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癒えない悲しみ


芦原妃名子さんの訃報は、
自分でも驚くほどにショックを受けた。
それは今でも続いている。

学生時代に『砂時計』に出会った。
少女漫画にしては繊細なテーマで
時に残酷で、だけど温かくて
私はこの作品の虜となった。

主人公・杏の幼少期から大人になるまでに
様々なことに傷つきながらも
再生していく心の動きや
その周りにいる人々の心情
とても丁寧に描かれている。

漫画からでも伝わる島根県の雄大さと美しさ、
温もりを感じ取れる言葉の数々、
物語に登場する一年分の砂時計が
仁摩サンドミュージアムにあることなど
たくさんのことを教わった。

ドラマチックな展開なだけに
昼ドラで映像化されたときは
夢中で見ていた。
まだ中学生ぐらいだったので
実写化の良し悪しも分からなかったけど
丁寧に描かれていたように思う。

それから映画化もされ、
こちらも鑑賞した。
母と一緒に見たが、
母もいい作品だったと感動していた。
やはり漫画の世界観と映像の世界観の差は
どうしてもあると思う。
あるけれど、その作品が何を一番大切にしているかは
見ていてわかる。


ドラマ『セクシー田中さん』は
私は見ていなかったため
原作との違いも分からないが
確実に言えることは
約束(契約、条件)を守らなかった人たちに
100%落ち度があったということ。
物事に100対0など存在しないと
普段は考えているが、これはわけが違う。

予め「こういった理由でこういう条件を出します、
それでも大丈夫ですか?」
と"何度も"確認した上で承諾しているのだから、
「条件を受け入れ、その通りにします」ということ。

それならばと了承したのに
話と違うことを繰り返されたら
当然疲弊していく。
ましてや連載中の漫画であり、
漫画を描かなければいけない中で
自分の作品はオリジナル化され、
修正しても跳ね返される気持ちは
どれほど悲しかっただろう。

大事な大切な宝物が
何度も傷つけられれば
その傷を見るたび胸が張り裂けそうになるだろう。

その上、最終回を迎えた後に
脚本家による嫌味の数々。
誰かを責めたりしたくはない。
それは芦原さんの望むことじゃないとしても
当事者ではない私が読んでも
これは"嫌味"以外の何物でもないと感じたし、
ましてや言葉を紡ぐ仕事をしている人が
あの言葉を敢えて選び、不特定多数の人が見れる
SNSで並べるとは…人柄が見えるなと感じた。

「私の作品を、私の仕事を横取りした」

とでも言いたいような。

そもそも、
最初の話はどこへ行った?
となるわけで
約束を守らなかったのはあなたとプロデューサーで
守れない場合こういった処置をするということも
事前に伝えてある通りにしたまででしょう。

テレビ局も忖度してるのか知らないが、
根本的なことには触れないまま。
そんなに脚本家様々に扱うならば
原作があるものじゃなくて
その方オリジナルのドラマを制作すれば
良かったのでは?
あなたが書いたドラマなら高視聴率狙えます!
動画再生回数一位獲れます!って
言えばよかったのでは?
それを原作のある作品をドラマ化にしたいと言ったのはテレビ局なのに、原作を蔑ろに扱うなんて本当にありえない事態だと思う。

自分の傷には敏感で防御が早い人たちが
結局はこの世界に生き残り続ける。
どのテレビ局もこの件に関して取り上げても
テレビを守るような的外れなコメントしかしない。
本質を捉えられないのなら中途半端に報道しないでほしい。

芦原妃名子先生。
私に「砂時計」という物語を
出会わせてくれてありがとうございました。
これからもずっと大好きな作品です。
芦原先生は望んでいないと思いますが
私の心の中にずっと残っている作品を描いた先生が
いなくなってしまったことの悲しみや悔しさを
ここに綴りたかったのです。
寒かったでしょう。
苦しかったでしょう。
辛かったでしょう。
今、先生が温かくて優しい世界に
いることを心から願っています。