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スナックかすがい第23夜「ラジオの出番〜愛知と宮城を耳から元気にする男たち~」体験記

Text by 真下 智子|Satoko Mashimo
Photo by 野村 優 | Yu Nomura

粋な大人の社交場「スナックかすがい」 

 2018年11月、東京で開店した「スナックかすがい」。ちょっとイカした大人たちが、ビール片手にグリーン豆を頬張りながら語り合う。
営業日は不定期、営業時間はわずか2時間半というこの店のマスターは、お酒大好き、豆菓子大好き、そして何より人間が大好き!蝶ネクタイとメガネの奥から覗く優しい眼差しがトレードマークのダンディ。

そんなマスターと、夜ごと個性的なゲストが“今”を語り合う「スナックかすがい」。
時に100人以上来店することもあったその店の人気の秘密は、ゲストとマスターとの掛け合いによるトークの面白さはもちろんだけど、ビール飲み放題、豆菓子食べ放題で1,000円ポッキリ!で、しかもお土産も付いているというお値打ち感だ。グビグビ飲んで、ポリポリ食べて、賑やかな大人の社交場は毎回大盛況だった。

 2019年には、名古屋にもオープン。私はこの名古屋での開催の際に声をかけていただき、体験記を担当することになった。地元・東海エリアを元気にしているゲストの方との出会いが、楽しみで仕方なかった。時に仕事であることを忘れて、お客さんたちと一緒につい飲みすぎてしまったことも…。とにかく毎回、満員御礼!地元のテレビ局でも放映されるほど話題になっていた。さて次回はどんな出会いが…と思っていた矢先。

配信→オンライン&オフラインのハイブリットへ

 2020年春、世界が突然ガラガラと大きな音を立てて変わってしまった。スナックかすがいも閉店を余儀なくされるかと思われたが、熱狂的な常連のお客さんの後押しもあり、2020年4月からはオンライン配信で開催。試行錯誤の配信ライブは、その後3回開催され、思わぬハプニングにスタッフ陣が冷や汗をかきながらも、いつも画面向こうのお客さんから届けられる温かい言葉に助けられ、励まされ、お客さんとの絆を一層深めながら、開店することができた。
グラスを合わせることはもちろん、リアルに人と繋がることさえも完全に絶たれてしまった中で、オンラインでもマスターとゲスト、そして画面越しのお客さんとの一体感は何も変わらなかった。
 
今回、実に2年ぶりにお客さんを交えて、スナックかすがい第23夜が開催された。
場所は名古屋駅直結のJPタワーの36階、株式会社コラボスタイルのオフィスの一角にあるオープンワークスペース「コラボベースNAGOYA」。名古屋の市街地の夜景を一望する絶好のロケーションだ。

これまでは無観客でYouTube配信だったけれど、今回は実験的に16人の観客の席を作り、YouTubeでもライブ配信するという、オンラインとオフラインの初のハイブリットスタイル。
さらに今回は、名古屋と仙台のおよそ700km間をリモートで繋ぐという進化版。次回あたりは海外から「カンパイ!」の声が届くかもしれない。

そもそも「スナックかすがい」の「かすがい」とは、主催する春日井製菓の「かすがい」でもあるが、もう一つ重要な意味がある。
それは、「鎹」(かすがい)=二つの材木を繋ぎ合わせるコの字型の釘のことで、人と人、物と物、そして想いと想いを繋ぎ合わせる、という意味をかけている。これらを繋ぎ合わせることで、「成果」(製菓)を作っていく。それが春日井製菓の「スナックかすがい」だ。
そして今や、ゲストとお客さんが時空を超えて鎹う、壮大なスケールの唯一無二のスナックなのだ。

では、今回のゲストのご紹介を。
お一人目は、ご存じ、大阪出身のタレント北野誠さん。CBCラジオ「北野誠ズバリ」やラジオNIKKEI「北野誠のトコトン投資やりまっせ」でパーソナリティを務める。軽妙なテンポと鋭い視点でズバズバと斬り込んでいくトークは、リスナーの心にグイグイと迫ってくる魅力がある。私個人としては、学生時代に毎回欠かさず見ていた「探偵ナイトスクープ」の探偵員のイメージが強い。 

