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「有期と無期の混在」という閉塞的な状況(研究者の雇用形態)

おそらくですが、「有期と無期の混在」という状況が一番流動性が低く不健全なのだと思います。
有期と無期が混在する状況では多くの人が現ポストにしがみつき流動しない、というのは容易に想像できます。
何のためにこんな状況を作ってしまったのだろうか、というのは大きな疑問です。

その昔、有期雇用を広く導入すれば流動性が増してアカデミアが活性化すると誰かが(無根拠に)言い出したのかもしれません。
しかし、「有期雇用=流動性促進」というレトリックがあまりに流布されていて誤解されていることが多いですが、労働者側が主体的に流動でき、流動性を高める雇用形態は有期よりむしろ無期の方でしょう。
有期雇用は原則として途中解約できませんが、無期雇用は2週間前に申し出れば退職可能であり、(ルール上)異動がしやすい仕組みになっています。

本当は無期雇用を前提とした上で、適切な評価によって機関や職種を異動する仕組みを作るべきだったのかもしれませんが、その逆が行われてしまい、逆効果な方策が一度行われてしまったら修正が難しい、ということだと思います。

ここまで有期雇用を拡大してしまったら、無期雇用を多少増やしたぐらいでは業界に有期と無期が混在する状況は変わりませんね。有期と無期が混在する状況では、多くの人が現ポストにしがみつき流動しないというのは容易に想像できます。

また、同じ「有期と無期の混在」を作るにしても、もともと社会全体として有期雇用がスタンダードだった文化圏に無期ポストを作るのと、もともと無期雇用(終身雇用)がスタンダードだった文化圏に有期ポストを増やすのでは、起こる影響が全然違いますね。背景が異なるのだから当たり前です。

流動性を高めて活性化を図るには、有期雇用を廃止して全員を無期雇用化し、適切な評価によって機関や職種を異動する仕組みを作る、というのを「日本全体で」「一度に」行う必要があるので、個別の機関の運営努力に任せていても実現不可能ですね。
それが出来るのは政府だけです。

個別の機関は自らの機関の経営と実績を上げるために行動するものであり、国全体、学術全体の振興を考えて動くことはできません。
国全体、学術全体の振興を考えることができる実行力を持った主体は政府だけだと思います。

一方で、現在の低迷は任期制の導入のせいではなく、あくまで基盤研究費が削減されて任期無しポストが減ってしまったことが原因だとして、現状の任期制を擁護する意見もあります。

しかし、任期制導入当時、将来的に基盤研究費が削減されて任期無しポストが減っていくのは可能性として十分予想できたのではないでしょうか。
だとしたらその可能性がある中で任期制を導入したのは失敗だったのではないでしょうか。
また、当時の大学関係者は、任期制を導入した以上、任期無しポスト減につながる基盤研究費の削減はなんとしても阻止すべきだったのではないでしょうか。

任期制導入に賛成しながらも基盤研究費削減を阻止できなかった当時の人たちの責任は極めて大きいと思います。

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