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そして、今年も行って来ました郡上おどり。

思えば、初めて岐阜県郡上市八幡町に来たのがちょうど一年前。まだ一年しか経っていないのに、もうこれで5回めのGJ8Manです。
地元の人からは「また来たの?」なんて言われそうですが、やはり郡上八幡の魅力が爆発する夏には行かねばなるまい。ということで、2022年にユネスコの無形文化遺産に登録され、コロナ禍も明けて4年ぶりの完全開催となった郡上おどりの、ほんの2日間のお話をいたしましょう。この街の魅力について語り始めると長くなるので、過去の投稿を最後にまとめておきます。

夏の間、31夜も繰り返される、日本でいちばん長いお祭り。

郡上おどりは、今年は7月15日から、9月9日まで行われています。途中に休みの日も入れながら、全日程は31日間。ひとつのお祭りとしては、日本でいちばん長いお祭りと言われています。特にお盆の間、8月13日〜16日の間で行われる徹夜踊りは広く知られている通り。この、美しい水の流れで知られる静かな城下町が、徹夜で盆踊りですよ。どうにかしてます。しかも、夜空が明るくなり始める未明の時間帯こそ、お囃子と踊り手の一体感が最高潮に達し、なんとも言えないグルーヴ感が生まれるのだという。

街中に飾られる提灯と、風鈴の音色が涼しい。

だからこそ、スジガネ入りの郡上おどりファンは、徹夜踊りを目指して遠路はるばるやって来る。この小さな郡上八幡の街には彼らを全員受け入れるほどの宿泊施設は無いけれど、近隣の観光地や温泉地から観光バスでやって来る人が多いとのこと。長良川鉄道も、この期間に限り終夜運転を行います。
とは言いながら、31夜すべてが徹夜ではないのでご安心ください。僕も、それほど混まない通常の開催日を狙って行き、少しずつこのお祭りに、ココロとカラダを慣らしているところです。詳しいことは下記のサイトをご覧ください。

郡上八幡には神社仏閣が多く、すべての路地の突き当たりにはお寺があると言ってもいいくらい。これは戦国時代の名残で、その神社仏閣が、城下町を守る軍事的な役割も担っていたとのこと。
そして平和になった今は、それぞれの縁日で郡上おどりを踊る。その日が夏の間に集中するので、こうして日本一長期間のお祭りになった、というわけです。
なので、郡上おどりは、毎回会場を移します。さらに郡上おどりイコール盆踊りではなく、盆踊りは前述した徹夜踊りの期間ということになります。そういう細かい話もアタマの片隅に置いといてください。

いつもの路地が踊りの会場になる。

僕が行ったのは、8月1日〜2日の二夜でした。8月1日は、本町通りという、町家が立ち並ぶ通りにある「大乗寺」の縁日。僕がいつも「杏仁豆腐味のソフトクリームに日本酒つゆだく」をいただく上田酒店も、この通りにあります。いつも見慣れた通りが、こうして踊りの会場になっているようすにワクワクが止まらない。

普段は静かな本町商店街。『郡上みそ』や『肉桂玉』など、この土地ならではの食品店や、日本名水百選第一号となった『宗祇水』のある通りです。これが夜になると、次の写真のような会場に変わる。
踊りは、通常は毎晩8時に始まり、10時30分に終わります。お囃子は「保存会」のベテランたちが行いますが、この日は地元の高校生たちのお囃子で始まりました。
なおご参考までに、これが上田酒店の「杏仁豆腐味のソフトクリームに日本酒つゆだく」です。この味には禁断症状があり、郡上に行くと真っ先に食べ(飲み?)に行きます。
こうして街の伝統を受け継ぐワカモノたちを見ていると、胸がアツくなるというものです。大人になってから、こういう日々を懐かしく思い出すんだろうなぁ。
老いも若きも0歳児までも、いつの間にか踊りの輪に加わる。
8月1日は、大乗寺の縁日としての踊り。日頃はひっそりと静まりかえっているお寺も、こうしておめかし。かつてはそれぞれの境内で踊られていたらしい。

僕は踊りというよりも、お囃子のファンなのです。

見ての通り、僕は盆踊りや神楽が大好物なのですが、踊りそのものよりも、どちらかというとお囃子が大好物なのです。和楽器の音を聞くと、子どもの頃に見たいろいろな風景を思い出し、アドレナリンに火がつきます。そして普段は地元で普通に暮らしている人が、お祭りの日に、あの難しい三味線や笛をカッコ良く演奏しているようすを見るとゾクゾクします。ワガクニには、そんな隠れ和楽器奏者がけっこういるんじゃないかな? 演奏できる人は、もっと自慢していいと思う。

