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酒:レミーマルタン 1738/中古の酒を買うのはアリ? ナシ? #酒ギャンブル

 勿論、中古と言っても未開封品に限るぞ。開封された酒を飲んでいいのは自宅と信用できる店だけだ。まあ、本当に旨い酒はそもそも中古ショップに出回ったりしないんだけどな、ブへへ。好事家のみぞ知る残酷なしんじつ。

 つーか、酒は飾り物じゃないんだから飲めよな。旨いかも知れないのに。酒だけに限った話じゃないが、馴染みのない物は敬遠されがちで悲しいな。

 そんな一般人の価値観に背を向け、興の向くまま酒を嗜む私であるが。

 てなわけで、近頃は酒ギャンブル*を怠り嗅覚が鈍っているので、久々に敢行する。飛び込め、信じろ、己の勘を頼りに。レッツ地雷原メント。

*酒ギャンブルとは…… 私がたった今、3秒で考えた造語。店頭に並べられた酒の中から適当な一つを、スペックや風味などの事前情報を一切仕入れずに買って飲む行為。大抵は外れを引いて地獄を見るが、玄人の博徒ともなれば非常な現実すら喜びに変える。金に頓着しない喜捨精神が重要である。

 マンガ倉庫でコニャック・ブランデーを買うのはアリだろうか?(白痴)

 つーか、中古ショップの酒コーナーはマジで魔境だな……恐らく贈答用に買ったと思われる、味もヘチマも判らない、恐らく購入者自身だって一度も口にしたことが無いと思われる、有名メーカー製品がゴロゴロしておる……そして在庫商品の95%ぐらいはラベルが日焼けしており、クソ悪い環境下で保管されていたであろうことが容易に想像できる。下手すりゃ直射日光すら当たるようなガラス戸棚にぶち込み、何年も置かれていた可能性すらある。

 長年の酒ギャンブルから得た知見として、管理状態が悪い酒は赤信号だ。古酒を探すなんぞの理由でもない限り、ラベルが焼けたようなあからさまに管理状態の悪い酒は、例えどんなに安くても手を出さないことを推奨する。

 安物買いの銭失いって言葉があるからな。

 その点、今回の私にはアンテナにビビッとくる物があった。これならギリ許容範囲じゃないか……言葉を選ばずに言えば、ゴミの山で使えなくもない掘り出し物を見つけた感覚である。問題はそれが口に入れる物なんだが。

 ブランデーの評価は人によるだろう。サン〇リーのVOだとか、ヘ〇シーのVSといった、コンビニスーパーでも買える類の安酒を取り敢えずの出来心で買って試しに飲んだ結果、撃沈された人はきっと私だけではないハズ。

(無言の両手中指ダブルファックサイン)

 初心者の知らない残酷な真実、それは安い酒ほど上級者向けということ。

 別に安酒を飲む人を腐すワケじゃないけどさ。5万10万するたっかい酒を飲めと富豪ムーブしてるんじゃないんだよ。この情報化社会、お値打ちでも比較的マシな選択肢という物は探せば幾らでもある。何か試してみろよと。

 ところで私は、沖縄のバーで「テセロン LOT №29」を飲み衝撃を受けた。世界にはこんなにスムースでまろやかで深みがあって旨い酒があるのかと。

 しかしテセロン №29は高い。売り出し価格5万円、数年前で8万円、今は13~4万円にまで高騰しているのだ。安い内に買っときゃ良かったな……。

 まあそんな高い酒は旨くて当然なのだ。庶民に手が出る安いブランデーで旨い酒は無いのか。ウィスキーではかつての4,000~5,000円、10~12年物のシングルモルトのような、大抵どれでも安定して旨く外れの少ない選択肢。

 有識者は、概ね1万円程度のブランデーが初心者向けと言っている。

 だが1万円は正直、酒に出す金としては高い(ケチ)

 考えてもみろ、ワインやバーボンや国産ウィスキーなら2,000~3,000円、日本酒や焼酎でも似たり寄ったり、スコッチのシングルモルトで冒険しても5,000~6,000円ぐらいは出せば、概ね卒が無い品質の酒が手に入るワケだ。

 そりゃブランデーは熟成年数が20~30年と長いかも知れないが、ワインやスコッチにダブルスコアをつけた値札を、そうそう平気な顔して買えるか?

 そういう意味では、近年までの熟成ラム、例えばサンタテレサの1796とかロンサカパの23年とかは3,000~4,000円で手軽に楽しめる優等生だったが、ここいらのウィスキー人気爆上がり超品薄状況で便乗値上げときたもんだ。

 つーか最近、酒が高すぎる。5年前はもっと手軽に蒸留酒が買えたぞ?

