スロウ・ボート

ジャズ・ファン歴30年以上のサラリーマン。世の中の動きとジャズを重ねる思考を持つように…

スロウ・ボート

ジャズ・ファン歴30年以上のサラリーマン。世の中の動きとジャズを重ねる思考を持つようになってしまいました。この時代に聴きたくなる一枚を取り上げます。北海道出身の東京暮らし。

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  • 音楽の生まれるところ

    音楽が生まれる瞬間や経緯をとらえた記事をまとめていきます。個人的な愛蔵所です。

最近の記事

交流と発見を生む「道」について

この夏、故郷・北海道に1週間ほど里帰りしました。新型コロナの感染拡大以降、ちょっとした用事で短期滞在したことはあるのですが、これだけ長く帰ったのは久しぶりです。 1泊2日でニセコ・洞爺湖方面にドライブしました。写真は途中で立ち寄った余市町のワイン用ブドウ畑。空が広かった・・・。 片道100キロを超えるドライブをするうちに気がついたことがあります。都市部と地方を結ぶ道路が「荒れている」ことです。ひび割れ、穴、歩道との間に伸びている雑草・・・。時に「ちょっと危ないな」と思う箇

    • 「共感のある社会」というメッセージを

      きのう、安倍元総理大臣が奈良市で演説中に撃たれ亡くなった事件は本当に衝撃的でした。私は元総理と政治的な意見は異なりますが。このような暴力は決して許されてはならず、心よりご冥福をお祈りします。 それにしても気になるのは容疑者と、事件が起きた「奈良市」という場所です。まだまだ情報が少ない状況ですが、容疑者は元総理に関して「政治信条への恨み」はなかったとされています。 「ある宗教団体に母親がのめり込み、家庭生活がめちゃくちゃになり、この団体のトップを殺そうと思っていた」 「元総

      • 「ベイビー・ブローカー」に託された願い

        是枝裕和監督の最新作『ベイビー・ブローカー』を観ました。現代を考える上で必見の作品だと思いました。 物語は韓国が舞台。「赤ちゃんポスト」に若い女性が赤ん坊を預けようとするシーンから始まります。この「赤ちゃんポスト」がある施設で働く若い男性と、クリーニング店を営む年配の男性はタッグを組み、預けられた赤ちゃんを奪って「販売」するブローカー業を行っています。しかし、母親である女性が赤ちゃんを取り戻そうとすることからストーリーは思わぬ方向に進んでいきます。 この映画が優れているの

        • 「農」の世界は日本の縮図だった

          ここ数年の流れですが、「農」への関心が非常に高まっていると思います。 コロナで長い巣ごもり生活を余儀なくされ、「屋外活動」に目が向いたことがあるのでしょう。東京では貸し農園の人気が高まり、順番待ちになっています。私の会社の同僚は東京在住ですが、通える千葉に農園を持ったそうです。 また、資本主義の終わりなき競争と搾取から「降りて」、地方で手ごたえのある暮らしをしたいという考え方も若い人を中心に出てきました。環境破壊につながる都市の暮らしではなく、持続可能性という観点から「農

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        • 音楽の生まれるところ
          25本

        記事

          マスクで「見えない」ことが想像力を刺激する

          「脱マスク」の時代に向かっているようです。今月20日(金)、新型コロナ対策でのマスクの着用について政府の考え方が公表されました。 「屋外では、周りの人との距離が確保できなくても会話をほとんどしない場合には着用の必要はない」などとしています。 厚生労働省が各都道府県などに出した文書はこちら。 000941323.pdf (mhlw.go.jp) 「屋外でのマスク着用について」から具体例を一部抜粋します。 ・ランニングなど離れて行う運動や、鬼ごっこのような密にならない外遊び

          マスクで「見えない」ことが想像力を刺激する

          「興奮の夢」から目覚めた時

          4630万円がいきなり自分の口座に振り込まれていたら・・・。 いま、ちょっとした話題になっている「誤給付」問題、いろいろなことを考えさせられます。 これは山口県阿武町が新型コロナウイルスの影響で生活に困窮する世帯への給付金、合わせて4630万円を誤って24歳の男性の口座に振り込んでしまったことから始まりました。完全な手続きのミスで、町は直ちに男性に謝罪するとともに返還の手続きを行うよう求めていたということです。 報道によると男性は当初こそ応じる姿勢を見せましたが、その後は

          「興奮の夢」から目覚めた時

          「春のこわいもの」に不穏な時代の関係性を思う

          最近、ちょっと怖い読書体験をしました。読んだのは『春のこわいもの』(川上未映子著、新潮社)です。 パンデミックが起きる「前夜」という時代を背景に6人の男女の視点から「人間の嫌な部分」を描いた小説と言っていいでしょう。劣等感や挫折、過去への後悔などが提示されますが、それぞれ何か思い当たるようなものがあり、普遍性を感じさせるところに筆者の力量を感じます。 6つの短編が収められている中で私が不穏なストーリーに引き込まれたのが「ブルー・インク」です。「交際している」と表現するには

          「春のこわいもの」に不穏な時代の関係性を思う

          ゼレンスキー大統領の「語らない」名演説

          ウクライナのゼレンスキー大統領が今月23日(火)、日本の国会で12分に渡ってオンライン演説をしました。実に見事な内容でした。 何が凄かったのか。「語り過ぎないことで想像力を喚起する」手法が取られていたからです。演説の一部を振り返ってみましょう。翻訳はAERA dot.の記事によります。 日本からウクライナへの支援に謝辞を述べた後、ゼレンスキー大統領はロシア軍がチェルノブイリ原発を攻撃したことに触れます。 皆様は、チェルノブイリ原発の事故をご存知だと思います。1986年に