もう一人のゲストは仙台からリモート出演の、ロジャー大葉さん。仙台では知らない人がいない人気ラジオパーソナリティ。tbc東北放送のラジオ番組「サタディ・イン・ザ・パーク」や「ロジャー大葉の愛してJ-POP」など冠番組も複数本持つ。実はロジャーさん、元々バンドマンで、伝説のテレビ番組「いかすバンド天国(通称イカ天)」にも出場していた。7年間のバンド活動ののち、ラジオの世界へ。オールナイトニッポンを愛聴していたそう。
ロジャーさんとドンピシャ同世代の私にとっても、オールナイトニッポンはラジオの面白さを教えてくれた番組だった。高校受験の時、自室で音が漏れないよう、こっそりと夜な夜な聴いていたことを思い出した。

まずは恒例のカンパ〜イ!

誠さんには宮城のクラフトビール「ブラックタイドビール」で、ロジャーさんには名古屋のクラフトビール「金鯱ビール」で、エールを交換。
マスター豆彦さんの掛け声で、名古屋と仙台を結んでの乾杯が実現した。

非常時のラジオの役割とは


すでに「旨塩えんどう」をものすごい勢いで頬張る誠さん。

誠さん:あかん。これ美味すぎて止まらん。酒とめっちゃ合う!これ指についた塩を舐めながら食べるのがええわ〜 笑
ロジャーさんが持っている「居酒屋紀行」も美味そうやね。その紅生姜天が食べたいんやけど…。大阪人は紅生姜が大好きやねん。え!?もうないの〜。

初っ端からトップスピードでエンジン全開。旨塩えんどうもお酒も止まらない。 

ここでカメラは仙台にいるロジャーさんへ。
この「スナックかすがい23夜」は2022年3月29日に開店したが、その2週間ほど前の3月16日に東北地方に大きな地震が起こった。29日時点でも交通網は乱れたままだった。 

ロジャーさん:今でも家の片付けがまだというご高齢の方もいるんですよ。家の中にいるのが怖いとか、緊急地震速報の音が嫌だという声も届いていて。そういう時にラジオを聴いていますと言ってくれると嬉しいです。

東日本大震災の時も、私自身がラジオで救われましたからね。その瞬間は、ちょうど番組中だったんです。実は前々日にも揺れていたので、その余震かなと油断していたんです。時間にして2分50秒ぐらいでしたけど、地球が割れるんじゃないかと思ったほど次元が違う揺れでした。
 
誠さん:私もあの時は大阪の生放送の真っ最中で、緊急地震速報が出ました。こんなん初めてで、めっちゃ揺れました。きっと東北はものすごかったんでしょうね。 

話は1995年の阪神淡路大震災の時へ。

思えば、大阪の誠さんと仙台のロジャーさん。お二人とも未曾有の被害をもたらした大震災を、オンエア中に経験していたことになる。
 
飲んでつまんで、すでにできあがっている酔客状態の誠さん!?からの発言。 

誠さん:阪神淡路大震災の時、めちゃくちゃ悩みましたわ。ああいう時ってラジオで笑わせたらいいのかどうかって。ずっと暗い話をしていてもなあって。聴いている人もそんな暗い話題されてもなぁと思っているかもしれない。でも…。一番悩む時じゃないですか?

ロジャーさん:そうなんですよ。毎回、たわいもない話で笑い合うような番組だったので。ようやく放送が再開した3月28日のことは忘れられません。ライフライン情報オンリーでしたから。このままじゃダメだと思ったんですよ。でもどこまで崩してもいいのか、本当に悩みました。
そんな時でした。ラジオが再開されてしばらくして、小学生の男の子のお母さんからメールが届いたんです。
「僕の体がカップ麺臭い!」「その例えやめなさいよ!」というやりとりが書かれていました。お風呂に入れなかったからなんですけどね。クスっと笑えたんです。

誠さん:テレビは大きな情報は伝えるけど、細かい情報は伝えない。ラジオは細かい情報を伝えるんです。日常に早く戻りたい!そんな人たちには笑いが必要なんじゃないかなって。その笑いって、日常の本当に些細な情報だったりするんですよね。
必要な情報も、テレビはヘリで上から撮って放送する。それでは細かい情報は伝えられないんですよ。必要な情報って、被災されている人の状況にもよって違いますし、住んでいる場所によっても違う。給水情報とかテレビでは難しいですよね。 

