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【音食同源】  第13回:天丼とTHE BLUE HEARTS「リンダリンダ」


自転車に乗って、隣町まで買い物に行ったついでにたまたま通りかかった蕎麦屋で昼食をとりました。

この季節に蕎麦屋に入って蕎麦を食べてしまうと、なんだか年越し感が出てしまいます。最近はめっぽう寒いこともあり、蕎麦を食べるとなるときっと暖かい方を注文してしまうでしょう。師走・年越し・蕎麦。となると、すぐに頭に浮かんでしまうのはやっぱり「日清のどん兵衛」のCMにおける、山城新伍と川谷拓三の名コンビです。色んな売れっ子タレントさんはどん兵衛のCMをやってはいるものの、いまだに僕にとってはこの2人のイメージです。12月に入って暖かい蕎麦を食べてしまうと新伍・拓ボンの名コンビを連想させてすっかり年越し気分でのんびりしてしまいがち。そこで、今日のところは蕎麦をやめて天丼にしてみました。

その天丼。最近、流行語大賞を受賞した時代背景もあり、“映える”食べ物画像を見続けているせいなのか、どうにもこうにも見た目の“映えなさ”が気になってしまい、なんとなく美味しそうに見えません。ところが、実際に食べてみると、これがかなり美味い。海老が2本とさつまいも、ナスの天ぷらというシンプルさながら、1つ1つの天ぷらが新鮮で味もしっかりしており衣もサクっとしており歯ごたえも心地よいのです。見た目は正直地味ですが、そこに惑わされてはいけなかった。


そうか、このことなのか、「写真には写らない美しさ」。THE BLUE HEARTSは「リンダ リンダ」で「写真には写らない美しさ」と歌いました。バブル時代を目前にした日本で、目に映るものだけが価値のすべてじゃないことを教えてくれた、ブルーハーツの音楽の中でもっとも有名な一節と言って良いでしょう。

目に見えないもの、写真には写らない想いを音に乗せて伝えるのが音楽。それをいかにして文章で伝えるかがライターの仕事です。音楽も、食べ物もその本質(聴きどころや美味しさ)がどこにあるのか?どこに魅力があるのかを見た目の“映え”に惑わされずに掘り下げていかなければなりません。そんな基本的なことを、「映えないけれでもじつは美味しい」天丼を食べながら思い出しました。そして、みそ汁も美味しかったことを覚えておこうかと思います。

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