ネット社会になってから、全国各地にあるその土地にしかない食べ物が日の目を見る機会が増えました。僕の生まれ故郷、新潟のソウルフードとして知られる「イタリアン」もその1つでしょう。（※画像はみかづきHPより）

生まれた家が新潟市寄居町という新潟市内の真ん中にあったので、家の近所には徒歩1分のところに「みかづき」がありました。みかづきは、新潟の各地に店舗展開をしている「イタリアン」を売りとしたファーストフード店です。そんなみかづきに、最近行ってきました。そうです、今年まだ行っていなかった待望の新潟里帰りをしたのです。

せっかくの新潟でしたが、日程を決めたとたん、なぜか同じ日に取材が立て続けに決まり、結局1泊するだけになってしまいました。しかも原稿の締め切りもあり、新幹線の中でも文字起こしをするという、周囲の迷惑を顧みない行動もしてしまいました。こう書くとまるで仕事忙しい自慢をしているように思われてしまいそうですが、ただ単に一気に仕事を請け負いすぎて回っていないだけです。自業自得。ならば、せめて新幹線の移動中に仕事を少しでも終わらせて、新潟に付いたらすぐに遊ぼう。そう思いつつ新潟駅に到着しました。

15時駅前のホテルにチェックインして、私はすぐに文字お越しの続きを始めました。そして、気が付くと時刻は20時。全く新潟らしいことは何もしていません。とろもうにもイクラすら食べてない。その日は結局、駅に隣接しているスーパーでお寿司とお刺身を買って部屋で楽しみました。それでも、もちろん魚は段違いに美味しいですし、価格も安くて（半額シールの時間に行ったから）満足して床に就きました。

そして翌日。当初、12時の新幹線で帰る予定でしたが、その時間まで駅南口の広場でパソコンを広げ外で仕事をしていました。最高の天気、ここち良い空気。新潟に来てよかった。そんなことを思いつつ仕事をしていると、新幹線の時刻が迫り、片付けて改札まで行く私。しかし、改札に切符を入れようとしてためらいました。「帰って仕事をするなら、新潟で仕事しても同じではないか」。その通りです。よく気が付いた。そこで私は、駅を背に歩き出しました。向かうは「万代シティ」新潟市の象徴、萬代橋のたもとにある商業施設エリアです。そこにあるのが「みかづき万代店」です。そして、目の前に広場には丸テーブルがあり、そこには「フリーWi-Fi」の文字。なんとテーブルをただで使えてしかもネットにつないで仕事もできる。フリーライターにとっては天国のような環境ではないですか。

早速、みかづきで「ホワイトイタリアン」を買って食べながら仕事を始めました。普通のイタリアンは、ミートソース的なものがかかっているのですが、ホワイトイタリアンは文字通りホワイトソース（ベシャメルソース）がかかった、ちょっと通が好むタイプのイタリアンです。ゴレンジャーでいえば青レンジャー、スラムダンクでいえば流川、そしてチャゲアスでいえばチャゲでしょうか。いや、ちょっと違うかもしれませんが、まあつまりはNO2的な、裏主役的なメニューといえます。太い麺とマッチしているのかどうかいまだによくわからない、不思議な味なのですが、なんとなく「ホワイトイタリアンを食べてる俺カッケー」的な、ちょっと大人びてみたい思春期の味がするような気がします。

そんなホワイトイタリアンを食べながら、気分を出すためにイヤフォンで聴いたのが、新潟在住3人組アイドル・ユニットNegiccoの「サンシャイン日本海」です。田島貴男の作詞作曲によるこの曲は、新潟生まれの人間ならわかる、あの日本海の独特のさみしさをメロディの切なさに昇華した名曲です。そして、夏休みに彼氏と日本海に遊びに行くことを楽しみにしている女の子の気持ちを巧みに描写した甘酸っぱい歌詞。それはまるで、いつものノーマルなイタリアンではなく、ちょっと背伸びして大人っぽいホワイトイタリアンをチョイスしたくなる気持ちと似ています。さらにホワイトイタリアンの「わかったようでわからない」味と、思春期のもやっとした気持ち、ほろ苦さとが思い出されて、思わずホロッとしてしまいそうになりました。

私は、その広場でフリーWi-Fiなことを良いことに、結局4時間ほど仕事をしてしまいました。当初予定していた関谷浜の海岸にも日本海水族館にも行けず、実家があった場所や、懐かしいレストランでの食事もできませんでしたし、少し電車で移動しなければならない新発田市へのお墓参りもいけませんでした。ただ、天気の良い平日、ホワイトイタリアンを食べて、Negiccoの「サンシャイン日本海」を聴き、仕事が進む。こんなに幸せなことはありません。仕事で煮詰まったときは締め切りが近づいたときには、また新潟に来て、万代シティでフリーWi-Fiを使おう。そして、Negiccoを聴き、イタリアンを食べよう。さらに今後来たときにはみかづきの名物「チーフナッツ」を食べることにしよう、そう思いました。

新潟にもALTAがあります。あの番組はいまではここでやってます（嘘です）