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ホロホロ外伝

ホロホロさんが火星人に連れ去られそうになった過去をショートショートにしてくれました。
オモシロなので承諾を得てコチラに掲載します。
スラ☆イムの想像で描いた4コマも、ショートショートの後に載せているので合わせてご覧ください。

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あれは私が四十を超える少し前のこと…。

県内随一の歓楽街で昔から知るママの店に久しぶりに顔を出した。

ママ「あら!ホロホロさん久しぶり〜♪この子新しく入ったばかりなの。仲良くしてあげてね」
その子はi美という名の女。
それほど好みの顔ではないがまあいいだろう。
初めて会ったi美としばらく話していた私だが、時間が経つにつれ押し寄せる違和感。
違和感の正体は後ほど書こう。

そろそろ帰る頃になりi美はこう言った。
i美「ホロホロさん、この後時間ありますか?お腹すいちゃって(テヘペロ)」
私「ああええよ。特に用事もないし」

彼女と待ち合わせ、軽く深夜の食事。
照明の薄暗いママの店から、明るい店内の小料理屋に場所を移し、私の違和感はますます大きくなった。

i美が喋るたびに、笑うたびに、その口が麻生太郎よりも歪むのだ!
ほぼ45度に歪むのだ!
そして声!
ママの店でも変わった声だと思っていたが、口をパクパク動かしても、なんと声はその歪んだ口から出ていないのだ!
声と言うよりも音声。
カーナビの音声のような音が口以外のどこかから聞こえてくる。
i美が音声を出すたび私は音源を探してキョロキョロしてしまう。

そこで私は直感した。
“こいつ地球人じゃない…”
そして何故かはっきりと確信した。
“金星人でも土星人でもない。こいつは火星人だ!”
とても上手に地球人の女の姿に擬態している。
しかしi美が火星人であることに私は気がついた。
火星人の姿を知らないが、その構造上火星の技術を持ってしても口を水平にするのは難しいのだろう。
火星の言語を日本語に翻訳する能力があり、背中か…お腹か…見えない部分から出力しているのだろう。
i美の正体を見破り混乱する私には、i美がまばたきをするとまぶたが下から閉じているようにさえ見えてしまう。

“こいつ…俺をアフターに誘ってどんな魂胆があるんだ”

小料理屋を出て歩く深夜の街。
私「じゃあ帰るわ」
何故かモジモジし始めるi美。
i美「ホロホロさん、女の私から言うのは恥ずかしいんですけど…」
私「ん?なあに?」
i美「今度今日みたいな機会があれば…私をホテルに誘ってくれませんか…」

“そうか!こいつの目的がわかった!
私を宇宙船に拉致し地球人の人体実験を行う気だ!
きっと《地球人捕獲マニュアル男性版》みたいなものがあり、そこには色仕掛けでイチコロと書いているのだな!
その手に乗ってたまるか!
俺はお前の正体に気付いているのだ!
ホテルに入った途端その本当の姿を表し俺を襲うつもりなのだ!”

私「うん!じゃあ次の機会にね。楽しみにしておくよ」

初めて会った日に誘うのは早急過ぎる。
もう少し時間をかけた方が怪しまれなくていい。
そうマニュアルの改訂をアドバイスしたかったが、ノルマがあって時間をかけられないのかもしれない。
犠牲者を出さないためにも、擬態の要改善箇所も教えない方がいい。

私は迂闊に誘いに乗ることもなく、正体を見破ったことを悟られることもなく、安堵とともに静かに帰路についた。

それ以来i美のいる店には行かなかった。
女性の誘いを断るのは気が引けるが、相手は火星人だ。
ましてや本当に女性なのかもわからない。
これでよかったのだ。

それから数ヶ月後…。
とある店で別の飲み屋の子と食事をしていたときのこと。
なんと離れた席にi美がいるではないか!
口を歪めどこからか音声を出しているではないか!
そしてi美の向かいには頭の薄い小太りのさえない男性。

“誰でもよかったんかい!”

ハゲの小太りと同列に扱われた気分で少し気が滅入ったが、しかし私はi美の正体に気がつくことが出来たから今こうしてここにいる。
あの男性はきっと色仕掛けに目が眩み、もう二度と我が家に戻ることは無いのだろう。
我が家どころか、この地球からも永遠にさようならだ。
憐れに思ったが、忠告しようとしてi美に見つかりたくはない。

さようなら。
私の身代わり。

それが私がi美を…火星人を見た最後の夜だった。
見上げた夜空に星が流れた気がした。

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《オマケ》

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