誠さんは、阪神淡路大震災の時、ラジオでリスナーさんに「欲しいものがあったら言ってほしい!」と呼びかけ、自ら大阪で買い物をしてリュックを背負って被災地に運んでいる。意外にも、みんなが欲しいと言ってきたものは「ウエットティッシュ」だった。買えるだけ買い込んで持っていったという。ラジオだからこそできたことだと。
 
ロジャーさんも、東日本大震災の時にリスナーからの「今夜も明日も食べるものがない!」という声を流したところ、山形の給食業者が500食ほど用意をしてすぐに飛んできてくれたという。

誠さん:ラジオで言ったら、本当に来てくれた!ってなった。ラジオはリスナーと密着しているんですよ。テレビじゃできないんです。
 
ロジャーさん:テレビは雲の上のような存在なんですよね。
 
誠さん:そうそう。ラジオはリスナーさん一人一人と喋っている感じじゃないですか?

ラジオの出番

マスター豆彦さんが「今こそラジオの出番!」と本題へと迫っていく。
そもそもラジオ番組はどうやって作っているのか?と極めて真面目な質問をすると…。 

誠さん:オープニングだけ考えて、あとは流れに任せてる。
あ~酔っ払ってきたからええ感じ。今日は酔っ払ってもいいって言われてるから、居酒屋紀行が美味いかだけが気になっている。
はい!ここからハイボールになります。これから調子に乗ってくるよ〜! 

ちょっとちょっと誠さん!(笑)
ここあたりから話があっちへ行ったりこっちへ来たり。それもまたスナックならではでして。

マスター豆彦さん:今回こうして無事ご出演いただけることになりましたけど、誠さんからすると放送局でもない菓子メーカーの素人が主催する「スナックかすがい」ってなんだ?ってご不安でしたよね?
当日の流れを教えてほしいと事前にリクエストいただいていましたが、何時何分ごろにこの話をしよう、など、今も計算してるんですか? 

誠さん測ってないわ!
 
ロジャーさん準備するほどダメ。ラジオは。音楽で例えると、テレビはポップスとかクラシック。ラジオはジャズなんですよ。即興が大事。それに慣れてくると逆に台本に弱くなっちゃう。覚えられないんですよ!

ラジオはジャズ。思わぬ音の展開と、観客とのグルーブ感に心震える。確かに!と膝を叩いた。
 
目線を上げるとその先には、話を聴いているのかいないのか、乾杯している観客グループが。
あまりの盛り上がりに、カメラマンの優さんもつれられるように、カメラを向ける。このノリの良さは、ただの集団ではなさそう……。
彼らは誠さんのラジオ番組のヘビーリスナーさんということが判明。
親戚席にカメラが入ったのかと思ったというマスター豆彦さんのコメントに、笑いが起こる。 

ここから話は、誠さんのライフワーク!?とも言える「マコ酒run(マコシュラン)」の話へ大きく旋回。
ちなみに「マコ酒run」とは、2012年から始まった、誠さんが東海三県のお店に公共交通機関で行き、リスナーさんたちと自腹で飲むという企画。すでに398回開催されており、当初は10名程度だった参加者が、今では40人に。
参加者は東海地方在住リスナーがメインだが、東京や長野、北海道から参加したリスナーもいる。
 
リスナーと自腹で飲み会、それを始めた理由は?マスター豆彦さんが問いかける。 

誠さん:僕は大阪からこっちに来たので、名古屋のことを全く知らないでしょ。その名古屋のことを、リスナーさんと居酒屋から知ることができるからです。店に行くまでの道中、たとえば初めて名鉄電車に乗るわけです。あのややこしい名鉄に。その話題だけでラジオで話せる。
 
マスター豆彦さん:誠さんのようなタレントさんだったら、リスナーさんから情報を寄せてもらうことなんて簡単では?わざわざこちらから御免くださいって出向かなくても…。  

誠さん:それじゃ全然面白くない。僕が初めて行くから道中に発見がある。金山の駅に立った瞬間、何に乗ったらいいのか全くわからへん。青い線やら赤い線やら、ようさんあるのに、なんでみんな普通に並んでいるのか?準急なのになんで各駅停車なのか?あんなん大阪の人間にしたら変やもん。それを知りたいんです。縁があって名古屋のラジオをやらせてもらって、ご当地タレントになるには、知らないとあかんことなんです。
誰よりも愛知、岐阜、三重の隅々まで行っている。誰も知らないようなスナックに行っていますからね。
ホンモノのご当地タレントになるためには、誰もやっていないことをやらないとダメ。

勝とうと思ったら、誰もやっていないことをやればいい!