保存会の演奏に入れ替わって、長い夜が始まる。最初のアカペラがカッコいいぞ。

盆踊りのお囃子について、最初に驚いたのは秋田の西馬音内(にしもない)盆踊りでした。こればっかりはマニアじゃなくても感動できるはずです。この歌そのものは民謡として歌われることも多いので、どこかで聞いたことがある人が多いかもしれない。

ここで西馬音内盆踊りについても、少し触れておきましょう。

演奏は野性的というか縄文的というか、そこにラップのような歌詞が乗り、対照的に、踊りはきわめて優美で複雑。この踊りはとても難しいので、観客は桟敷席で見ているほかありません。興味がある方は、YouTubeに美しい映像がいくつか上がっていますので、ご覧ください(ここにはリンクが貼れないようです)。
ところで西馬音内、今年の大雨の影響はどうだったのかな? 

こちらは西馬音内盆踊り(2017年)。指先の動きまで踊りに加わる手踊り。野性的な踊り歌とは対照的に極めて繊細な踊り。西馬音内盆踊りは、郡上おどり、阿波踊りと合わせて、日本三大盆踊りとも呼ばれています。
また、西馬音内盆踊りの衣装は、代々使われてきた衣装の端切れをつなぎ合わせて仕立てられることも大きな特徴。皆さん、世界に一着だけの衣装を身につけて踊るわけです。

郡上おどりは、歌詞もよ〜く聞いてください。

一方、誰でも輪に入って踊れる郡上おどりは、歌詞が粋なのです。おどり唄は全10曲あり、いずれも江戸時代から歌い継がれる暮らしの唄。なので、歌詞や、唄に出てくる地名(ほとんどが今も残っている)から、昔の暮らしぶりが、まるで映像のように伝わってきます。それだけでもユネスコ無形文化遺産としての価値を感じるというもの。

一度に全10曲の踊りを覚えるのは大変だろうから、まずは最初の方で必ず踊る「かわさき」と「春駒」を覚えておくとよさそう(などという僕も、まだ覚えていないんだけどね)。

僕は盆踊りに来ていながら、もっぱら演奏を聴いているヘンなヤツ。とは言え、ここで下駄を履いていないヤツは負けですね。下駄は必要です。なぜならこのお囃子には、下駄もパーカッションとして加わるからです。特に「春駒」という曲はポップで、下駄のタイミングが難しい。うまい人たちが踊ると、音が揃うのでカッコいいのナンの。そして踊りの翌日は、会場には下駄の削れた木くずが溜まっているのだとか。

8月2日。郡上八幡は山内一豊の奥方さま、内助の功で知られる「千代」さんの出身地ということで、千代さんの像が建つ城山公園で踊りが始まる。
城山公園でのお囃子と踊りを、かわいいお城が見守る。なんて美しいんだ、ワガクニの夏。
踊りを終えて宿に戻る。この街の、ほとんどの路地からお城が見えるんですよ。
浴衣と下駄と手ぬぐいは、郡上おどりの三種の神器。浴衣までは用意できないにしても、下駄は履いておきたい。ところでこの下駄は、普通の下駄よりも音が大きい。

今宵も踊りが終わり、路地に響くはカランコロンと心地よい下駄の音。
下駄については、僕も買おうかどうしようか考えましたが、帰りの荷物を増やしたくないので断念。次回に持ち越しといたしました。次回… 実はこの夏、最終日にもう一回来るんです。もう、バカですよね。

それにしてもだ、夏の間、毎晩お囃子が聞こえていて、毎晩踊っている人たちがいて、いつも、どこからともなく川の流れる音が聞こえていて、そんなようすを、ライトアップされたかわいいお城が見守っている。この町にいると、おとぎ話の中にいるような気分になれるのですよ。

最後に、お知らせ。

この投稿をしている今日は8月8日。まだまだ踊りの真っ最中で、徹夜踊りは来週です。まだまだチャンスはあります。台風なんか来るなよ。で、最終日は9月9日です。詳しい日程は下記に。
ただし、イキオイ余って長良川鉄道に乗って郡上八幡の駅で降りても、街まで歩いて行くにはちょっと遠いのでご注意ください。昼間は「豆バス」という、駅と城下町を結ぶコミュニティバスがありますが、夜や踊りの期間内はどうなんだろう? ご確認ください。


なお、過去のnoteに僕が初めて郡上八幡に来たときのようすと、この街の細かい解説。ふたつめは紅葉を見るために再訪した時のようす。三つめは今年の新緑のようすをまとめています。

実は紅葉シーズンもいいよ。

新緑のシーズンもいいんですよ。

ホントは、夏に美味しい郡上鮎の話や、蒸さずに焼くうなぎの話もしたかったけれど、長くなるのでこのくらいにしておきます。あ、鮎と鰻の話は一回めにも書いていますので、ご興味のある方はご覧ください。

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