人を惹きつける場づくり名人とかすがう、「スナックかすがい」 第二夜・体験記

Text by 文園ぴりか | Pilika Fumizono 
Photo by TATSUYA


「スナックかすがい」5つの妙味

あなたはもう体験しただろうか?創業 91年目を迎える老舗菓子メーカー・春日井製菓が昨年11 月にひょっこり開店させた、「スナックかすがい」という名の縁むすびスポットを。

これは、春日井製菓が「子はかすがい」で知られる「鎹(かすがい)=別方向に伸びる木材をガッチリつなぐ強靭な金具」となって異なる分野のゲストをつなぎ、その融合がもたらす成果をみんなで味わい交流する、スナックの体をなしたトークイベント。

春日井製菓のマーケティング部が席を置く話題のコミュニティ型ワークスペース「WeWork」新橋の1階で、ほぼ月いちペースで開催されていて、ここでしか味わえない5つの妙味を体験できるのが特長だ。

①おもてなし付き、破格の飲み食い放題システム。

予約時に参加費 1,000 円を支払えば、生ビールを含むドリンクと豆のおつまみが、スナックの店員と化した春日井製菓社員たちによるハートフルなもてなしと共に、好きなだけ飲み食いできる。(2月はスペシャル企画により 2,000 円だが、それでもかなりお得)。

②イケてる仕事人たちの「成果のヒケツ」が聴ける。

広々とした会場の前方では、月替わりのスペシャルゲストと店のマスター(こちらも春日井製菓の社員)の対談形式で、仕事と人生がエンパワーされる発見と共感に満ちたトークライブが展開。“スナック”ゆえトークへのジャンプインや質問も歓迎され、リラックスした気分で見聞と人脈を広げることができる。

③お客どうしも知り合える。

トークライブには客どうしの交流を促す「かすがいタイム」も設けられていて、出逢いを自然に楽しむことができる。ちなみに私は関東以外から訪れた人や初対面の人々と知り合うことができ、いろんなご縁を授かった。また、トークセッション後の第2部では、客どうしが余韻を楽しみながら、さらに深くかすがえる。飲みものの提供は 21時までだが、21時半までは会場にいられるので、場所を変えて仕切り直す手間やお金がかからず、ありがたい。

④話題の「WeWork」内を見学できる。

ふだんは契約メンバーとその仕事相手しか入れない領域を、WeWorkスタッフのガイド付きで見学できるツアータイムがプログラムされており、今をときめくWeWorkの各部を見て回り、時代の息吹を体感できる。

⑤手みやげと「かすがい」がもらえる。

帰り際には参加者全員に、もれなく春日井製菓商品の詰合せが手渡される。ここには、「この詰め合わせを 味わいつつ、同封された商品説明リストのQRコードからアンケートに答えてね」という、リクエストが込められているのだが、実はこれこそが、参加者と春日井製菓の未来をとりもつ「かすがい」なのだ。というのも、結果が何らかの形で春日井製菓の会社や商品づくりに反映されるこのアンケートは、「スナックかすがい」の参加者が間接的にこの会社の運営に参画できる窓口的意味合いを持つ、企業と顧客が協働し て会社や社会をクリエイトしてゆくための“縁むすびツール”だから。
「スナックかすがい」に参加し、ダイレクトにこの会社とふれあった顧客だけに手渡される、互いの未来に影響する「かすがい」。ちょっとワクワクするではないか。

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「人を惹きつける場づくり」の始め方

2019 年の幕開けを飾る「スナックかすがい」のゲストスピーカーは、球場を超えたまちづくり規模の構想として野球ファン以外からも注目される、「北海道ボールパーク(2023 年開業予定)」の事業ディレクター小川太郎さん(株式会社北海道日本ハムファイターズ)と、個性の異なる人気中華料理店 5 店舗をはじめ、様々な飲食事業の企画・経営に編集者目線で携わる、小林淳一さん(株式会社コバヤシライス代表取締役)。