誠さん:名古屋で勝負するなら、それくらいやらないと面白くないんですよ。春日井製菓さんも、誰もやっていないことをやればいい。
その点では、このスナックかすがいもそれに近いんじゃないかなと。

ロジャーさん:リスナーとの距離が近い。個人的に会ってお話しましょうよってことはありますよ。
番組の夏まつりが終わって局から帰る時に、ある男性に付けられたことがあったんです。何かなぁ、車のナンバーとか知られたら嫌だなと思っていて。いよいよ近寄ってきて、
「ロジャーさん!ぼくの作った曲です!」と渡されたんです。お話を聞くと、とても音楽に対して情熱のある方で、面白かったんです。
 
誠さん:そうそう、ほんま距離が近い。名古屋人気質とか、三重とか岐阜とかどんな人わからんけど、飲んだらわかるんですよ。
最初は俺が居酒屋に行くから一緒に飲みましょう!と言ったところでほんまに来るのかな?と思ったんです。特に大雨のときなんか、ちゃんと来るのかなと。店に着いたら、スタンディングオベーションで迎えてくれましたから。リスナーさんと飲むのは面白いんですよ。

そもそもラジオ“パーソナリティ”という言葉自体、進行役の個性や持ち味といった要素が強いからこそのネーミングなのではないかと思った。
誠さんもロジャーさんこそが、パーソナリティそのものだと。 

ラジオの価値とは

続いて話はラジオの広告効果に。

誠さん:ラジオの価値をわかっていない人がめちゃくちゃ多いよね。テレビは大きな媒体。でも見ている人の心に刺さるかどうかは別。

以前CBCテレビが、長島スパーランドで開催したイベントに、ミシュランの一つ星を持つ店が来たがお客さんが来なかった。それはなぜか。 
ミシュランの料理は、その店で食べるから旨い。テントで食べて旨いかってこと。そんなことをやっても刺さらないわけです。場所の設定が間違っていた。テレビでやったら人が来るだろうと思ったけど、結果は来なかった。
ラジオだったら、リスナーにお願いしたら来てくれる。
旨塩えんどうを1万袋売るならラジオ。10万袋だったらテレビ。
では、テレビでどう表現するのか。これが難しい。

誠さん:これを実際に食べて、めちゃくちゃ旨い!と表現すると、1万人には刺さる。それ以上は刺さらないかもしれないけど。
ここで、今、一番気になっている紅生姜味を食べて感想を言えば5,000人には買わせる自信がある!
この数だけは絶対に売りたい!という場合はラジオの方がいい。大きな数を狙うならテレビだけど、刺さるかどうか、当たるかどうかはわからない。

ロジャーさんキーワードは親近感。ラジオは音だけだから、受け手が想像を働かせられる。これも強み。

番組構成への関与度は?

ラジオを長年聴いているものの、実際に番組は誰がどのように作っているのか、何となくわかっているようでわかっていない。
プロデューサーをはじめ、多くのスタッフがそれぞれ役割分担して…。おそらくテレビとそれほど大きく変わらないと思っていた。

マスター豆彦さんが、スタッフを含めた役割分担についてお二人に問いかけた。 

ロジャーさん:tbcラジオの番組には、私は企画から入っています。どんな曲を流すかまで、ほぼリスナーとディレクターと私で決めています。子育て番組もそう。DVや貧困などの問題に関して、専門家の先生を招いています。これも私の企画制作。
自分でゲストやスポンサーも見つけてきて、契約書から領収書まで作っています。音楽と子育て関係に深くメスを入れていく番組を、作り続けていきたいと思っています。
社長さんが従業員に手こずっているとか、先生と生徒の関係の問題とか、子育て番組では、ちょっとした一言に救われたとか言われることもあって、そういう点でラジオはリスナーと近いなと思います。

