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魔法鎖鋸少女✡平等院ひとみ 1-2話

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正面玄関からお邪魔しまーす!

廃墟はどこも埃だらけ!
たっくんは咳き込みながら、マグライトを点灯☆
「普通こういう所って、警備装置なんかがある筈なんだけど……」
立入禁止の立て看板なら、申し訳程度にあったけどね!
「えー何も無い廃墟に? どうして?」
たっくんは盗人みたいな猫背で、慎重に一歩、また一歩。
あーもうじれったい!
「それは、ボクらみたいに忍びこむ人がいるからでしょ!」
「あーあーあー、聞こえなーい!」
悪いことに使われたり、酷い時には放火されたり……」
マッチ一本火事の元でしょ☆ 私は詳しいのよ!」
「……ひとみちゃん、真面目に聞いてないでしょ?」
たっくんが立ち止まって、床板をライトで照らしたわ!
「見て、ひとみちゃん。足跡だよ」
「あのオニーサンたちも、入ってきたんじゃない?」
「まあ、そりゃそうだろうけど……」
私はこっそり先に進んで、開け放たれたドアにするりと侵入!
薄明かりに照らされた室内は、散らかり放題!
「やっぱ、ここって何かヤバそうだよ……ひとみちゃん、あれ?」
シッシッシ……たっくん、私が居なくなったことに気が付いたわね。
廃墟探検の醍醐味、ドッキリの種を早速仕込んでいくわ!

たっくん、余所見は禁物よ!

足音とライトの光が、廊下を行ったり来たり。
「ひとみちゃーん! ひとみちゃーん! どこ行ったのー!」
フフフ……たっくん、動転してる動転してるぅ☆
「もうー、そういうのいいからー! 出てきてひとみちゃーん!」
マグライトの光が、ドアの戸口を照らしたわ!
私は壁際に隠れて、笑いを噛み殺して待機!
「足跡は、こっちだな……うん?
不意にライトの光が離れて、私はちょっとガッカリ。
「あれ、今……おかしいな
たっくん、どこ見てるの! 私はこっちよ!
「誰かー! 誰か、そこに居るんですかーッ!?
私の背筋がビクリ。心臓ドックドク!
えッ、ちょっとたっくん!
まさか……たっくんがドッキリの仕返しを!?
「んんー? んんんー? 今、誰かに見られてたような……」
たっくんのわざとらしい呟き声……ええもう、白々しい!
可愛らしく小首をかしげても、私の目は誤魔化せないわよ!
勿論、今の私にその様子は見えないけど!
「はぁ、まいっか。取り敢えずひとみちゃんだな……」
ライトの光が再び、ドアの戸口から部屋の中に!
「もうー、ひ・と・み・ちゃん! いい加減にしないと、ボク一人で――」
部屋の中に、たっくんが入って来る足音!
一歩、二歩、三歩……。
「――あっれぇ、ここにも居ない? しっかし荒れ放題の部屋だなァ」
しめしめ、たっくん。
私は今、貴方の背後を取ったわ!
コ・コ・か・ら・出・て・行・けぇえええええ!
「あッあッあッ……アッヒェエエエエエエエエ!!!!!
埃だらけの床を転がり、たっくんがマグライトを振り回してるわ!
「ぶわ―――――ハッハハハ! ドッキリ大成功!」
ひとみ、大爆笑! たっくんが私の姿に気づいて手を止めたわ。
「ンン゛ッ……あ、あのさ。ひ、ひ、ひ……」
怒った顔もカワイイ♡
っていうか、ちょっとやり過ぎたかしら?

「ひとみぃいいいいいい!!!!!」

三軒隣りまで響き渡るような、大絶叫!
たっくんって、普段は臆病だけど、実はこんな大声が出せるのね☆
「ゴメンゴメン、ゴメンたっくん! ホント、謝ってるって!」
「ンン゛ッ」
あらら、顔を背けちゃった。たっくん、結構本気で怒ってるみたい。
「ゴメンゴメン、ゴメンって! 何なら謝罪の証に、ここで脱ぐから!
脱ぐなッ!
たっくん、思わず私を振り返って一喝!
「……全くもう、ひとみちゃん。今度やったら、ボク一人で帰るからねッ!」
「センセンシャル! センセンシャル、大門寺先輩!」
たっくん舌打ち!
「ほらー見て見て、ネズミの死骸!」
私は力尽きたネズミを拾い上げると、尻尾を掴んでぶーらぶら!
「はいはい、そんなの触っちゃ駄目だよ。帰ったら手を洗わなきゃね」
ネズミをぽいっちょすると、私は部屋の外に一歩、二歩。
――つるり。
「もう! お母さんみたいなこと言わないでよおおおおお!」
イヤだ、何か踏んだ!?
足元がつるっと滑って、私は背中から後ろに――
「ほら、どこ見て歩いてんの。足元気をつけて」
すかさずたっくん、私を背中からナイスキャッチ!
マグライトの明かりが床を照らすと、小さくて丸い物がキラキラ。
「……ああ、BB弾か。子供たちの遊び場なんだな」
私たちは廊下に抜け出し、探索を続行!

