フィロソフィーのダンスが教えてくれたこと

今年に入ってから女性アイドルが好きになった。

きっかけはTwitterでフォローしている人が好きな曲を集めたプレイリストを公開していて、その中に入っていた一曲が私に刺さったことだった。フィロソフィーのダンスというアイドルグループのヒューリスティック・シティという曲だった。シングルのジャケットにアイドル感が薄く、楽曲がしっかりしてるし、歌が上手いので女性ボーカルグループだと勘違いしていた。(当時はSpotify使用歴がまだ短く、アーティストを深掘りするという発想がなかった。)Spotifyを使いこなせるようになってから、フィロソフィーのダンス、通称フィロのスが四人組アイドルと知ったときは愕然とした。私はこれまでTVで観てきたアイドルを、本当に正直にいうと軽蔑していたからだ。そんな私がアイドルソングを好きになった。その事実に打ちのめされてボロボロになった時、私のアイドル軽蔑とフィロのスの輝きが渾然一体となって一つの答えを教えてくれた。


これまでの私のアイドルのイメージ…という名の偏見を説明する。
沢山の女の子たちが似たような衣装を着て、音楽番組で歌って踊る。曲の内容は清涼飲料水や制汗剤のCMでよくありそうな青春。どんな高音でも低音でも笑顔は絶対崩さず口を動かす。ダンスも経験に裏付けられたもの…というよりみんなで揃えることに重きを置いている。ちゃんとレッスンを受けさせてもらえているのだろうか。キラキラな表舞台の裏では過酷なスケジュールや一部の悪質なファンからのセクハラにひっそり耐え続けて消耗していく。年齢を重ねたら「劣化した」などネットに書き込まれて、周りの大人たちは助けてくれず、まだ若いのに路頭に迷う…

ずっとアイドルが好きな人には申し訳ない。本当にすみません。でもこれが昔の私がアイドルに思っていたことです。
まだこの偏見を持っていたとき、フィロのスを好きになってしまったことに罪悪感を感じた。自分が女の子たちを消費する側になったからだ。曲を聴くたびに、ジャケットの4人の顔を見るのが申し訳なかった。

しかし、ちゃんとフィロのスについて調べて、公式のSNSのアカウントをフォローし、YouTubeでパフォーマンス動画を観て活動を追いかけていくうちに、私の偏見は崩れ去っていった。

フィロのスを語るとき、いろんな視点があると思う。高クオリティな歌唱とダンス、それぞれのキャラクターに個性。しかし私は「グループとしての安心感」を1番特筆すべきと考える。

1. 周りの人がちゃんとしてる

私が感動したのは、組織としての風通しの良さである。プロデューサーは有名アーティストを多数発掘した加茂啓太郎という音楽プロデューサーである。この方はバンドのプロデュースを多くしており、フィロのスをプロデュースするにあたり、いい意味でアイドルの常識を打ち破ってる。以下の記事からも分かるようにメンバーとよくコミュニケーションを取れていることがわかる。

十束おとはと吉田豪 アイドルのキャリア形成とセカンドキャリアを語る https://miyearnzzlabo.com/archives/63601

先程示した私の偏見にあったように、アイドルの女の子たちの周囲の大人が頼れない、という状況は最悪の結果を引き起こしうると考えている。実際フィロのスを好きになる以前に、それが原因の大きな事件を目の当たりにしたので組織の風通しの良さを私は重要視している。

2. メンバーが大人

この表現は誤解を生むかもしれないが、この「大人」とは精神的なものを指している。
先ほどの記事から分かるようにメンバー言語化能力が高い。この記事は十束おとはさんの記事だが、他の3人のSNSを見れば私の言いたいことをわかっていただけるだろう。アイドル的な可愛らしい文体の合間合間に感じられる配慮と誠実さ。現代社会で最も必要とされるものだと思う。安心してSNSをチェックできることは大きい。

3. アーティストとしての実力

私の偏見で挙げたようなパフォーマンスは私にとっての少女消費の象徴である。
フィロのスのパフォーマンスはどうだろう。まずはこの動画を見て欲しい。

フィロのスの代表曲の一つであるライブ・ライフという曲のライブ映像である。パフォーマンスの映像の合間に彼女たちの赤裸々な思いや、リハーサル風景が垣間見れる。

最初にこの映像を見た時、私は泣いた。
4人がそれぞれ悩みや曲にかける思いを抱きつつ、ちゃんと練習を重ねている。そしてその努力が彼女たちのあの笑顔につながって、ステージ上で最大限の輝きを放つ。あまりの眩しさに目が潰れそうになった。きれいごとと言われるかもしれないが、これほど尊いものがあるだろうか。真っ当にやってきた人たちが輝く世界。簡単そうでとても難しい。フィロのスはそれを体現して我々に示してくれる。本当にありがとう。
しかし、この映像はあくまで作られたもので、実際は違う可能性もあるという意見もあるだろう。このドキュメンタリーが作り物かどうかは、この後のライブ映像で明らかになっている。

シスターのライブ映像だ。
先程と曲は違うが、パフォーマンスが格段に上がっていることがわかる。あの努力はドキュメンタリー用の見せかけではない。フィロのスはみている人に感動だけじゃなくて勇気も与えてくれる存在だと心の底から思った。


フィロソフィーのダンスを好きになって、私は大きな偏見を持ってることに気づき、向き合うきっかけを得た。本当にフィロソフィーのダンスに感謝したいと思う。本当にありがとう。

そして、何かを大好きになる以上、自分がそれを消費していないか常に確認していこうと思う。

これは私の感謝と自戒の文章である。

最後に、アイドルの女の子が暗い悩みに囚われず、笑顔でアイドル活動ができますように。この祈りでこの文章を終えようと思う。

読んでくださりありがとうございました。