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ずっと想いを抱きつづける

2018年末ライブ『BEEKEEPER』の時よりもずっとふっくらして、元気そうで、よかったと思う。
インタビュアーの質問を最後まで聞かずに話し始めるところも、ずっと前からそんな感じだったような気もするし、あなたらしいねと思う。
笑顔が多くなって、よかったねと思う。20年前よりも話せることが増えたり意固地になっていたものが解れてきたのだろうねと思って、ただただ、よかったねと思う。

中学生になったばかりの4月、もうだめだと思って初めてしょぼいリストカットに及んで親に見つかってすごく泣かれて、次の日の朝、起きてしまったなあと思いながらふらふらとCDコンポの電源を入れてヘッドホンを被って、『月光』を聴いて、ようやく自分の分の涙がぼろぼろと溢れ出したあの朝。

活動休止になって久しく経ったころ、部屋でひとり『ULTIMATE CRUSH』DVDを再生して、涙が止まらなくなってどうしてこの人は今歌っていないんだろうもう戻ってこなかったらどうしよう、なんて、めちゃくちゃな気持ちになって泣きながら友達にメールしたあの夜。

あなたの音楽を聴かずにここまで来ていたら、きっと違う人間になっていただろう。あなたと同じ道を選ぼうが選ぶまいが、あなたがいたから今の自分がここにいると、言える人はどんなに多いことだろう。あなたは小説を読まないと言う、けれどあなたの音楽を聴いて大人になったわたしは小説を読むように、完全にあなたと一致しなくてもあなたがいなければ成立しなかった人たちが、きっとどんなに、多いことだろう。

あなたの音楽を聴くことを、隠していたけどみんなが知っていた子供時代。わたしの小中学校の同級生たちは、どうしてだかみんな、わたしがあなたの音楽が大好きなことを知っていたよ。昨日鬼束ちひろテレビ出てたよね、あっねえ聴いて鬼束の新曲、着メロダウンロードしたよ、これあんたの好きな曲やろ。
あの日々全部が懐かしい。

あなたが、生きて、そこにいてくれるならそれだけでいい。歌いつづけると言うのなら、この先どれだけ耳が悪くなることがあってもあなたの音楽だけは聴くだろう。

あなたの音楽で英単語を覚えた。文法を覚えた。
あなたのことを知りたくて、あなたが好きだと言った歌手の音楽を聴いた。
あなたの音楽を弾きたくて、楽譜を買ってもらった。
(今でも指先が覚えている『眩暈』のイントロ)
わたしの日々は、あなたなくしては、もはや存在しえず、わたしの日々は、常にあなたと共にあった。

だからこれからも、ずっと想いを抱きつづける。あなたの健康、平和、生活、音楽、全ての無事を祈っている。

読んでくださってありがとうございます。いただいたお気持ちは生きるための材料に充てて大事に使います。