「それにしても、落書きだらけだな」

廃墟の壁を照らして、たっくんは呆れたように一言。
木張りの壁には、色とりどりのスプレーでお絵描きがたくさん!
危ない人の寝床になってなきゃいいけど……」
「ホームレスとか? 居るかなぁ、こんな田舎に」
私は壁の額縁に足を止めると、指でちょろっとなぞってみたり。
うわっ、黒い埃が一杯……ばっちい!
「ホームレスもイヤだけど、ヤクザと鉢合わせとかもっとイヤでしょ」
「もう! たっくん、映画やドラマの見過ぎだって!」
居間。ダイニング。トイレに、バスルーム。
当然、人っ子一人いなくて……荒らされ放題!
私は剥げ落ちたタイルの欠片の隙間から、目ざとく小さな包みを発見!
「ねぇたっくん、たっくん。フヒヒ……これなーんだ?」
コンドームの空き包みよ!
「そんなもの見せなくていいから。ほら、行くよ」
「じゃあ、私たちもここらで一発……」
たっくんは溜め息一つ。くるっと背後に180度、方向転換!
「誰だか知らないけど、全く何やってるんだか」
「あーゴメンゴメン! たっくん、置いてかない……で?」
飛び出しかけた私を、たっくんの平手が静止!
「何? たっくん。どうかした?」
シッ! 口の前に指を立てて真顔のたっくん!
洗面所と廊下を、マグライトの光が行ったり来たり。
「……さっきから何なんだ。やっぱり、誰か居る気配が
そんなこと無いって! やっだなぁたっくん、やめてよー」
私はたっくんの言葉を遮ると、洗面所から廊下を覗き見!
そんなこと言われたら、私まで怖くなってきちゃうじゃない!
右見て、左見て、また右見て……安全確認OK☆
私は首を振って、洗面所の汚れた大鏡をチラリと――
こ こ か ら で て い け
「あ、あ、あ、あ……」
「あー、手の込んでる悪戯だなぁ。わざわざ赤いスプレーで書いてる」

「あっひえええええ!!!!!」

ズドドドドド――ッ!!!!!
響く足音、舞い上がる埃!
私はたっくんを置き去りにして全力疾走!
ちょ、ひとみちゃーん!?
私は玄関ホールに駆け込むと、カンフーを構えて全方位警戒!
格闘技の心得は無いけど……こういうのは気合いが大事よ!
「はぁ、はぁ、ひとみちゃん……こういう時はホント足速いね!」
後から小走りの足音と、マグライトの光と、たっくんの声!
「冗談キツイわ! 暗闇であんなの見せられたら、ちびるわよ!
舞い上がった埃に咳き込みながら、たっくんが再登場!
「……ともかく、一通り見て回った感じでは収穫0。ただの廃墟だね」
「何言ってんのたっくん! まだ二階も三階もあるじゃない!
たっくんはうんざりした顔で、木張りの階段にライトの光!
「ウッソでしょ……怖がりの癖に、上の階も見て回るつもりなの?」
怖がりじゃないもん! ホラホラ、階段に足跡、ついてますよ?」
たっくんはとっても嫌そうにウーンと唸ると、腕時計をチラリ。
「……10分だけだよ。あと10分したら、本当にもう帰るからね」

というわけで、L字階段を登って二階へ!