誠さん:僕もほぼフル関与。スタッフにこれやろうや!と提案することも。「もったいないキャンペーン」は、コロナ禍で売れなくなった物を、ただラジオで紹介するコーナーなんですが、僕が企画しました。
お金はいらないからどんどん紹介しますよ!という。
困っている人がいるなら、どんどんラジオを使ってもらったらええやん。ただそれだけ。
ラジオはパーソナリティのもの。自分が面白いなと思ったら応援する。本気で。ホンマに推したいと思ったらガンガンいく。

名古屋の企業を応援したい。誰が僕の番組に参加してもらってもいいんです。実は20年以上、番組にCMを出してくれている名古屋のコーヒー会社があるんですけど、どんなコーヒーなのか知りたいじゃないですか。ずっと5秒CMスポットを出してくれているのに、誰も知らない。番組に呼ぼうや!となって、僕がチャリで見に行ったんです。飛び込みで、北野誠ですって行きましたよ。

CBCラジオのプロデューサーも営業も、誠さんがラジオを本気で面白いものにしたいと頑張っているから、そのアイデアを叶えるために動こうと思い、形にしたいと思っている。
誠さんが推す企業であれば、営業も自信を持ってアプローチできると。
パーソナリティあってのラジオであり、地元企業、地元の人間あってのラジオ番組。
まさに、パーソナリティがラジオ番組と地元をかすがっているのだ。

「特に誠さんの発信する言葉には魂がこもっている」と、CBCラジオのプロデューサー。
だからこそ、誠さんがやろうという企画は面白くなると。

もう35年ほど前の話で恐縮だが、学生時代に京都のラジオ放送局でアルバイトを2年間ほどやっていたことがある。
アルバイトと言っても、リスナーさんからの電話を受けて、内容を簡単にまとめ、書いた紙をスタジオにいるスタッフさんに渡すというものだったが、3時間ほどの番組中、夥しい数の電話がかかってくる。裏方で番組も聴いているのだが、パーソナリティの方の話の展開があまりにも面白く、そのスピードに合わせてリスナーさんからの電話も鳴る。

今思い返すと、リスナーさんからの電話の内容に合わせて進行していた。パーソナリティが「それなら次はこの話題でメッセージ送ってきてや〜!」という感じだった。
ラジオならではのこのライブ感とパーソナリティのカラー。どんなに時代が変わっても、変わらないラジオの魅力がここにある。

ロジャーさん:自分が聞きたいな、こういう番組があったらいいなというのを自分で作っている気がします。こういう番組があってよかったですというお便りもたくさんいただく。
せっかくラジオをやっているんだから、この年になったら自ら作り上げることをやらなきゃと思うし、それがやりがいでもあるんです。

パーソナリティは聴き役!?

マスター豆彦:春日井製菓の理念には、「多くの人々に愛され続ける」というくだりがあるんですが、ラジオでも多くの人が聞きたいことと、パーソナリティがやりたいこととはどう近づけているんですか?
 
ロジャーさん:もちろん自分が話すことがどう伝わっているのかジャッジしないとダメですけど、どうにも自分の思いで突っ走ることも必要なんです。
よくロジャーさんって全然しゃべらないですよね。人の話を聴いているよねと言われるんですけど、質問して聴くことが好きなんです。その人の歴史とか。
 
誠さん:マコ酒runでもいろいろな人の話しを聴きます。聴きに行っている。僕に会う時にこの話しをしたいと準備をしてきてくれていますからね。ただただ聴いているだけなんですよ。
まあ途中から説教し出しちゃいますけど(笑)

そんなリスナーからの話しを楽しみながら、番組に盛り込んでいく。そんな小さな話しほど面白いのがラジオ。そこにはみんなの共感がある。ワールドワイドな話しになるほど面白くなくなる。どうでもいい話しがいい。というのが、お二人の共通意見。
 
そしていよいよ今夜のスナックかすがいも終盤へ。

視聴者さんからの、お二人の魅力やラジオの面白さに関してのコメントを読み上げられると、いい感じの酔っ払い具合でご機嫌な誠さん。

会場の参加者からも感想を聞いた。

「普段ラジオは聞かないけど、だからこそ気になって参加した。これを機にラジオを聴いていきたいと思っている」という声も。 

ラジオの未来像

初対面の誠さんとロジャーさん。この時点ではすでに親戚かと思うほどのやりとりは、さすがしゃべりのプロ。
ラジオのエリア性を含めた、今後のラジオの在り方についてのお二人の考えを尋ねると… 

