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流木の鳥

休日の朝、何げなく古物商タミゼの吉田昌太郎さん著『オルガの木靴』(目の眼)を眺めていて、おとり用鳥の模型「デコイ」の素朴な佇まいに惹かれた。

簡素を極め、ささっと素早く手軽に作ったように見える造形がとても魅力的だ。ぼくにもできるような気がして、真似したくなった。

雨上がりの土曜日。近所の「ポコパン」で翌週の朝食用食パンを買いに寄りつつ、葉山一色海岸を経て隣りの秋谷(久留和)海岸へ。

長者ヶ崎側のエリアは海流、沿岸流の作用で相模湾の流木が打ち上がる場所。川から海へと流れ出たであろう竹が目立つが、加工された建材も多く混じっているのが特徴だ。しかし、こうした木材はいったいどこで捨てられ流れ着いたのだろう。いつも首をかしげてしまう。

あらかじめ自分なりのデコイのイメージがあったので、それになんとなく近いかたちを探したら、すぐに求めるものが眼に入ってきた。首から頭につながる部分は風化した枝。胴体は建材の端材。後者は工事現場もしくは浜での焚き火で燃やされたのだろうか、炭化して黒ずんでいたが、竹で表面をこすっているうちに深い茶褐色に変容していった。おまけはついでに拾った「へそ石」。かつては露呈する三浦半島最古の地層「葉山層」からたくさん産出したであろう深海生物の巣穴まわりの砂や泥が凝固(コンクリーション)した石。地層が人工コンクリートで覆われ、大量の砂利で波打ち際が養浜工事された近年ではレアな打ち上が物になりつつある。久々に見つけてオッ!と思わず小躍りしてしまった(笑)。

家に戻ったら黒豆大福をおやつとして自作するつもりだったが、素材を前にコーヒー飲みながらひと息ついていたら、すぐに手がけたくなってカッターとヤスリだけで製作開始。脳内ヴィジュアルには、ごく限られた道具で小物を創作し、脱獄を図る囚人の姿が浮かび、像を重ねた(笑)。無心になって鳥をかたどっていく。その静穏な時間がたまらなく愛おしく楽しい。

胴体に穴を開けて首を押し込んで固定。接着剤も使わず小一時間で出来上がり。なかなか佳い感じじゃないの?と自己満足。次はもう少し凝った流木の鳥を目指してみようかと欲が湧く。

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