カルロス・ゴーンの捜査をめぐる疑問。「絶体絶命」は誰のためなのか

この1週間のニュースで印象的だったのが9日(火)に行われた日産自動車のカルロス・ゴーン前会長による動画の公開でした。

動画が制作されたきっかけは、ゴーン氏が今月4日(木)に行われた再逮捕を予想していたからでした。みずからの主張を事前に録画して、いざという場合には公開することにしていたのです。

結果、公開された動画は日産の幹部に対する個人名での攻撃が弁護側の配慮でカットされたこともあり、それほど大きなインパクトは与えませんでした。しかし、一連の経緯を見ていると、これほどゴーン氏を追い込む捜査のあり方に疑問を持たざるを得ません。

ゴーン氏の再逮捕の容疑は「特別背任」です。簡単にまとめると「日産から出させたお金の一部を私的なものに使った」ということです。一部は豪華なクルーザーなどの購入費に充てられた疑いが持たれています。

これが本当なら悪いことなのは間違いないのですが、この件を取り調べるのにわざわざ本人の身柄を拘束する必要があるのでしょうか?いま、ゴーン氏に対して行われているのは「勾留」という措置で検察官の求めに応じて裁判官が認め、被疑者の身柄を拘束するものです。

これは逮捕に引き続き行われるものですが、罪を犯したことが疑われるのに加え、証拠を隠滅したり逃亡する恐れがあるなどの理由が必要となります。ゴーン氏の場合はあれほど注目されていて、しかも一度は保釈されて携帯やPCの使用まで制限されていたのですから、在宅での取り調べも可能だったのではないかと思います。

ゴーン氏の弁護士は次のように述べています。
「今回の逮捕・交流はゴーン前会長に不当な圧力をかけ、屈服させることをねらったものだ」ー
私は別にゴーン氏の肩を持つ気はありませんが、筋論で言うとこの主張は
正しいと思います。

人間を「絶体絶命」の状況に追い込めば、やっていないことを「やった」と言うこともある。これは近年、次々に明らかになっている冤罪事件を見ても明らかです。本当に真実を突き止めようとするならフェアな手段を取って欲しいものです。

今回は「絶体絶命」という邦題もある曲を聴いてみましょうか。
セロニアス・モンク(p)のアルバム「ストレイト・ノー・チェイサー」に収録されている「ビトゥイーン・ザ・デビル・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー」です。

「ビトゥイーン・ザ・デビル・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー」という表現は「追い詰められて」や「絶体絶命」という意味を持つそうです。
もともとの歌詞は浮気された相手のことが忘れられず、どうしたらいいか分からない「追い詰められた」状態を描いた他愛のないものです。

モンクが演奏したのは1967年で、このアルバムでも共演しているカルテットと好調な時期を迎えていました。ただ、「ビトゥイーン・・・」に関してはモンクのピアノ・ソロです。

その意図は図りかねるのですが、どうしようもない心境を描くのには案外、ソロの方がやりやすかったのかもしれません。

アルバムのメンバーは以下の通り。 Thelonious Monk(p) CharlieRouse(ts)
Larry Gales(b) Ben Riley(ds)
1967年11月と1967年1月、NYでの録音。
「ビトゥイーン・・・」は1967年1月に収録されました。

⑤Between The Devil and The Deep Sea
最初からメロディに入る構成ですが、そこはモンクなので普通の弾き方ではありません。メロディの切れ目を不思議なところで入れて、訥々とブルース・フィーリングたっぷりにゆっくり弾いていきます。
ソロに入るとテンポが上がり、ストライド的な奏法を交えながら彼らしいスイングをしていきます。ソロの中にメロディの一部が分解されて何回か顔を出すのでモンクはこの曲がかなり好きだったのではないかと推測します。
左手のビートは単調なままに、右手で緩急をつけながら「行ったり来たり」する独特のプレイで、当時の好調さが分かります。
最後のメロディ部分では分解をさらに楽しんでいる感があり、叩きつけるような鍵盤さばきで明るく歌い上げていて、こんなにハッピーなモンクも珍しい。
「追い詰められていることも楽しんじゃいなよ!」と言っているようにも聴こえます。

最近、気になるのはゴーン氏をめぐる報道の「情報量の多さ」です。
再逮捕後、ゴーン氏が自分側に金を還流させていたことをうかがわせる
メールのやりとりがあったことが報道されました。こうした深い情報は
東京地検特捜部からメディアにリークされているとしか思えません。

ここまで検察が敵対的に出ると、ゴーン氏はむしろ闘争心を燃やすのではないでしょうか。その場合、日産自動車にとって不都合な事実を法廷で明らかにすることも予想されます。

ゴーン氏が「絶体絶命の状態」から強硬な姿勢に出ないためにも、せめて
手続きだけは後ろ指を指されないような形が望ましいと考えるのは普通の
ことだと思うのですが、どうでしょう。

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スロウ・ボート

ジャズ・ファン歴30年以上のサラリーマン。世の中の動きとジャズを重ねる思考を持つようになってしまいました。この時代に聴きたくなる一枚を取り上げます。北海道出身の東京暮らし。
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