バブル崩壊時、富裕層の資産隠しスキーム②~恐怖の引継ぎ会議と当時の風景~

※二十数年前の取材と記憶に基づいた完全なフィクションです。
実際に登場する人物、エピソードは架空の物です。

■恐怖の引継ぎ会議
B先輩の顧客を引き継ぐ会議が始まった。
当時の証券会社は人事異動発表時に出張セットを持っていき、事例がでた瞬間に異動する支店に行き引継ぎを始める。
辞令がでて当日に赴任するのは常識。
なぜか?
すぐに引継ぎを始めないと良い客を取られる。
そういう無茶苦茶な文化がありました。なのでまあ、入社数年の私に良い客は来ないと読んでました。

C課長「Bが本社に異動になった。みんな理由は知ってると思うけど、顧客が意思のないワラントを購入させられたと主張されてトラブルになっている。
預かり書を回収できない。それ以上は言わなくてもわかるな」

D支店長「当社はコンプライアンスを重視しているのでお客様とのこういったトラブルは絶対にないように再度皆さんに要請したい」

いつも灰皿を投げる、四季報を投げる、支店長がやけにおとなしい。
流石にこの場で恫喝しても逆効果なのかな

C課長「支店長、後任は誰かくるのですか?」

D支店長「こない、主力客はC課長とE代理、ワラントでトラブルになっているXさん、手数料にならない小口の客は上海君に担当させろ」

C課長「はい、そのように対応します」

■喫煙所のぼやき
当時は会議室が喫煙所になっていて、アバウトな文化でした。

E代理「上海、大変やな、しかし普通トラブル客を3年目の新人に担当させるか、ふ~」

上海「まあ仕方ないですよ。支店長が決められたことですからね」
内心今買った230円のマイルドセブンを吸いきるまで座っていたいほどやる気がでない。なんで俺が面倒なトラブル客を担当するのか

E代理「上海、お前上に嫌われているからな、言葉は丁寧だけど内心服従してないの見たらわかるぞ、まあお前生意気やもんな、株が好きで変わってるし」

上海「誤解ですよ、田舎者の私を採用してくれた会社には感謝してます。休日のイベントにも全て参加してるじゃないですか、それに後輩や新人が全て退職して残っているのは私だけなのにひどいw」

E代理「まあ、新幹線停車駅とはいえ20人程度の小さい支店だからな、やる気のある若手は嫌になるんやろう。しかし、お前マアマア学歴は良いし、簿記の資格も持ってるし、決算書とか読める、成績も悪くないのに何でこんな田舎の支店にいるのかな。おそらくもっと大きな支店に異動になるから頑張れよ、見ている人間は見ているからな」

上海「ありがとうございます。別に今の支店でも良いですし、どこにでもいきますから。この就職難で就職できたんですからね。国立でてもフリーターとかですからね。来年の2002年ワールドカップで景気は良くなればいいですけどね
内心、こんなことを言いつつ、次にもっと田舎に配属されたらどうしようかと思い始めてました

■ダマテンで数億円程度損失を出したXさんへの訪問

Xさんは地元の年商数十億円程度のオーナー社長、地元名士で丘の上にある大きな家。ピンポンを押す。
D支店長の魂胆は、Xさんの家付近で新規開拓を私にやらせるためにXさんの担当にしたんだなと当時は考えていたが、その期待は大間違えでした。
最終章でこのカラクリを解説します。

女性の声「はい」
上海「新しく担当になりました上海と申します」
女性の声「・・・・・」

はい、無視。当たり前の反応ですね、次回のクイズです。
実話ですが毎日、土日もXさんを私は訪問しました。
何回目の訪問で声を出して反応してもらえたでしょうか。

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