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3分で分かるアラン・ウォーカー:生い立ちデビューから最新アルバムに至るまで

ノルウェー人プロデューサー、アラン・ウォーカーが2022年に入り最新アルバム『ワールド・オブ・ウォーカー』の日本盤をリリースしました。デビュー以来様々な楽曲を大ヒットさせEDMシーンのスターDJとなった彼の生い立ちから、最新作に至るまでの歴史と世界観を分かりやすくDJ/キュレーターのTJOさんに解説してもらいました。
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1. 生い立ち、そして名曲『Faded』

アラン・ウォーカーは、ノルウェー出身のプロデューサー。1997年8月24日生まれで、数々の大ヒット曲やキャリアからすっかり大御所の風格漂いますが、まだ24歳だから驚きます。そんな彼は幼少時代からコンピューターに興味を持ち、プログラミングやグラフィック・デザインを学びます。アランの名の「A」と「W」を冠したロゴはなんと自分でデザインしたものだそうです。

15歳で独学で音楽プロデュースを学び、オンラインで楽曲をリリース。『Faded』の前身となるインスト曲『Fade』が一気に注目を集め、2015年4月に同郷のシンガーイセリン・ソルヘイムのヴォーカルを加えた形で『Faded』を発表します。ご存知の通りこの曲は大ヒットを記録し、EDMシーンを代表するアンセムとなりました。ここではそのミュージックビデオ(以下MV)ではなく、2020年12月に楽曲リリースの5周年を記念してアラン自身がアップした大規模フェス会場での大合唱のビデオを紹介したいと思います。この映像の圧倒的な景色だけでどれだけこの楽曲が愛されているか伝わってきますね。


『Faded』は当時のドイツやスウェーデン、スイス、オーストリアの年間チャート1位のみならず、全英週間シングル・チャートと全米ホット・ダンス/エレクトロニック・チャートでもトップ10入りを記録。この曲ががユニークだったのはEDM全盛の頃にアッパーなビートではなく、ゆったりしたテンポの遅いビートに情緒溢れる切ないメロディーと一緒にいた2人の心が離れていく「Faded(色あせて消えていく)」様子をアトランティスやモンスターなどのSF的な表現と共に哀愁漂う描き方をしたという点、また当時新しいムーブメントとして遅いテンポの曲であればKygoを筆頭としたトロピカル・ハウスの流行があったのをあえてハードなインダストリアルベースアプローチのビートにし、その逆の発想の新鮮さとフロア鳴りとしての強度も併せ持たせた事で唯一無二の楽曲として大きな評価を得たと思います。(実はトロピカル+エレクトロにしようとしてたのを諦めたという経緯もあったようです。)

また2017年の『The Spectre』は発売から5年経った今もTikTokの人気曲としていまだに大きな支持を得ていて、2021年5月時点で楽曲&MV累計再生回数500億、YouTube総再生回数100億、SNS累計フォロワー数1億2千万人、YouTubeで最もフォローされているアーティスト9位という圧倒的な記録を誇っています。以降「ウルトラ・ミュージック・フェスティバル」や「コーチェラ」「トゥモローランド」など600本以上の大型フェスに出演し、コールドプレイ、ブルーノ・マーズ、シーアなどトップ・アーティストのリミックスも手掛け、2017年にはノーベル平和賞コンサートに出演するなど、その地位を確実なものにしました。


2. ゲームや映画から多大な影響を受けた独自の世界観

彼の音楽の持つ特徴は、ダンスミュージックの枠に収まらない世界観だと思います。壮大さと重厚感を併せ持った美しいメロディ、それはどこか映画音楽的でパーティーを演出するという目的のダンスミュージックとはある意味違ったものです。その一貫した世界観は数々のインタビューでも言及されている通り、大好きな映画やゲームから大きなインスピレーションを得ています。また彼のMVではSF的近未来が舞台でメッセージ性を持った作品が多いのも共通しています。トレードマークであるマスク姿も今となっては奇しくも現代のコロナ渦の現実とリンクし、自己の悩みや感じている等身大の問題を反映させているのも若い世代から大きな支持を集める理由となっているでしょう。

その象徴的な代表曲として挙げられるのが2019年の『On My Way』。アメリカの大人気シンガー/女優のサブリナ・カーペンターと人気ラテンシンガーのファルッコを迎え、「自分の道」と「別れ」をテーマにした歌詞をダンスホールのビートに乗せ、どこかディストピアで美しさを漂わせた映画ばりのスケールの世紀末的なMVで、アラン自身も大好きな人気バトルゲーム「PUBG MOBILE」の1周年記念のテーマソングとしても起用され大ヒットを記録しました。

また『Alone』は「I know I’m not alone (私は独りじゃない)」という繰り返されるフレーズが皆との大合唱でさらに大きな意味を持って響いてくる1曲で、アランのシンボルともいえるフードのパーカー姿とマスクで身を包んだ若者たちが(彼らアランのファンは「ウォーカーズ」と呼ばれています。)この世代が持つ疎外感に救いを与えてくれる名曲となりました。


アランのゲーム好きはとても有名で、先ほど紹介した「PUBG MOBILE」とのコラボのみならず、小島秀夫氏によるゲーム「デス・ストランディング」への楽曲提供、それでも足りずなんと2021年には自身のオリジナル・ゲーミング・プラットフォーム「ウォーカー・ゲーミング」を始動させています。個人的にとても印象的だったのは2018年の来日時にゲーム関連のインタビューで熱く語っている姿でした。

