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【音食同源】  第24回:餃子の王将下北沢店のきゅうりとyonige「アボカド」

みんな大好き、餃子の王将。その下北沢店ともなれば、バンドマンやら役者さんやら会社員やらで常にごったがえしています。

かくいう私も近所に住んでいることもあり、ときどき行くのですが、たいていは深夜帯に行きます。1人で行くこともあれば、友人・仕事仲間と行くこともあるのですが、深夜に行くとなると大抵お酒を飲むことになります。中華料理のお店ですから、深夜にも関わらず餃子やらレバニラ炒めやら麻婆豆腐やら油淋鶏やらを食しながらお酒を飲むことになるわけですが、最近はたいしたつまみがなくてもお酒を飲めるようになってきた上に、めっきり消化機能が低下したような気がしているため、そうした主役的なメニューではなく、脇役的なメニューを頼むようになってきました。

餃子の王将といえば、各店ごとに異なるメニューを置いていることで知られています。下北沢店だけなのかどうなのかは知りませんが、僕が気に入っているメニューが「きゅうり」です。せっかく餃子の王将に来たのに、「きゅうり~ちょっとピリ辛なお味噌を添えて~」たぶん、こんな名前のメニューではありませんが、確かにここのきゅうりが美味しいので、ついつい餃子のことなど目もくれず、夢中で食べてしまうのです。

餃子の王将に来ておきながら、餃子を食べない。餃子の王将の本社がある京都で例えるならば、「京都大作戦」に来ていながら、10-FEETのライヴを観ない、ということです。「RIVER」(麻婆豆腐)も聴かなければ、「VIBES BY VIBES」(かに玉)にも心動かされない、「その向こうへ」(八宝菜)も行かない。そういうことなのかもしれません。

そう考えたときに、私はハタと気がつきました。2017年の「京都大作戦」を訪れた際、私が観たもの。メインステージから離れ、西日がキツい灼熱のステージ「牛若ノ舞台」で歌うガールズ・バンド、yonige。期待のニューカマーとして登場した彼女たちが歌っていたのは「アボカド」。

そうだ、そういうことなのか。アボカドをただ単に緑色というだけできゅうりと置き換えてみる。すると、餃子の王将を訪れながら餃子を食べずにきゅうりを食べている自分と、昨年「京都大作戦」で10-FEETを観ずにyonigeを観ていた自分とシンクロするではありませんか。そのyonigeが歌う「アボカド」は、ダンサブルなサウンドに合わて、アボカドをキーワードに、まるで餃子の王将のきゅうりに添えられたお味噌のようにピリッと辛い失恋の痛みを歌う曲です。今度下北沢の餃子の王将できゅうりを食べるときには、yonige「アボカド」を聴きながら食べてみよう。すると、忘れかけていた失恋の痛みを思い出してより一層味わい深くなるかもしれません。いや、店内で泣いてしまう可能性だってあるかもしれない。それでもいい。きゅうりを食べながらyonige。言葉だけ聴くと相当貧乏な人みたいになってしまうけど、それでもかまいません。なぜならきゅうりは美味しいしyonigeの音楽はカッコイイのだから。ただし、ここまで書いて1つ訂正しておかなければならないことがあります。それは、「京都大作戦」でyonigeのライヴを観たのは事実なものの、実際にはその後メインステージで10-FEETを観ていることです。つまり、私はメインの餃子も食べていたということになるのです。餃子も食べる、きゅうりも食べる。それでこそ、バランスの良い食生活が送れるというもの。音楽も、そうじゃないかな。10-FEETも聴けばいい、yonigeも聴けばいい。ピコ太郎だって構わない。そういうことなんです。


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