたけど、呆気ないくらいあっさり開いちゃった!
「ちょっと待ってひとみちゃん! 何で僕は女子の制服着てるんだよ!」
女子高生姿のたっくんが、マグライトを振って抗議!
うーん、カワイイ♡
「いいからいいから、ひとみちゃんに全部任せなさい☆」
私は肩にGoProを装着! よーし準備OK!
「これ絶対スクープよ! 後でYOUTUBEにアップしよーっと」
「イヤイヤ、絶対ヤバいって……大体これって不法侵入……」
細かいことは気にしない! たっくん、男でしょ!
ああそうだよ! 今は女装させられてるけどね!
廃墟の門前で口論!
二人は深い仲だけど、たまの行き違いもまた一興ね!
「はーい、じゃあ今から肝試し行きまーす!」
私は嫌がるたっくんを無理矢理引きずって、廃墟探検レッツゴー!
「私……何か興奮して来ちゃった!」
この、嫌がるのを無理矢理ってところが……最高ね!
ねーホント無理だって! 帰ろうよひとみちゃん!」
「たっくんが嫌がれば嫌がるほど……私はますます興奮するのよ!
雑草を蹴散らし、庭の飛び石を渡って、廃墟の入り口に到着!
「庭は結構広いのね……でもホント、どこ見ても草だらけ」
「なんか、太股の辺りがチクチクして痒いよ!」
「まだ早いわ! まだダメよ、たっくん……こんな人目につくところ!」
「何考えてんのひとみちゃん!」
まあ色々行き違いはあるけど、そういうのって青春にはつきものよね?
そんなこんなで、私とたっくんのドキドキ♡廃墟探検の始まりです!


魔法鎖鋸少女✡平等院ひとみ
第1話/冒涜! 魔法少女爆誕!
第1章 おしまい …… To be continued !!

[ APPRECIATION: THANK YOU FOR WATCHING !! ]

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