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観光コースから少し外れた、岡山県南部、沁みる観光案内。

今年も岡山県美作市の棚田で、耕作放棄地の再生活動を続ける友人たちの稲刈りを手伝い、その後は岡山市内に移動して、2泊滞在しました。これまで何度も岡山に来ているのに、なぜか行けなかった場所をまとめて回ってみようかな、と。

まずは岡山駅。旧国鉄製の車両が元気でうれしい。

僕は日本中のどこへでもクルマで行ってしまうけれど、地方の中核都市に泊まるときには、できるだけ公共の交通機関を使います。なぜならその方が移動が速いし、地元の人たちの会話が聞けて楽しいし、何よりいつでもビールが飲めるし。
そして岡山駅。今どきの地方都市は、駅前でも人通りが少なく、ひっそりしていることが多いけれど、岡山駅は活気がありますね。そして岡山に限らず、中国地方に来ると、旧国鉄時代に作られた車両が、今なお現役で走っている姿を見ることができて、とてもうれしくなるのです。

津山線のキハ40。この車両を見ると、こっちに来たな、という実感が湧くというもの。
かつての"湘南電車”に、こんなところで再会できるとは。
そして今回は、この黄色い車両に乗って、山陽線や赤穂線を回りました。

ほかにもサンライズ出雲や瀬戸の停車駅でもあり、四国方面への特急も出ており、岡山駅は飽きません。ただし近郊に向かう路線がいろいろあり、いずれも車両はこの黄色いヤツが使われているので、うっかり乗ると行き先を間違えそうなので要注意でした。

竹久夢二の生家へ。

岡山駅から黄色い電車、赤穂線に乗って瀬戸内市の邑久駅へ。電車で30分ほどと離れており、駅からは4kmほどの距離。タクシーを使いました。運転手さんによると、「小さな家だし、周りには田んぼしか無いので、一時間半あれば充分かもしれない」とのこと。昼間の電車は一時間に一本なので、運転手さんに従い、一時間半後の電車に合わせて来てもらいました。拝観料よりもタクシー代の方が高くついてしまった。ここはクルマで来るべきだったかな。

施設の名は「夢二生家記念館」。後に東京で暮らしたアトリエ「少年山荘」も移設されており、併せて見学が可能です。小さなカフェスペースもあり。

少年時代は酒の取り次ぎも行う農家で育ち、生家は土塀で囲まれていました。裕福だったようすが窺えます。母や姉に大切に育てられたものの、16歳のときに家は没落し、一家は北九州八幡へと移住。それまで過ごした岡山での懐かしい日々が、後の夢二の作風に大きく影響を与えていたことが、この生家にいるとひしひしと伝わってきます。

生家前に置かれていた歌碑。
夢二と言えば椿。ドアを開けて土間に立つと、椿を囲んで遊ぶ子どもたち。大正初期の作品「童子」がお出迎え。夢二はこの中に、自分と姉の姿を重ねているのでしょう。
涼しい風が通り抜ける床の間。
少年時代を過ごした部屋。窓の右上隅には、姉の名前を左右逆に、鏡文字で書いた落書きがある。姉の嫁入りに反対して書いたものなのだとか。

夢二の作品は、東京の竹久夢二美術館、群馬県渋川市の竹久夢二伊香保記念館などなど全国で見ることができるけれど、生家はここにしかありません(当たり前ですね)。ファンの皆さん、機会があれば見ておくことをお勧めしますよ。
蔵の跡では企画展が行われており、こちらは撮影禁止。大正時代の雑誌に描かれた表紙絵や挿絵など。昭和の前にもあったという、華やかな時代を思い起こさせる、小規模ながらとても見応えのある展示でした。

雰囲気はがらりと変わって、日生港の「カキオコ」へ。

10日間以上続いた稲刈りが終わり、その打ち上げをやろうということになった。普段は山の中なので、あまり魚介が食べられない。だったら海まで買い出しに行こうか、と。山の中とはいえ、クルマで30〜40分で港に到着。

クルマで真っ直ぐ南に走ると、そこは牡蠣の養殖で知られる日生の海。

人数分のカツオやイワシ、サザエなどなどの魚介を大量に買い込み、昼食はお好み焼きへ。お好み焼き? 聞くところによると、この港は「カキオコ」という、焼いた牡蠣を包み込んだお好み焼きが名物なんだとか。なんとなくイメージが湧かないのだけど、まぁ、行ってみようか、と。

このような「カキオコ」の店が数軒。とりあえず、この店を選んだ。ランチタイムなので混んでました。20分ほど待ったかもしれない。
目の前で、手際よく牡蠣が焼かれて行く。
そして、82歳という店主が、できあがったお好み焼きを切り分けて行く。

これがですね、悔しいことにうんまかった。ひと皿で4通りの食べ方が楽しめます。半分はおたふくソースで、半分は醤油で。薬味は山椒と一味。
最初は醤油のみで。次に醤油に山椒を振りかけて(この山椒の、新鮮な香りがよかった)。次にソースと山椒。最後はソースと一味。
82歳になる大将の解説もなかなか。店によって出し方は様々あるようですが、この食べ方は楽しい。僕は醤油と山椒の組み合わせが気に入りました。これだけひと皿でも行けるくらいです。

そして、山に帰ったらカツオのたたきを作る。都会では貴重な藁も、ここでは売れるくらい余っているからね。
ちなみにここは美作市上山の千枚田。稲刈りが終われば稲は天日干しにします。壮観です。

以前、noteにも、ここでの棚田再生活動のようすを2回に分けて紹介しているので、ご覧ください。

そして最終日、桃太郎伝説発祥の古代山城、鬼ノ城へ。

今回は岡山まで飛行機で来たのだけど、岡山空港の近くに、このような、とんでもない遺跡があることをご存じでしょうか?

鬼ノ城、西門。古代の築城技術を使って復元されたもの。

7世紀に作られた古代山城(さんじょう)を、古代の築城技術を使って今も復元中という遺跡。白村江の戦で敗れた我が倭国が、大陸諸国の強さを思い知り、大陸からやって来る船に備え、瀬戸内海の見張り役として築城された。城の造りは朝鮮半島の様式。この山の土や岩を使い、高さ6m、一周2.8kmにも渡る土塁が築かれていたというから凄い。古代のデザインもカッコいいし。

岡山県南部の瀬戸内海には埋め立てられた場所も多く、かつてはもっと海が近かったらしい。今でもここからの眺望は絶景です。
高さ6mにもなる土塁が、一周2.8kmにもわたって築かれていたというからすごい。

空港から近いので、帰りにちょっと寄るつもりが、そこは意外にハードなトレッキングコースでした。一周2時間くらいかかりそうだったので、時間切れで全部は回れなかった。ここにもまた来なくてはならんね。
なお、頂上近くに駐車場があり、クルマで登ることができるけれど、途中3kmほどの山道はとても狭いです。大型化が止まらない今どきのSUVが2台すれ違うことは困難だと思うので(幅2mを越えるクルマは立ち入り禁止)、できるだけ小さいクルマで行くようにしましょう。
鬼ノ城ビジターセンターを目指すとよろしいかと。

飛行機からも見ることができました。

ということで、場所が離れているのでまとめて回ることのできなかった岡山県南部の名所たち。今でも観光客は少ないので、この秋のお出かけに、お勧めします。

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