おふたりがつくっている場は、規模や形態こそ違えど想いや秘訣には共通点が多く、その場を利用するお客さんだけでなく、場のつくり手や働き手たちの目も輝きそうなキーワードが満載だった。会場を見渡すと、うなずきながら耳を傾ける人々に混じって、持参したノートにペンを走らせる人々の姿も。ゲストたちの体験やライブ中のやりとりから導き出された場づくりの秘訣は、場づくりに限らず人生そのも のにも役立ちそうなことばかり。ポイントを要約してお伝えするので、ぜひ参考にしてほしい。

①ヴィジョンを、言葉・文字・ヴィジュアルなどに落とし込む。 (By 小川さん)

「想い・目的・やりたいこと・喜ばせたい人...などをより明確に思い描き、それらを最初にきちんと定義し、可視化することが大切」と小川さん。それは形のないものに形を与え、一人の夢をみんなの夢にする大切な第一歩。今や多くの人の関心を集めている2023年開業予定の「北海道ボールパーク構想」も、最初は限られた人の心に芽生えた形のない夢だったわけで、「ヴィジョンの可視化」によって人々の賛同や協力を得て、今の形に育ってきたのだ。場づくりに限らず、頭の中にあるものを整理・確認するためにも、仲間と明確な情報を共有するためにも、いろんな場面で実践したい秘訣である。

②関わるみんなと一緒につくる。 (By 小川さん)

北海道ボールパークの場づくりは、利用客、球団スタッフ、働き手、スポンサー、メディア関係者、自治体、地域社会...など、関わりが想定される多種多様な人々をリストアップし、各ジャンルの人々と多様な手段でコミュニケーションを取り、議論を重ねながら進めているのだそう。手間はかかるが、関わったぶん、そこはその人にとって「大事な居場所」になり得るのだろう。

③いろんなシーンをイメージする。 (By 小川さん) 

時間帯、四季、年月、シングル目線、カップル目線、子連れ目線、お年寄り目線、車椅子目線、外国人目線、 におい、音、色、気分、行事...異なる様々な切り口や視点からその場をとらえイメージをふくらませてみると、具体性とリアリティが増してくる、というお話。ゲームみたいでおもしろそうだ。

④異なる文化を掛け合わせる。 (By 小林さん)

「北京でもうほとんど絶滅状態で2~3軒しかなくなってしまった大衆酒場の業態と食文化を、日本の大衆酒場の飲ませ方と融合させた店を東京につくったんです」と小林さん。“日常”に“異文化”を掛け合わせると、安らぎとトキメキを兼ね備えた新しい場が誕生するのだ。

⑤「ちょっとイラッとすること」「ちょっと幸せを感じること」に目を向ける。 (By 小林さん)

日常の中で湧き上がるふとした感情の起伏をたどってゆくと、大きな気づきにたどりつくことがある。自分の内から湧いてくる感情の根元には、普遍のニーズが埋まっているのだ。私の横にいた人は小林さんのこの 言葉を聞いて、「イラッとすることって、要は改善ポイントだからね」と一言。ごもっとも!イラッと来た ら、アラッ?と思おう。

⑥行ってみる。見てみる。会ってみる。疑問は直接ぶつけてみる。 (By 小川さん) 

「それでどう反応が返ってくるか。自分がどう感じるのか。それが大事だと思っています」。「自分をサビさせないアップデート方法は?」というマスターの質問にそう答え、「どんな人も、会いたい気持ちをストレートに伝えればほとんどが会ってくれますよ」と軽やかに言う小川さんに、小林さんも賛同。 こんな人たちが作っている場なら、おもしろいに決まってるよね。

⑦じぶん10%。 (By 小林さん)

「モチベーションは 100%ですけどね」と補足しながら小林さんがそう言った意味は、自分ひとりですべてをまかなおうとするのではなく、全体の10%くらいを受け持つスタンスで多様な仲間と組み合わさると、スムーズな協働が叶いやすい、ということだろう。うん、めっちゃ名言。

