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自らを傷付けた友達が教えてくれたこと


何年も前のこと、
中学2年生だった私は、いつものように家の近い友達と学校から家に向かって歩いていた。

その子とは8歳からご近所で、何年間も毎日、
一緒に学校へ行き、一緒に帰ってた仲だ。


その子は少し、
人間関係を築くのが苦手な子だった。


良くも悪くも思ったことは相手にズバズバと言う性格だし、相手が少しでもツンとした態度を取れば、自分も気にしてないよと言わんばかりにツンツンした。

思春期に特有の、噂話や陰口の言い合いなどでしょっちゅうクラスメイトと揉めていたのを覚えている。


でも、そんな強気な彼女も、小さい頃から一緒のわたしの前では怒らないし、素直だった。

朝、学校までの道であの子がいやだとか、
こんなことを言っているらしい!ムカつく!
とプンプンしたと思えば、
帰り道に弱音を吐くこともある。


私はその子とクラスが違ったので、
クラス内での様子は、話に聞くだけだったのだけれど。


その日も、いつもと同じように帰り道を歩いていた。すると、家の近くのコンビニに寄りたいと彼女は言う。


本当は制服のまま寄り道をするなと言われていたけれど、近いコンビニなら「ほぼ家」という謎の理論でしょっちゅう寄り道をしていた私たちは、その日も帰りに立ち寄った。


コンビニを出て深妙な面持ちの彼女を見て、「ああきっと何か悩みがある」と察した私は
「どうしたの?」とだけ聞いた。


何も言わないままの彼女。
わたしも黙って、彼女を見つめる。

すると、動き出した彼女は、
「…これ。」と言いながら、
制服の裾を捲って、自分の手首を私に見せた。


そこには、リストカットの跡があった。

衝撃だった。話にしか聞いたことがなくて
傷を見て、言葉がでない。

「………なんで…」

絞り出すように言った私は、それを見たと同時に、自分でも気付かぬうちに、泣いていた。


その子が泣きたいはずなのに。
先に泣いた私を見て、その子も泣いた。

クラスメイトとうまくいかず、仲良しだったグループにも遊びに誘ってもらえなくなって、
下駄箱には傷付けるための言葉が書かれたメモが入っていた。

自分も悪いのはわかっているが、どうしようもなくなって、辛くなって、リストカットをしたのだと、その子は言う。

わたしは、なんでと聞いたものの、
その時は言葉が頭に入って来ずに、
思ったことはただひとつだった。


とにかくリストカットをやめてほしい。
自分を傷つけないで。

大泣きしながら話すその子の話を聞いてから
大泣きしながら私は言った。


「愚痴ならなんでも聞くし、私になら何を言ってもいいよ、だから、切るのだけはやめて」

「…おねがい。おねがい!」

そしてその子はまた、大泣きしながら答えた。

「わかった、わかったよ。」


後から私は、
自分があんなに取り乱して良かったのだろうか?何かあの子を救う言葉をかけただろうか?

あの子よりも私がわんわん泣いて、何をしているんだろう?と思ったりした。


けれど私は、掘り返すのもなんだかなと、それについて後から言及することができずにいた。


高校を卒業する頃になって、ある日。
相変わらずな関係のその子に言われた。

「あの日、Karen.は本当の友達だって思った。私も泣いてたけど、すごく嬉しかった。」

その子は続けた。

「あんなに冷静じゃないの初めて見たし笑」

「…なによりも、私のためだけに泣いてくれたから。私のためを想って泣いてくれた友達は人生で初めてで、一生大事にしようと思った。」

と。


そうか

その子にとって、初めて自分のためを想って自分でない誰かが泣いていたあの日は、私にとっても初めて人を想って泣いた日だった。

部活で勝てない悔しさでもなく
ピアノがうまく弾けないもどかしさでもない。

きっと傷を見たショックと怖さも
混じっていただろう。

だけど確かに私はあの日、
「とにかく傷を付けないで」と
あの子に懇願したあの瞬間、

その子のことだけを想って泣いていた。


その子に関わるその他のすべて、
イジメの動機やクラスメイトの気持ちなんて
心の底からどうでもよかった。


とにかくその子がもう
傷付かないでほしいと思ったのを覚えている。

後の人生、わたしは逆の立場になって
(リストカットはしていないが) 悩む私のために涙を流してくれる人に出逢ったことがある。


その時も然り、誰かが誰かのために涙を流すのを見る度にこの出来事を思い出す。


その子は教えてくれたのだ。

所詮、"人は人 自分は自分"と思う私でも
目の前のたったひとりに対して、
それも意識せずに、泣くことがあるんだと

人は、本当に大切な誰かの幸せを願う時、
自分の損得や私情とは関係ないところで
涙を流せるのだと、

そして、誰かが
たったひとりの誰かのためを想って涙を流す時


その涙が相手の魂を震わせるほど
温かいのだと。


#エッセイ #コラム #人 #友達 #衝撃 #出来事 #涙 #温かい #魂

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Karen.

旅がすき。人がすき。文章もすき。心が温かくなる文章が書けたら良いな。

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