 マッカラン12年が8,000~9,000円とか頭おかしいのか?(中古ショップのガラス戸棚に厳重に保管されてこの値段だ。5年前は新品で半値だった)。

 そこで中古ショップの出番。相対的に格安なラインを狙う作戦ってわけ。

 まあ冒頭でも述べた通り、過酷な真実として、本当に美味い酒はそもそも中古に出回らないというジレンマがあるんだけどね。近頃、そういう本当の意味で掘り出し物の酒は、ヤフオクなんぞのネットオークションでひっそり密売されており、これは実際素人の手に余る。騙される危険も尽きないし。

 安く買おうとする消費者心理も共犯関係であり、同じ穴の貉なんだが。

 で、ギリギリのギリッギリまで悩んだ挙句……最低限アリだった選択肢がこの新しくて状態も悪くない、ランク表記も無いレミーマルタンであった。

 ランク表記が……無い……だと……!? そんなん絶対地雷じゃん。

 いや釣り針がデカすぎて逆に楽しみになってきた。オラワクワクすっぞ。

 店頭ではこの状態で売られていた。人体から注射器でぶっこ抜いたように鮮やかな血の色をしているように見えるが、あなたの目は正常である。

 肝心のお値段は、5,500円。今のウィスキー価格を考えれば相応でしょう。そりゃ1万円超えるような良い酒を買えば間違いないが、中古ショップまで来てわざわざそんな良い酒を買うか? 5,000~1万円の間が欲しいんだよ。

 ちょっと良い晩酌酒が欲しいのよ。雑に飲めて惜しくない酒が欲しい。

 いやまあ、田舎の中古店にポールジローとかラニョーサボランが、それも7,000円ぐらいで売ってるとは思ってなかったが(淡い期待)、それにしても酷い品揃えだ。ブツが偏ってるせいで出所の想像がつき生々しい。これもうほぼ生産者表示じゃん。中古店って時折人の業や闇が垣間見えて面白いね。

 それはともかく、レミーマルタンである。ブランデーと言ったら好事家は怒るな。只のブランデーでなくコニャックだ。テキーラや薩摩焼酎のような地理的表示の一つで、コニャック地方のブランデーだから通称コニャック。

「誰が下りると言った。コニャックが切れた」
「コニャックだぁ!? こんにゃくでも食ってろ!」

 のコニャックであるな。(ルパン三世・バビロンの黄金伝説より)

 それにしても、1738アコード・ロイヤルという、何だか正体の分からない名前が印象的である。まさか1738年の原酒を使っているワケでもあるまい。

 幾つかのサイトで調べると、熟成年度は4~20年が使われているらしい。具体的なランクで言うと、VSOP以上、XO未満。両者の中間を埋めるような絶妙な位置関係。アマゾンの新品価格を見ると7,000~8,000円ぐらいだ。

 微妙だね。未開封とはいえ中古と考えれば、お得と言っていいかどうか。

 問題は味である。というわけで開封。少なくとも臭いは悪くない。僅かに薄いような気がしたが、安ブランデーのような刺々しさは無くて安心した。

 グラスに注ぐと、若干のアルコール刺激や香りの薄さは否めないものの、色は悪くない。劣化は少ないと思う。そして味も悪くない。700円ぐらいのワインを開けるように期待値を限界まで下げたので、割とアリ寄りの感触。

 もう一押しの旨味が欲しい気もするけど、まあ悪くは無いんじゃね?

 まあどう考えても、価格を下げるために混ぜたであろう4年を始めとする若い原酒が、味を落としていることは確実だろう。ラムのロンサカパ23年も実際は6~23年の原酒をソレラシステムで熟成させているため、大雑把には熟成具合は似てくるはずだ。実際、熟成感はかなり近いものがあるしな。

 この辺になると、ブドウ原酒の樽熟成された香水みたいな香りがしてきてかなり上質感はあるな。前述のテセロンは香りから違ったし。ブランデーは香りを楽しむ酒とは言ったものである。とはいえ旨くなけりゃ片手落ちだ。

 ちなみにテセロン №29は、最も古い原酒で1929年(2022年から数えると実に93年前!)に仕込まれた物を使っており、4倍の年の差があるワケだ。

 まあここら辺は、出せる金額で選べる酒も変わってくるので仕方が無い。

 資本主義の残酷な真実だな。

 結論:近年の酒ギャンブルでは稀に見るアタリ。大当たりと言ってバチは当たらんだろう。飲んだことないけど、VSOPを飲むよりいいんじゃない?

 本音:欲しい酒はネットで買え。実店舗購入は割とギャンブル性が高い。

 報告は以上。諸君、今回は私の勝ちだ。メシウマできず残念だったな。

 よいこのみんなは私の真似をせず、ちゃんと下調べをしてからできるだけ定評のある酒を買おうね。特に他人に贈る時は、それも人の好きな物ならば適当なチョイスしたら割とバレて逆効果になる恐れもあるので、お覚悟を。

 安くて旨いって現実には無いのよな……良心的な価格って難しいね。


【酒:レミーマルタン 1738/中古の酒を買うのはアリ? ナシ?】
【#酒ギャンブル(やめとけ) おわり】

From: slaughtercult
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