STORY② 大雪の翌日。いつもどおりの日常と、ひとつの事件


昨晩の大混乱はいずこへ、翌朝になればいつもどおりの日常が待っていた。
バタバタとした朝。前日の大雪の影響か、仕事ができない僕のせいなのか、やっと一息つけたのは夕方になってからだった。ふと、昨日も着ていたダウンのポケットに手を入れると、おばあちゃんがくれた紙の切れ端があった。それはもう達筆な文字で、電話番号が書かれているやつ。そうだ、昨晩のお礼をしよう。


『もしもし!?』


相当大きな声。本当、元気なおばあちゃんだなぁ。


「昨晩はありがとうございました。無事着けて良かったです」


『お礼を言うべきなのはこっちの方よ。ありがとうね。今日の夜、ごはんでも行かない?』


「いえいえ。安心しました。ごはん、嬉しいです。お店探しておきますね!」


「お店探しておきますね!」とは言ったものの、男友達でもない、恋人でもない、自分の祖母と同じぐらいお歳を召したおばあちゃんを、一体どんなお店に連れて行けば良いものか。悩み悩んだ結果、「お蕎麦屋さん」を提案した。たこ焼き屋のおばあちゃんをお蕎麦屋さんへ。ヘンテコすぎて笑ってしまう。彼女から、『あら、良いわね』の一言。決定だ。



『私、あんまりお蕎麦 食べないの』


いやいやいや。『良いわね』って言っていたのはどこの誰ですか。思わぬ形でバッサリ切られてしまった。おもむろに、『定食はあるの?』とおばあちゃんが尋ねる。あったらしい。危なかった。


「おばあちゃん」とは書くものの、彼女は未だ、現役でバリバリ働いているという。ご飯はたくさん食べるし、声もハツラツとしている。今年で73歳にもなるという彼女は、万年低血圧の僕なんかよりも、ずっと元気だ。

彼女は、その後も何度か、僕をお食事に誘ってくださった。夜中に『お茶しましょ』と誘ってくれることもしばしばあった。眠いけど、もれなくご一緒した。もちろん、彼女のたこ焼き屋さんへ伺ったりなんかも。会うことが増えてくるなかで、だんだん彼女との仲も深まってきたような気がする。

最後にたこ焼き屋へお邪魔した日、彼女が言った一言。これこそが、この物語の核心だったような。


『ねえ、お店手伝ってくれない?』


うん。うん。マジか。マジなのか。心底驚いた。そうなっちゃうかぁ。ここには、恋人の影響からか、イエスを投げかけてみよう。「もちろんです!」と、威勢の良い一つ返事を。“思い立ったが吉日” とはよく言ったものだ。彼女のためになることならば、できる限り何だってしようと思った。さすがに一瞬ビビったけど。

こうして僕には、 “たこ焼き屋のお手伝いさん” という新たな肩書きが生まれてしまったのだった。まさかのまさか。大雪の後に、またも大事件勃発。どうなっちゃうんだ、僕の人生。

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