ロジャーさん:以前、大阪にライブに行った時に地元のラジオを聞いたんです。浜村淳さんの番組で、昼間から結構個人的な話題に斬り込んでいて。東北のラジオに慣れているので、ちょっと驚きました。もちろん東北での番組という土壌に合わせながらも、もう少し人の気持ちに寄り添って、白黒はっきりとした本音をいわないといけないと思いましたね。それがラジオには必要だなと。誠さん!見習います。
 
誠さん:小さい話しが好きなので、小さい話ししかしません。それがテレビとは違う、AMラジオの面白さ。日常でラジオを聴きながら、ストレスを解消して、今日も1日良かったなと思えるのがいい。
日常のおつまみには春日井製菓で!!
こんな楽しいイベントやったら何回でもできるし誰とでも喋れるわ!毎日できますわ。もう一杯だけ飲みたいんですけど!

止まらない誠さん。グラスを手にめちゃくちゃ楽しそう(笑)

あっちこっち話しが飛びまくっていても、あ〜楽しかった!と思わせる不思議なトーク力。目の前のヘビーリスナーさんもすっかり出来あがっているようで、お開きに向かって、テンションも急上昇。元気なスナックかすがいが戻ってきて、本当に嬉しかった。

やっぱりお客さんと一緒にライブを愉しむのはいい。

音、匂い、声、仕草、そして温度。すべてを肌で感じる。アルコールも入って、頭で考えるのではなく体で感じて反応する。

ここに来て良かった!ここに居て良かった!と思わせてくれる、あっという間の2時間半だった。

最後にマスター豆彦さんから

マスター豆彦:小さなことが嬉しいと思える機会が、コロナ禍で失われてしまいました。災害時や非常時には、特にラジオが威力を発揮する。そんなラジオをやっている方に、その苦労や喜びを聞きたかったんです。コロナ禍でなかなか集まることができなくて、スナックかすがいの開催も何度も諦めそうになりましたが、こうしてリモートで繋いで仙台とも話ができていることは、奇跡だと思っています。
愛知と宮城でラジオを盛り上げてくれているお二人がお話しくださったように、生活のいろいろなところに面白いことが潜んでいる。今夜のこの会で、お二人の面白さが伝わっていくといいなと思っています。 

って誠さん!ちょっと、まったく聞いてないでしょ!(笑)

誠さん:もう一杯おかわり。あ!マスター、もう少し喋っていていいですよ〜。

ナイスな締めセリフで、第23夜目のスナックかすがいも閉店ガラガラ〜  

  *****

この体験記を書いてくださった人

真下 智子さん|Mrs. Satoko Mashimo
フリー編集者・ライター。同志社大学社会学科新聞学専攻卒業。
食品メーカーの社員として、社内報を担当したことからライター業へ。ブライダル、旅行、企業広報誌と紙媒体からウエブまで、幅広い媒体に執筆。心の声を聞き出すインタビューをモットーに、これまで300人以上の人にインタビューを行ってきた。あんこと温泉をこよなく愛する、二児の母。温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。
satchy@sc.dcns.ne.jp

この体験記の写真を撮ってくださった人

野村 優さん NOMY|Mr. Yu Nomura
昭和54年生まれ。岐阜県出身。人物、商品、建築、料理、映像などを撮影するプロカメラマン。大学でグラフィックデザインを学んだのち、レコード製作/販売会社、オンライン音楽配信会社、ECサイト運営会社を経て独立。野村優写真事務所を開設。2014年7月、「さぁ、みんなでカメラ楽しもう!」をテーマに「撮れる。魅せる。伝わる。カメラ講座」開始。岐阜、名古屋、東京、大阪、神戸ほか全国に展開中。
趣味は、ジャズのレコード収集、DJ、ハーブを使った料理、もうすぐ7歳の息子とカメラ散歩。
素敵、かっこいい、面白い。そう思った時がシャッターチャンス。
その気持ちが写真に写り込むように。
https://yunomura.net

好奇心旺盛な大人たちが、生ビールとグリーン豆をお供に、気になる人の気になる話を聞いて楽しむ社交場、それが「スナックかすがい」です。いっしょに乾杯しましょう!