ツボな質問、味な回答

トークライブの最後に設定されたゲストスピーカーとオーディエンスのQ&Aタイムでは、豆彦マスターの軽妙な即興トークもあいまって場の一体感が増し、明確な着地点が見つからなかった質問に対しても、最後にはオセロがひっくり返るように明るい回答がストンと与えられるミラクルな結末に。あの夜の対話を“可視化”してみますので、声の違いをイメージしつつ、ライブな空気をお楽しみあれ。

Q:小川さんが人が集まるコミュニティをつくる上で、大事にされている根本を教えてください。

小川さん:社内のチームでよく話しているのは、例えば集客につながる立地を考える上でも、地域、道内、道外と、いろんなところから見た視点を企画の中で検討しきれているかどうか自問自答しないとね、ということです。幸いチームの中にはいろんな地域の出身者がいて様々な視点があるのでありがたいですが、『いろんな視点から見る』というのは、いつも意識しているポイントですね。

Q:場づくりに取り組む上で難しかったことと、それをどうクリアしたか教えてください。

小川さん:新しいことをやろうとすると、賛成する人と反対する人が必ず出てきます。反対する人たちは、 こちらがやると約束したことをやらないと納得しないと思いますし、やっても納得しないのかもしれない。 私の場合はまだ道半ばですが、どんなことにも必ず反対する人がいる、というのは難しい問題ですね。
小林さん:私は、継続することがいちばん難しいと思うんですね。解決策はあんまりないけど、細々したことをいろいろ手を変え品を変えてやってみて、あがくことかな(笑)。
小川さん:続けることって、ほんと難しいですよね。最後はガッツしかないよな、って私も思います。

Q:新しい情報や体験なんて別にどうでもいいや、という方にアプローチする方法があれば教えてください。

小林さん:私は以前、「結局、万人に受けるものはつくりたくないんでしょ」とマスターに宣告されたことがあります(笑)。すみません、答えになっていないんですけど… “市場 100%” を取りに行くんではなくて、自分が狙った市場がどのくらいの規模なのかを、ある程度把握して動くといいのかな…。
小林さん:そういえば小川さんの場合は、スポーツが好きな人に振り向いてもらうための施設だったところに、温泉や飲食店をくっつけることで、スポーツが嫌いだった人に振り向いてもらうような努力をされていると思うんですね。だからそういう手法で振り向いてもらう手法もアリですよね。
小川さん:そうですね、『なんで興味がないのか』を知ることもけっこう重要なのかな、と思います。野球 大好き!という人だけが満足していればいいってわけでもないよね、と。自分と同じ志向の人たちだけだったら思いつかなかったものが、自分と違う志向の人々との出会いによって見えてくるかもしれないですよね。

「スナックかすがい」のセイカとは?

盛りだくさんの内容でお届けした「スナックかすがい」第二夜レポート。はてさて、あなたの心には、どんなセイカが残っただろうか?

今、私の心の青空には、このレポートにまだ書いていない3つのフレーズが、白い文字で一行ずつ、ぽわんぽわんと浮かんでいる。

その3行は、話の流れに乗ってちょっと唐突とも思える勢いと熱さでマスターの口から客席に投げかけられた、「あなたは何のために今の仕事をしていますか?」「仕事を通して何がしたいんですか?」「何がよろこびで生きてますか?」という問いかけ。

客どうしの「かすがいタイム」で語り合うように促されたこれらの問いが客席でどの程度語られたかはわからないが、あれ以来、私の心の青空には、その3つの問いが晴れた余韻をまといながら、白い雲みたいに気持ち良さそうに浮かんでいるのだ。

マスターは客席に投げかける前、小林さんと小川さんにもこの問いを熱く投げかけていて、私にはそれが、まるでマスターが、ふたりの心の真ん中で燃えているそれぞれの“カルシュファー(宮崎駿映画「ハウルの動く 城」に出てくる火種の姿をした心臓の化身)”に必死でさわろうとしているかのように思え、「なぜあんなにもそこにこだわったのだろう?」という疑問とともに心に残っていた。