3. マスク姿に秘められた理由

アランといえばマスク姿。MVやSNS、ライブでもほぼ素顔を出すことなく全身黒ずくめのパーカーとマスクで写っているのが印象的ですが、これには彼なりの意味がちゃんとあるんです。まずは外見に左右されることなく自分の楽曲を集中して聴いて欲しい。そしてもう一つがパーカーとマスクさえあれば誰でも僕みたいに=アラン・ウォーカーになれるという意味があるそうです。彼にとってマスクはみんなが一緒になれる団結のシンボルとして機能しているのです。


4. ファンへの想い、日本との強い繋がり

アラン・ウォーカーはここ日本でも根強い人気を誇っています。人気絶頂の2017年に渋谷SOUND MUSEUM VISIONに初来日。平日だったにも関わらずチケットは完売し、その姿をファンの前に表しました。その半年後2018年5月には「EDC Japan 2018」でフェスサイズでのパフォーマンスを披露し、さらに同年12月には初の東京・大阪でジャパン・ツアーを開催し、全て完売。追加公演まで行われるほど。1年の間に間をおかずに3度の来日を経て、その都度ソールドアウトを記録するほどの人気っぷりで、その浸透具合は映画界にまで及び『Faded』が2018年には櫻井翔、広瀬すず主演映画「ラプラスの魔女」の主題歌にまで起用されたのです。2019年には「SUMMER SONIC 2018」に出演し、これは僕も実際に現場で体感したのですが、自身のヒット曲のオンパレードにスタジアム規模のフロアが各曲のイントロが鳴るたびに大きな歓声に包まれていたのを今でも覚えています。その後コロナ禍でも積極的に配信やSNSを通じてファンとリンク。来日が難しい状況となった中でもTikTok主催の動画フェスなどに積極的に出演し、最も印象的だったのは彼の来日の際の空港でのファンとの触れ合いの様子をTikTokに投稿し、改めてとてもファンとの関係性を大切にしているんだなと感心しました。また世界的にもライブが行われない中で、2021年に「アヴィエーション・ムービー」と題した動画シリーズを公開。ファンのためにただライブ映像を流すのではなく、よりユニークで没入感のある体験をさせるために各エピソードをストーリー仕立てにして、そこにライブ映像を盛り込むスタイルで楽しませてくれました。コロナ渦においてもオンライン上でも活動を活発に続けてくれるのはファンにとってもとても嬉しいですよね。


そして何よりも我々に大きな希望を与えてくれたのが去年の「SUPERSONIC 2021」での来日でしょう。まさに来日を熱望していたファンの期待に応える形で夢を叶えてくれ、さらに同フェスに出演したゼッド、スティーブ・アオキと世界でもここだけでしか見られないB2Bセットまで披露してくれました。


5. 最新アルバム『ワールド・オブ・ウォーカー』

夢の再来日を経てリリースされたのが3年ぶりの最新アルバムです。ファン想いのアラン、まずジャケット写真は世界中から何千人ものファンである「ウォーカーズ」から送られてきたセルフィー写真をコラージュして作られたもので、ここでも実際に会えなくても皆との心のリンクを意識して改めて熱いものを感じました。

内容面もこの数年における彼のキャリアの集大成とも言えるラインナップ。前述の『On My Way』をはじめ、大ヒットした『Alone』の続編として新世代ポップシンガーのエイバ・マックスが参加し、新たにダンスホール・ビートに乗せた『Alone Pt.II』。TikTokをきっかけに世界中で大ブレイクしたセイレム・イリースを迎えた『Fake A Smile』など、さらに強度を増した歌ものも充実しています。さらに彼のルーツを辿るという意味でも重要なのがアルバム1曲目を飾る『Time (Alan Walker Remix)』。彼が多大な影響を受けてきた映画音楽の巨匠であるハンス・ジマーが映画『インセプション』のために手掛けた楽曲のリミックスで、彼の源流と共にアルバムの世界観を表すのにふさわしいスタートになっています。またアルバム終盤でもハンス・ジマーによる映画『ザ・ロック』の楽曲『Hummell Gets The Rockets』のリミックスが収録されていて、同氏の手掛ける音楽にどれだけ大きなインスピレーションを得てきたのかを物語っています。そして発売されたばかりの日本盤にはボーナストラックとして、昨年グラミー賞を獲得した新星イマンベクと共に1995年のスキャットマン・ジョンの大ヒット曲をサンプリングした『Sweet Dreams』も収録されており、ダンスアクトとしてのアランも存分に楽しめる内容になっています。

CDは日本だけの限定生産というの貴重ですが、さらに完全生産限定盤にはアラン・ウォーカーのMVにも度々出てくる「AVI-8ドローン」の解体図をデザインしたスペシャル・マスクケースもここだけに封入されていて、マスクと親和性の高いアランファンにも嬉しいサプライズになっています。

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彼が楽曲や映像を通じて広げてきた壮大な世界の集大成とも言えるアルバムをぜひ体感してください。

『ワールド・オブ・ウォーカー』日本盤購入リンク
https://lnk.to/AlanWalker_WorldofWalker

またメディアのリアルサウンドでライターのノイ村さんが書かれている記事がとても良かったのでぜひ合わせてチェックしてください。
「アラン・ウォーカーが迎えた成熟の季節 新アルバムで実感するクリエイティビティの進化」