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【音食同源】第37回:どさんこ大将のチャーハンとエレファントカシマシ「達者であれよ」

家の近所にあってしょっちゅう通っていたラーメン屋さん「どさん子大将 新代田店」がついに閉店してしまいました。

お目当ての店に行っても店内の混雑具合を見て、入るのを止めてコンビニでごはんを買うぐらい1人で外食するのが超苦手な僕にとっては、気楽に入ることができてホッとできる唯一の店と言って良かったので、ショックが大きく落ち込んでいます。

閉店の張り紙には「都合により」としか理由が書いてありませんのでわかりません。ですが、1、2ヶ月ほど前に訪れた際にご主人がしきりに腰が痛いようなことを常連さんと話していたのを耳にしたこと、その後ご主人がお休みしているようで女将さんが1人で店に立ち、てんてこまいな様子も見ていたため、もしかしたらご主人の体調が思わしくなかったことが理由なのかもしれません。

ここで食べるチャーハンはこの「音食同源」のトップに使わせて頂いているくらい好きでした。シンプルな具材と味付けでわかりやすい美味しさのチャーハンは、ちまたのインスタ映えを狙った料理とは一線を画す、純粋に味のみで勝負しているものでした。音楽に無理やりつなげると、長年休まずに活動を続け、無骨ながら常に良い音楽を届け続けているエレファントカシマシにも似ています。

ファンクラブ「PAO」にも入っていたくらいファンなので間違ってはいないと確信していますが、エレカシの曲は、とてもわかりやすく、歌っていることが明確・明瞭な歌が多いと思っています。とても簡単な言葉を使いながら、誰にもかけない歌詞と曲を書いているからこそ、その歌は心に届き、長年不変の輝きを放ち続けているはずです。特に宮本浩次の歌う言葉はストレートに心を揺さぶります。音楽取材をしていると、「歌詞の受け止め方は聴く人それぞれでいい」という人が結構います。例えばシンプルな「愛している」という歌詞があり、それを額面通りの意味と受け取るか、文脈的に違う意味として捉えるかは人それぞれで良いと思います。ただ、もともと何を伝えたいのかがわからないようなごちゃごちゃした小難しい歌詞を書いておきながら「歌詞の受け止め方は聴く人それぞれ」というのは、責任放棄というか、つまりは良い歌詞を書く才能と努力がないだけでは、と思ってしまいます。

……「どさんこ大将」のチャーハンが食べられなくなったショックで八つ当たりしてしまいました。ともかく、シンプルな美味しさで変わらず40年間営業を続けた「どさんこ大将」さんと、30年間変わらず活動を続けるエレカシは似ている。そう思っています。

「どさんこ大将」のシャッターには、閉店する旨を活字で記した挨拶文の一番下に、マジックの手書きでこのように記されていました。

「オリンピックまで続けられなくてごめんなさい」

なんだかとてもさみしい気持ちになると同時に、ご主人、女将さんがいつまでも元気で暮らしてほしい、そう思いました。そんな切なる願いを込めて、今夜はエレファントカシマシの「達者であれよ」(2004年のアルバム『風』収録)を聴こうと思います。「どさんこ大将」のご主人、女将さん、40年間おつかれさまでした。

                『風』

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