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朝のアイスクリーム

ここ一カ月、逗子市立図書館の蔵書に魅せられてから週末ごとに通うようになった。東京で働いていた3年前までは毎日、葉山の自宅と逗子駅を行き来していたのに、横須賀市内での造園業に転じてすっかり足が遠のいてしまった。要は逗子中心部の人と車の多さが苦手で、休日は基本、静穏な葉山にこもって安息したいし、わざわざ賑やかな街で過ごすのが億劫なのだ。これは加齢特有の及び腰なのだろうか。

そんな隠居めいた生活ではいけないと、図書館に本を借り、返しに行く。それを機に、逗子へ出かけ、新たな刺激や楽しみを見いだし発奮するよう自身に強いているのである。昨日は朝早く向かった。理由は図書館の後、逗子銀座通りにあるお気に入りのヴィーガン・アイスクリームショップ「CREMAHOP」に寄りたいと考えたからだ。10時の開店時刻に合わせて行動したのは、昼過ぎからは地元の買い物客に観光客が混じり、店内が混みいってしまうからだ。

朝のうちは海水浴シーズンを除いて、まだビーチタウンののどかな光と空気が満ちている。通りを行き交う人も少ない。その穏やかさに心が深くなごめるこの時間帯が自分には具合良い。

空いているタイミングだからスタッフの女性に無理を言ってずっと焦点を合わせたかったアイスクリームをすくい取るシークエンスをスナップさせてもらった。使用するのは北米ゼロール社の『アイスクリーム・スクープ#12』。マンハッタンMOMAのコレクションにもなっている、西欧の彫刻作品みたいな造形に強く惹かれ、いつか入手したいと望んでいるが、実際の使い勝手を尋ねながら、道具が働くさまを眺めたかった。

その願いが叶って気分が高揚し、12月限定のメニューからイタリア産マロンをたっぷり使った、濃厚な『モンブラン』と、バナナをベースにパイナップルの酸味と胡桃の食感がアクセントになった『ことりのうた』のダブルを選んだ。まったり&さわやかな組み合わせが大正解で、眼を閉じてうっとりと美味に心酔。朝の逗子、図書館のちアイスクリームの佳き流れが休日のマイ・ゴールデン・メニューに加わった。

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