迫られた小林さんは彼の問いかけに答えようとして一生懸命自分の内側を探りながら、「今まで知らなかっ たことを知れるって、ひとつ世界が広がるんですよね。私は世界が広がるのが幸せだと自分では思うので、世界が広がることが幸せだと思ってる方々に少しずつそれを提示する仕事を、社会に出てからずっとやってるんですけどね」と誠実に答えていて、それも胸にしみたけれど、今これを書きながら録音した小林さんの声をたどっていくと、「北京の大衆酒場が絶滅しかかっていて、今はもう2~3 軒しか見つからないんですよ」と言った時の声の方が、よりすんなりと胸の奥まで響いてくる気がするのだ。

小川さんにも同じように切り込んだマスターは、中学生時代、親御さんの都合でハワイで暮らすことになった小川少年が、言葉も通じぬ心細さの中でサッカーによって友や居場所を得た話や、アメリカの球場で仰い だ青空が気持ちよかった記憶や、球場という空間で過ごす人々に豊かさを感じたというエピソードを引き出 してくれたが、やはりそれよりも私の心に迫ってきたのは、サッカー選手の道を選ばず球場づくりの仕事に就いている小川さんに疑問を投げかけたマスターに対して彼が短く言い放った、「サッカーが下手で選手になれなかったからですよ!」というちょっとイラっとした声の方だった。

その二つに共通しているように感じるのは、どちらもそこはかとない「いたみ」と「かなしみ」で、それらの言葉を言う彼らの声を再生すると、私の心は微かにふるえる。

マスターはトークの途中で急に思い余ったように、「穏やかに見える人の中にあるマグマみたいなものが、他の人の体温を上げるんだな、と思ってるんです」と言ったのだが、私はその「マグマ」を、彼らに感じた「いたみ」と「かなしみ」の奥に見た気がしたのだ。

小林さんが北京の街で最初に大衆酒場に出合った時、そして、それがどんどん失われていく現実を味わった 時、小川少年がハワイでサッカーにつながりをもらった時、そして、心で夢見ていたサッカー選手をあきらめた時、いったい彼らは、どんな気持ちで、何を思ったのだろう。そう思ったら、なんだか胸がいっぱいになった。そ んな痛みや哀しみを含むぜんぶの気持ちと歴史が燃料になり、その人のカルシュファーを燃やし続けているのだ。ぜんぶの気持ちと出来事がかすがわれてきた先にある今が、たった一人のその人を創っているのだ。

一期一会の夜の社交場「スナックかすがい」は、出会いや、場づくりの秘訣や、生ビールやスナックという 成果や製菓とともに、これまで知らなかった仕事人たちの中にある「聖火」に触れるという予期せぬ体験も、 与えてくれた。なんだかバカみたいだけれど、それらのセイカを両手に抱え、私は今、ちょっと泣きそうな気分なのだ。

この体験記を書いてくださった人

文園ぴりか | Pilika Fumizonoさん 
◆モノゴトの奥底で光る宝石を全身で感知し、その姿を言葉でコピーするように写し撮ってライトを当てたいと願っている、体感系コピーライター。◆あちこちに潜む色とりどりの宝石(輝きを感じ心ふるえるもの)を見つけ、誰かと一緒にそれを見て喜び合えると至福を感じ、その瞬間を味わいたくて仕事をし、毎日を生きている。pilikafumizono@gmail.com

この体験記の写真を撮ってくださった人

TATSUYAさん 
埼玉県出身。地球や動植物へのリスペクトをモットーに、ジャンル問わず輝きの瞬間を撮るべく活動中。20代の頃にファッションフォトグラファーを目指して以来十数年、各国のVOGUEやHarper's BAZAAR、marie claireなどで活躍するトップフォトグラファーの写真を何万枚と見てきた眼で、今日もファインダーを覗いている。

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第三夜は、2019年2月27日(水)。これまた稀有な顔合わせをご用意しました。どんなお話が飛び出すか、今から胸が高鳴ります。皆さん、ぜひぜひWeWork新橋で “かすがい” ましょう。

※上の画像をクリックすると、申し込みページに移ります。

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好奇心旺盛な大人たちが、生ビールとグリーン豆をお供に、気になる人の気になる話を聞いて楽しむ社交場、それが「スナックかすがい」です。

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