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あきらめる勇気

1年前、寒さが緩み、本格的な春が訪れる2月下旬に、わたしの実家の近くにある居酒屋で定番の焼き鳥やあれこれを注文して頬張って食べる私。

そんな中で、「僕、今年、公務員を受ける!」と夫が宣言した。


いきなりの話で吹っ飛んでしまったが、わかりやすく説明しよう。
夫の両親は公務員だ。
公務員である両親の背中を見て育った夫は、一度でいいから公務員になってみたいと夢を抱いていた。

しかし、夫は、消極的な性格だったため、公務員を受けずにいた。夫の両親とわたしが「お試しに受けるだけだよ。雰囲気が分かればいいんだよ。」と夫に伝えた。
夫はその言葉に納得したらしく、挑戦することにした。
数日後、分厚くて重くて、頭がおかしくなりそうな参考本を沢山購入して机に向かって勉強し始めた。

そして、お試しに受けた結果、不合格。
結果は残念だが、「最後まで勉強し続けて、試験を受ける」ことができた。
公務員試験の雰囲気、苦手な科目を把握できた夫は、来年も受けることにした。
今年は、去年と違って本気度が違う夫の姿があった。
勉強するのはキツいから、今年で終わりたい!という気持ちで毎日毎日勉強していた。

その努力がついに現れた。

なんと、1次、2次、3次まで進んだのだ!

この調子で念願の公務員になれる…!?と期待を膨らませるが、最終選考は落ちてしまった。夫の受験番号がない…ありえない、ありえない!と現実を受け止められず、怒りがこみ上がりそうになるわたしがいた。会社を勤めながら、空き時間は勉強、遊びやお出かけも我慢してきた夫の努力が一体何だったんだ!何がダメだったの?って悔しくてたまらなかった。

夫の両親は「お試しだからお試し。来年も〜」と言うが、夫の本気度に気付かないのか!?合格する気持ちでやってきたんだよ、と言いたいが、結果は結果なので、グッと堪えた。

夫は来年を最後にして受けようかな、と言う。
……が、「あやうく一生懸命生きるところだった」
ハ・ワンの人生エッセイの本がきっかけで、

「来年受けると言ったけど、やめようかな」と


夫が私に相談してきた。
夫は「諦めることの大切さ」を実感したらしい。

諦めることって悪いイメージがあるけど、実は良いことが沢山あるんだよね。

その理由がこの記事に書いてある。

『これだけ費やしてきたのだから必ずもうすぐ成果が表れるはずだ』

内心では成功の可能性が低いことを悟りながらも、「もしかしたら」という期待を寄せ、「もう少し、もう少し」といつまでもしがみついてしまうのである。


公務員を目指していた友人についての話を見る限り、夫も似た境遇だろうなと思った。
成功の可能性が低いかもとわかっても、挑戦し続ければできるはず!ってなる気持ちが大変わかる。
今までの努力が報われることを信じたいけど、残念ながら報われないこともある。

なるほど、共感できるな、とうなずいた。

そういえば、わたしもこれまであきらめたことが一つあった。

「書道の先生になること」が夢だった。

そのために書道を専攻した大学を検討していた。
そんな時、卒業した小学校の先生から書き初めで子どもたちに教えてあげてほしい、と依頼があった。
子どもたちに教えることはなかったので、オロオロした。
書くことは好きだけど、書道の歴史は興味ない、一人一人にあった助言するのは難しいと判断し、その夢は潔くあきらめた。

絵が好きだし、美大生というものが憧れてたし、絵に関する仕事のほうが将来性があって仕事しやすいと考え、「デザイナーになること」の夢に変えた。

そう決心したら、その夢に向けて準備を始めた。
美大に進学するために予備校を通う、AO入試、わたしの性格上で4年間通える美大をリサーチした。就活も、デザイナーのお仕事ができる会社を探してインターンをして、見事に入社した。

「デザイナーになること」の夢が叶ったのだ。


あきらめることで、他の道が見えてくる。
あの時のわたしの判断は間違いなかった!とハッキリ言えるかどうかはわからないが、趣味になった書道は、デザイン業務に役立つ時がある。努力してきた書道は無駄になっていないので、その選択に満足してる。

そんなことを思い出したわたしは、夫に上記通り伝えた。
あとは、夫が自分で決めることだな、っていうかんじで、そっと見守ってる。夫が決めたことに対してこれはちょっと厳しいんじゃないか、と否定しちゃうわたしがいるので、気をつけないといけないな。

夫がいい方向に向かえますように、と心の中で祈ってる。


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