          ゼレンスキー大統領の「語らない」名演説

          戦争の時代に音楽の役割を思う

          このところウクライナ関係のニュースで胸が痛むばかりです。 既に軍事侵攻が始まってから3週間を過ぎました。 ロシアによる市街地の破壊が激しさを増し、ウクライナの一般市民が土嚢を積んだり銃を取っているという報道に触れると本当に21世紀かと暗澹とします。 しばらく音楽を聴ける気分ではなかったのですが、ウクライナの街頭でミュージシャンが市民を励ます演奏をしていたり、各国で支援コンサートが行われていることを知ると心が温かくなります。こんな時だからこそ音楽の力が必要なのかもしれません

          戦争の時代に音楽の役割を思う

          ロシアの原発砲撃から見えてきた「プーチンの終わり」

          ウクライナの南東部にある原子力発電所がロシア軍に掌握されたというニュースは衝撃的でした。 ウクライナ当局の発表によると現地時間の4日(金)の未明にロシア軍の砲撃を受けたということで、一時発生した火災は鎮火し「放射線量の値に変化は確認されていない」としています。しかし、ヨーロッパ最大規模の原子力発電所で起こったことだけに、まさに「世界が震え上がった」と言っていいでしょう。 これまでも原子力発電所がテロの標的になる危険性は指摘されてきました。しかし、ミサイルといった軍事力で砲

          ロシアの原発砲撃から見えてきた「プーチンの終わり」

          カーリングに感じる「人間のリズム」

          昨夜、「良くやった!」と喝采を叫びました。 北京オリンピックのカーリング女子の準決勝で日本は昨夜スイスに8対6で勝ち、決勝に進出しました。これで、日本のカーリングでは初めとなる銀メダル以上が確定しました。 前回書いたように、北京五輪ではフィギュアスケートなどもテレビ観戦していますが、ちょっと気になることがあります。競技が「人間離れした」ものになっている感覚があるのです。 その代表的なものはスノーボードでしょうか。男子のハーフパイプは縦3回転に横4回転も加えた最高難度の技

          カーリングに感じる「人間のリズム」

          羽生結弦が極限から絞り出した言葉

          北京オリンピック、10日(木)のフィギュアスケート男子シングルで羽生結弦選手は4回転半ジャンプに挑みましたが成功せず、4位となりました。4回転半ジャンプは世界で誰も成功させていない大技です。最後になるであろうオリンピックで最高レベルの挑戦を続けた執念には圧倒されました。 試合後、おそらく今回のオリンピックでハイライトとなるであろうシーンがありました。テレビ朝日のキャスターを務める松岡修造さんが羽生選手に行ったインタビューです。顔なじみであるためか、羽生選手が珍しく感情を露わ

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          子どもたちの「何気ない風景」復活を願って

          オミクロン株の感染拡大、これまでとは全く違った様相を見せています。 28日(金)は午後6時までに全国で8万1810人の感染が発表されました。一日の感染確認の発表が8万人を超えるのは初めてだということです。それでもすぐに「緊急事態宣言」とならないのは、オミクロン株の感染力が強い一方で重症化する割合が低いということがあります。 とは言っても、今週は感染の爆発的な拡大でエッセンシャルワーカーが不足したり、企業やインフラなどで事業継続ができるのかという不安が高まってきました。もう

          子どもたちの「何気ない風景」復活を願って

          想像を超える「激しい風圧」とは

          いやはや、けさはびっくりしました。朝起きると、津波警報が鹿児島県の奄美群島とトカラ列島それに岩手県に、北海道から沖縄にかけての広い範囲には津波注意報が発表されていたのですから。 昨日(15日)の段階で、トンガ諸島の火山島で大規模な噴火(日本時間では午後1時10分ごろ)が発生していましたが、気象庁は午後7時過ぎには日本への津波の影響について「被害の心配はない」と発表していました。それが、16日の未明になると潮位の変化が大きくなったことから津波警報・注意報の発表に至ったのです。

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          「カムカムエヴリバディ」時代の日本ジャズは面白い

          NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」にハマっています。 朝ドラを見る習慣があるわけではなく、本当に「欠かさず見た」のは宮藤官九郎さん脚本の「あまちゃん」(2013年)ぐらいです。今回も出勤時にテレビで何となく「見えている」ことはありましたが深い関心は持っていませんでした。 それが、今回は深津絵里さんが途中から主役となり実年齢とは程遠い10代の女性を可憐に演じている辺りから目が釘付けになりました。さらに「ジャズ」がドラマの中で大きな役割を果たしていることが分かり、わ

          「カムカムエヴリバディ」時代の日本ジャズは面白い

          ”社会正義”が活力を奪わないために

          新型コロナウイルスの新規感染者数、4日は全国で1268人という発表がありました。1日の新たな感染者が1000人を上回るのは去年の10月6日以来ということです。感染が国内で初めて確認されてから今月15日で2年になりますが、オミクロン株の出現もあり出口はまだ見えていないのが現状でしょう。 コロナ禍が長引く中で私が気になっているのは、大袈裟に言うと「人間の心のあり方」です。感染に注意する暮らし方が定着すると、「心が動く経験」を持ちにくくなるのではないかと懸念しています。 先日、

          ”社会正義”が活力を奪わないために