「それにしても、立派な屋敷だなぁ」
「ホントー。バイオハザードの洋館みたいね!」
「初代のアレより、7のベイカー邸の方が近いかな?」
二階は、小さな部屋がたくさん! 子供部屋とかかしら?
大昔のカレンダーに、新聞。茶色くなった本。
「何これ?」
V字の角と、4つ脚の生えた箱型の何か!
カチッ、カチッ、カチッ、ガリガリガリ。
良くわかんないけど、スイッチやダイアルは取り敢えず全部操作!
「ウワッ、それ大昔のラジオだよ! やっぱり動かないか……」
たっくんはちょっと嬉しそうだけど、とっても残念そう。
他には、ラッパの生えたレコード盤に、埃だらけの紙ジャケットに……。
ゴムの空き袋!
「だから、いちいち見せなくていいから!」
私とたっくんは、もはや堂々と廃墟の廊下を歩いているわ!
何たって、私に許された時間は残り僅か!
この短い時間で、次はどんな悪戯を仕掛けてやろうかしら。
「何か、空き缶とか雑誌とか……生活の跡みたいなのがあるけど……」
荒れ果てた部屋に散乱するゴミを、たっくんが次々とライトで照射。
ゴムの空き袋も?」
「だから、それはもういいってば!」
「じゃあホラ行こう! ホラホラ、後が詰まってるのよ!」
私はたっくんの背中をプッシュ、プッシュ!
「もう、急かさないでよひとみちゃん――」
たっくんは言葉を詰まらせて、急にライトの光を逸らしたわ!

「んんー? まただ

「なあにーたっくん。ホラホラ、前進前進!」
たっくんは、背を押し続ける私に抗って停止!
「あのさ、ひとみちゃん」
「なあにたっくん? もう我慢できない? 実は私もよ!」
「いや、そういうことじゃなくて」
「ここで一発おっぱじめちゃう? いいわ、受けて立つわよ!
だから、真面目に聞けってば!
制服の裾に手をかける私を、たっくんが真顔で静止!
「何だか、この屋敷に入ってから、ずっと誰かに見られているような
ガタガタガタッ!
たっくん、咄嗟に私を庇って平手を差し出し、私の前に割り込み!
音の方向にライト照射!
あっち、こっち、そっち……何も無し。
二人は暫しの沈黙。
「フフフ……クックック……アハーハッハハハ!」
私はたまらず大爆笑!
「ほら、やっぱり誰も居ないじゃない! たっくんビビり過ぎ!」
たっくんは抗議の眼差しで溜め息。
「……じゃあまあ、三階に行こうか?」

階段の前で、ライトを照らすたっくん!

これより先 部外者の立ち入りを 固く禁じる
壁には赤いスプレーで書かれた、おどろおどろしい文字!
「まぁーた出たわね! 私もう引っかからないわよ!」
私は仁王立ちで鼻息荒く、たっくんの背中を肩でプッシュ!
「ほら!」
「はいはい、わかったから押さないで……」
ここは肝試しの 場所ではない 直ちに引き返せ
「フンッ! こしゃくな恐怖演出ね!」
命の保証は無いぞ 部外者は 今直ぐ引き返せ』
「部外者? "部外者"って何だ。"関係者"がいるみたいな言い回し」
踊り場に立ち止まり、壁文字に問うたっくんの脛をキック!
「イテッ!」
「悪戯に乗せられちゃ駄目よ、たっくん!」
「さっきの、相当根に持ってんだね、ひとみちゃん」
私はたっくんを置き去りにして、どんどん先に進んじゃう!
警告はした 無知な愚か者に 死の悪夢を
「何よ! 人を馬鹿にして!」
「ちょ、もう……ひとみちゃん! ムキにならないでってば!」
そして我らが同胞に 救済の福音を
上へ! 上へ! 上へ!
階段の突き当たり!
その先には、古めかしい観音開きの扉!

「たーのもーッ!!!!!」

私はドアに手をかけ、力を込めてオープンセサミ!
「ちょ、ひとみちゃん! 一人で先に進んじゃ……」
私の隣に並んで息せき切るたっくんも、次の瞬間絶句!
無言で大広間に立ち尽くす私たち。
「何だ、これ……」
壁一面に書き殴られた、形容不能な文字や胡乱な図形!
床には、変な魔法陣みたいなのも書いてあるし!
「この赤いのって……まさか、血液?
たっくん、床にこびりついた赤い汚れを指でゴソゴソ。
たっくんたら普段は臆病なのに、そういうの平気で触っちゃうのね☆
「それに、見てよひとみちゃん……これ」
床に散らばる本の一つを、ライトの光が照らし出したわ。
再臨の時 ――モルゲンシュタイン教団監修』
それは、薄汚れた怪しげな本! 聖書みたいに分厚い!
「間違い無いよ。これって、この街の新興宗教の――」
ガタ、ガタ、ガタ、ガタ……。
階段の軋む音。足音よ! 誰かが、登って来る!?
誰だッ!?
「ヒッヒッヒ……どうやら、気付いてしまったようだな」


魔法鎖鋸少女✡平等院ひとみ
第1話/冒涜! 魔法少女爆誕!
第2章 おしまい …… To be continued !!

[ APPRECIATION: THANK YOU FOR WATCHING !! ]

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