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総合商社内定に効く「軸」の定め方

これまでの記事(「商社志望動機の落とし穴」や「商社でハマる自己PR」)では、「本来商社入社の真の動機はビジネスを実現するための努力を生涯し続けたいからであるべき」、「集団の中での自分の貢献の仕方やそれに向けた努力を論旨にすると、ご自身の経験、自己PR、志望動機が一気通貫したものになる」とお話しして参りました。また「信頼を得る上で、相手の立場を理解する(=客観的に自他を認知する)力が欠かせない。それは商社がさまざまな形で信頼を売り物にしているからだ」ともお伝えしています。

今回の記事では、なぜESや面接で展開するストーリーにおいて、「周囲の人」の存在がそれ程重要かをお話しします。そして次に、過去面接官や就活生指導の経験から、「具体的にご自身の人生のどの部分を切り取って伝えるのがいいか」、もう一歩踏み込んだ内容をお伝えしたいと思います。


「周囲の人の存在」の重要性

商社就活における「周囲の人の存在」の重要性を語るには、商売の成り立ちを思い出すことが重要です。

皆さんもご存知の通り、遠い昔人々は物々交換を通して商売をしていました。魚をたくさん獲得できる漁村の村人は、山間部の村人が持つ肉や野菜、毛皮などと等価交換をしていたのだという話は子供の頃から何度も耳にしたことがあるかと思います。

そこに価値保存媒体としてお金が誕生しました。最初は貝や石でできたお金でしたが、それがいつしか本質価値を持つ金銀銅で作られ、お金の形式と本質価値が切り離された紙幣が出回り、今では紙幣すら見る機会が少なくなり、スマホでPaypayや銀行残高を見るだけの電子情報へと、今もお金は姿を変え続けています。

このお金の進化の過程で「今」のお金と「未来」のお金という時間価値や信用(クレジット)の概念が生まれ、お金を貸し借りや投資の仕組みが生まれたわけです。その派生物として先物やオプション、スワップ等の金融派生商品が出回ったことで流動性が高まり、更に多くの人が時間価値や信用にアクセスできる様になりました。

我々はこうした世の中が複雑化した進化の最先端で生きているため、企業に就職し、お金を稼いで生きていくのが当たり前に感じてしまいがちです。

しかしながら、その生活が成り立つのは、実は物々交換時代から変わらず、商売相手が持っていないモノ・サービス、すなわち相手が求めている価値を提供できる人材だから成り立っているわけです。

従って、商社に限った話ではありませんが、商社の面接官をしていた立場から言えば、就活生が「そもそも周囲の人の存在を意識し、そのコミュニティへの貢献を意識したか」「周囲が求める価値を理解したか」「具体的にその価値を提供する努力をしたか」の前提に注意が行きます。

そして「周りがまだ認識できていない価値を気づかせて、その価値を提供した」、「他の人には思いつかない方法を試した」はボーナスポイントとして評価していました。

従って、「学生時代、自分の理想とする体を作るために、独自の方法で毎日筋トレをしました」というお話しは独創的で素晴らしいですが、ボーナスポイントだけにフォーカスしたストーリーなので、ご本人が思う程私には響きません。

商社パーソンとして相手が求めている価値を提供する事とは

具体例を持ってお話しします。

ご自身が営業部に配属された場合、お客さんの求める価値に気づく必要があるのは想像しやすいかと思いますが、それだけでしょうか?

商社の営業はチーム戦です。本社の同僚だけでなく、海外駐在員や仕入れ先とも連携して商売を進めます。

例えば、あなたが石炭の仕入れを任されていていたとします。急遽仕入れ先のオーストラリアの炭鉱で事故が発生したため一向に出荷できず、駐在員が対面する顧客からせっつかれています。

自分が用意した船やトラックは停滞してしまうので、滞船料金の支払いなんかの追加コストが発生します。こんな時、自分の損失だけ心配するのではなく、焦る顧客や、駐在員や事故現場の立場を理解できると、不幸中の幸に恵まれるかもしれません。

この顧客は在庫不足で工場止めると1日100万円損するからこんなに焦っている、と理解できた場合、在庫を厚めに持っている他の工場への納入を遅らせる代わりに10万円ペナルティを払う事ができれば、この顧客の損失を抑える事ができます。相手の状況を理解することで、こうしたヒントが得られるわけです。

また、事故現場では復旧作業に追われていますが、その際事故現場である鉱山に物資を運ぶトラックがあるはずで、その帰り荷として鉱山横に堆積してある石炭を運ぶなんてアイデアも生まれるかもしれません。

もっと詳しく聞いていくと、もしかすると鉱山側の資金不足で復旧が滞っているのかもしれません。資金が潤沢にある商社なら、トラックの手配を資金面で支援し、今後の仕入れ値から少しずつ返してもらうなんていうこともできるかもしれません。

もう一つの例を考えてみたいと思います。

もしあなたが経理部員だとしたらどうでしょう?直接的な顧客はいませんが、同じ事です。経理は営業部、リスクマネジメントや財務、経営層に会計を中心とするサービスを提供し、決算や投資案件、経営の推進に携わります。これらのステークホルダーの求める価値を提供できなくてはいけません。

社長や役員はどうでしょうか?

社長らは会社のトップだからといって好き勝手できるわけではなく、株主や社員というステークホルダーに「経営」というサービスを提供しています。

ここまでで明らかな様に、商社ほど母体が大きく、「個人」という尺で仕事の良し悪しを測りづらい業態では、どこまで行っても周囲の求める価値を理解し、届けていく姿勢と能力が求められます。従って、ESや面接でも、その点が試されるわけです。

次の記事では、具体的にご自身の人生のどの部分を、どう切り取って伝えるのがいいか、お伝えしたいと思います。


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