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地方創生のカギはデュアラー

先月、リクルートホールディングスの「2019年のトレンド予測」でいくつかのキーワードが発表されたが、その中に「デュアラー」という聞き慣れない言葉があった。「デュアル」は一般に二つの、二重のという意味で、例えば「日経DUAL」は仕事にも育児にも忙しいワーキングママとパパのための情報サイトである。今回発表された「デュアラー」は住まいに関する言葉で、「都心と田舎の2つの生活=デュアルライフ(二拠点生活)を楽しむ人」という意味だそうだ。

以前なら、こういうライフスタイルは富裕層が一時期を別荘で過ごすというイメージだった。しかし最近では、都心に暮らしている20~30代の若い世代が毎月数日間を田舎で暮らす、そういう人が増えているらしい。交通機関の発達で移動の利便性が高まったことや、民泊やシェアハウスなど新しい宿泊施設が普及したことも一因だろう。自然や趣味を満喫したいとか、自然豊かな中で子育てしたいなど理由はさまざまだ。中には将来的に考えている移住先として試しに住んでみる、そういうプレ移住のデュアラーもいるそうだ。私はそういう人々に注目したい。

人口減少に歯止めをかけたい地方の自治体は、東京都内で移住・定住のためのイベントや説明会を盛んに開催しているが、実際に行動に移す人はなかなか増えないのが現状である。また、2日程度の無料体験ツアーを企画しても、それが移住者の増加にあまりつながっていない。移住には住居、仕事、教育、コミュニティなど不安要素がたくさんあり、気持ちはあってもなかなか決断できない人が多い。

そこで、東京からの移住を増やしたい地方の自治体は、いきなり移住を勧めるのではなく、まずプレ移住の「デュアラー」を増やす施策を考えてはどうだろうか。東京のデュアラー志望の人に向けて地域の魅力をアピールするのはもちろん、毎月定期的に住める生活環境や、生活をサポートしてくれる地域の体制などを整備し、第二の生活拠点にしてもらうのである。

そして同じ場所を何度も訪れれば、当然その地への愛着が増していく。そのうち何かのきっかけで(それは仕事上のことかもしれないし、子育てのタイミングかもしれない)、その家族が移住する可能性は高いのではないだろうか。「移住・定住しませんか」ではなく「二拠点生活をしませんか」とアピールの仕方を変えることで、将来その地に移住する人が増え、地方創生につながるのではないかと考えている。

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