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【音食同源】  第22回:鬼担々麺とAC/DC「Heatseeker」

昨年、雑誌の取材で渋谷ヒカリエにある「香家」で「青鬼担々麺」を食べました。テレビのグルメ番組で激辛料理が出てくるとついつい見入ってしまう僕ですが、けっこう辛いものが苦手なほうです。

しかし、この「青鬼担々麺」というやつ、「花椒」が効いており、口に入れた瞬間から、辛いのではなくとにかく痺れる。唇のピリピリ感がゴイスーです。食べれば食べるほど、ほとんど口の周辺がマヒしていくので、正直美味しいのがどうなのか?自分がいま何をしているのかすら記憶が薄れてしまうほどのインパクトを持っていました。

そして、こやつの特徴として挙げられるのが、赤唐辛子が1本、麺の上にぶっ刺さっていることです。このツノ、どっかで見たことある。そうだ、AC/DCだ。AC/DCのギタリスト・みんな大好きアンガス・ヤングではないですか。久しぶりだね、アンガス。思わずそのツノを口にパクリと入れてしまったのですが、それまでのピリピリ感とは別の、「普通に辛い」辛さが口中に広がっていきました。当たり前といえば当たり前ですが、唇から脳みそまで痺れてマヒしていたのかもしれません。

そんな僕の頭の中にはAC/DCの1988年のアルバム『Blow Up Your Video』が浮かんでいました。思わずブラウン管を突き破りたくなるくらいの衝撃的な辛さ。アルバムを買ったもののほとんど聴いていなかった20代の自分に教えてやりたい。AC/DCの音楽は花椒と赤唐辛子を口にしてから聴けばトリップできるはずなんだと。家に帰って1曲目「Heatseeker」を聴きつつ、そんなことを思いました。

そして後日、じつは家から徒歩5分ほどの場所にある香家に再戦をすべく(ところでリベンジって言葉あんまり使わない方が良くないすか?)足を運んでみたのですが、いざプライベートでの食事となるとつい守りに入ってしまい、普通に「胡麻の香りがタップリ、味わい豊かな姫・担々麺」を食べてしまいました。おっさんなのに姫…。でもこっちにも赤唐辛子は乗っていました。きっと誰もがアンガス・ヤングになれる。香家さんはそんなメッセージを担々麺を通して発信しているに違いありません。僕はそのメッセージを勝手に受け取りました。ということで、この文章をご迷惑でなければ昨年天国へと旅立ったマルコム・ヤングに捧げて脱稿としたいと思います。


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