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石田ゆり子が心配した「オリンピックの暑さ」をめぐって

連日猛暑が続いています。東京は先月末の梅雨明けから一気に気温が上がった感があり、身体がついていかずくたびれた、という方も多いのではないでしょうか。

最近、ネットニュースで話題になっていたのが女優の石田ゆり子さんによるインスタグラムでの発言でした。「わたしはかなり夏バテです」という報告に続き、次のように述べていたのです。

「いやはや・・・来年のオリンピック、海外から来た方々、この亜熱帯のような東京の夏に本当に耐えられるのか、本気で心配です。目の前で人が倒れた時の対処の仕方を国民全員で習ったほうがいいと本当に思うワタクシなのです。」

来年のちょうどいまごろ行われる(開会式7月24日、閉会式8月9日)
東京オリンピック。私も石田さん同様、「本当にこの時期にやって大丈夫か?」と思います。夏の東京の気温と湿度の高さは屋外競技にとって過酷すぎるからです。

朝日新聞が東京五輪に向けたオープンウォータースイミング(という屋外での水泳競技があるんですね!)のテスト大会がきのう東京湾の入り江で行われたと伝えています。水温の上昇を考慮し、男子のスタート時刻を午前10時から午前7時に変更したそうです。国際水泳連盟によると、選手が健康的に泳げる水温の上限は31度。この日は午前5時で29.9度でした。

気になるのは大会の基本的な設計が「アスリートファースト」ではない、
ということです。開始時間が午前6時に早められたマラソンもそうですが、主催者側の都合が先に立ち、アスリートが置き去りにされているのは明らかです。

1964年大会にならってせめて10月に開催したらアスリートも晴れの舞台で記録を出しやすくなるでしょうし、観客の負担も相当軽くなります。金銭負担だけでなく、「無理」を重ねて決行していることが五輪招致レースから撤退する都市が相次いでいる要因ではないでしょうか。

強烈な暑さはリラックスしてまどろむ程度にしたい・・・今回はそんな思いから「熱波」というタイトルがついたアルバムを聴いてみましょう。
カル・ジェイダー(vib)とカーメン・マクレエ(vo)が共演した「ヒート・ウェイブ」です。

ラテン・ヴァイブラフォンの名手、カル・ジェイダー。このアルバムでは
ジェイダーの味付けと、ストレートなジャズを歌うことが多かったマクレエのフィーリングが見事に融合しています。

選曲も面白く、エリントンからスティーヴィー・ワンダー、クルト・ワイル、イヴァン・リンスまで幅広い音楽家の作品がそろいながら統一感のある仕上がりになっています。

1982年1月、サンフランシスコでの録音

Cal Tjader(vib) Carmen McRae(vo) Marshall Otwell(p) Mark Levine(p)
Rob Fisher(b) Vince Lateano(ds) Poncho Sanchez(conga,perc)
Ramon Banda(timbales,per) Al Bent(tb) Mike Heathman(tb)

①Heat Wave
数多くのスタンダードを手掛けたアーヴィング・バーリンが作曲したナンバー。しかし、冒頭で鳴り響くパーカッションから「普通のジャズ」ではなく、ラテン色の強い演奏が始まることが分かります。そこに「パララ パッパッパー」というフレーズを奏でるトロンボーンとバイブラフォンが入ってくるのですが、このアレンジが随所に顔を出し、曲を駆動させる素晴らしい仕掛けになっています。この後に続くのがマクレエの伸びのある歌声。
「ぼくらには熱帯の熱波がある あの女性が現れると 気温が上がるんだ・・・」という歌詞の内容がすっと入ってくる楽しさがあります。
余裕たっぷりに曲のキモをつかんでいるのがベテランのすごさ。
間奏ではリラックスしたジェイダーのバイブラフォンがラテン・リズムに
乗って軽快に響き渡ります。こちらも素晴らしいグルーブで踊りたくなってくるほど。「熱波」を笑顔で思い切り味わう人々の姿が浮かんでくるようなハッピーな仕上がりです。

⑧The Visit
このアルバムではあまり語られることのない曲のようですが、作曲したイヴァン・リンスの持つ洗練さと哀感が見事にブレンドされたバラッドだと思います。現れなくなった友人の不在を嘆く歌で(歌詞を読んでいると friend=友人は恋人にしか思えないのですが・・・)、ピアノとバイブラフォンによる美しいイントロを受け、ゆったりとマクレエが歌います。これが余計な感傷を排した冷静かつ深い声で、マクレエの豊かな表現力を知ることができます。
特に冒頭の「Come my friend....」と
最後の「Pretnding I'm Alive...」という切ない呼びかけは聴きもの。
間奏で訥々としたバイブラフォンを聴かせるジェイダーもここまで抑制的になるのかと新鮮に感じます。
夏の別れを癒すのにいい音楽でしょうか・・・。

ほかにも ⑨Speak Low の楽しいアレンジと御大2人の素晴らしいグルーブあふれる演奏など、聴きどころがいっぱいです。

そういえば1984年のロサンゼルス五輪で女子マラソンのガブリエラ・アンデルセン選手が脱水症状でフラフラになりながらもゴールしたことがありました。

あの当時は「感動的なこと」として扱われていましたが、同じような事態が予想されるのに「突っ込むこと」の意味は問われなければなりません。

夏の暑さは人を楽しませることもあれば苦しませることもある。自然には抗えないことを無視した時に、手痛いしっぺ返しがあることを忘れてはいけません。

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