レディープレーヤー1と歯
私はものすごく広い空港のような場所にいる。
この世界では隠れてコイン集めをしている人間がいて、私もその1人だった。
コイン集めとは、ある規定の空間で地面に足をつかずにゲートまで辿り着くとコインがもらえる仕様になっており、コイン集めをしている人間は空中に浮いたり、一瞬無重力状態になることが出来る。
私が目指すのは5階のゲート。
私は1階からのスタートだった。
既に私は最強の装備、全自動キャリーケースに跨っている。大体の場所はこれで足をつけず、無事ゲートまで辿り着けるのだが、もう少しで充電が切れそうなのだ。
目の前にスペイン系の親子が全自動キャリーケースに乗って移動していた。
それを見つけた私は、ひっそり後ろの鞄に手をかけ勝手に後ろに繋がって移動することを決めた。
意外と気づかれずに移動できるんだな。有難い。
スイスイ彼らに着いて進んでいくと、お土産コーナーで物色を始めようとした。
早く私はゲートに向かいたかったので、
後ろのスピードアップボタンを勝手に押し、そのまま直進させる事に成功。エスカレーターの前に到着した。
この世界のエスカレーターはとても危険で、段がなく平らな代わりに上に流れるレーンと下に流れるレーンが、同じレーン上に存在する。
少し左に行けば上に流れ、少し右にずれれば下へと押し流されていく。
分かりやすくするためなのか、上りが青色下りが赤色とレーンに色がついている。
スペイン系親子は案の定上手くエスカレーターに乗れなかったので借りていた手をスッと離し、知らないふりをした私は悠々と上に登って行った。
ここまでどうにか順調にゲートに近づいていき4階まで登って来れたのだが、ついに全自動キャリーケースの充電が底をつきた。
昨日充電してなかった私が悪い。
ここからは体力を消耗するが空中戦。
壁キックやそこら辺にいる人の肩を踏み台にして、五階を目指していた。
早くゲートに到着したほうが多くのコインをもらえるので私は宙返りをしたり、連続壁キックをかましたりしてズンズン上に登って行った。
レディープレーヤー1みたいな雰囲気で私はワクワクしていた。
あと少しでゲートだ!!
その時に突然夢が変わった。
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薄暗いアメリカンなリビングに大学の頃の友人が集まっていた。
私は久しぶりに会えたことが嬉しくなってたくさん話していた。するとリビングの真ん中に小さい女の子2人が突然現れたのだ。
1人は黒髪ロング。1人はボブで私だけにしか見えてなかったようだった。
とても可愛くてしきりに私の帽子を欲しがるボブの子に、帽子を貸してあげた。
私も大切なものだから、来年ここにまたきた時に返してね。そういうとその子はギュッとハグをし
「お姉ちゃん、来年は来ないよ。」というのだ
どういうこと?と尋ねると
「お姉ちゃんに来年はないんだよ。お姉ちゃんにすぐに会える様になるから私は嬉しいの。だけどお姉ちゃんに来年がないのは悲しいの。」
涙声でその子は続けた。
「お姉ちゃんはここにこないで。お姉ちゃんにこの帽子返すから、これいらないから、まだこっちに来ないでね。」
と帽子を私に被せて泣いている女の子は走ってどこかに消えた。
呆然としていたら、ホストになったと自称する友達から、イソップの虹色の口紅を買い取ってくれないかと懇願された。
イソップの虹色の口紅は雅楽で使われる笙の様な形をしていて虹色に色が並んでいた。
そこから色を取って自分で混ぜて使う様だったけれど、私は要らないよと手渡した。
ぐちぐち文句を言いながら、下手くそな覚えたての化粧をした顔で私に笑いかける友達を見て何故か胸が痛かった。
ぼぅっとテレビをみんなで眺めていると、一番仲のいい友達が私にマカロンをたくさんくれた。
嬉しくなって、もぐもぐ食べていたら口の中の違和感に気づく。
前歯がぐらぐらしている。
今にも取れそうだ。
怖いと思った私は何故だか口の中で粉砕したマカロンを引っ付け合わせ前歯を固定し始めた。
数日置いたら治るだろう。とマカロン固定の歯を舌で触りながら思った。
そこで目が覚めた
歯は無事だった。
夢でよかった。
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