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せまる増税、あきらめムード漂う

1週間後に迫った消費税率引き上げ。

7月の参院選では秋の増税を決めた安倍政権を多くの国民が支持した。

一方で、消費税廃止を掲げる新たな勢力の台頭も見られた。

安倍政権とて、貧富にかかわらず負担を求める消費税を上げることが国民からの大きな反発を招くのは承知の上。であるからこそ、2014年に8%に引き上げたのち2度も延期の判断を下した。

にも関わらず、増税を強行する理由はどこにあるのか。

税収が減っているからなのか、それとも経済が好調だからか。

いずれも違う。

ことし7月、財務省は税収が過去最高の60兆円を超えたと発表した(日本経済新聞7月2日)

また、5月20日に内閣府が発表した2018年度のGDP(国内総生産)は年率で2.1%の伸びを示したものの、そのほとんどが外需頼み。輸入にかける歳費を減らしたのみで国内消費が押し上げたとはいえない結果だ。

直近のGDP(2019年4-6月)もプラス成長を示しているが、これは改元にともなう10連休があったことによる一時的な消費拡大にすぎない。

この秋の増税で緩やかなプラス成長はストップし、国内消費が減退することは誰の目にも明らか。

◇政権の浮沈を握る財界のおっさんたち

それでは、改めて安倍政権が増税に踏み切る理由を考えたい。

理由は1つしかないと考えられる。

一言でいえば、”経団連の要望を聞き入れた結果”。

いくら支持基盤が盤石で、憲政史上最長内閣をほぼ手中にした政権でも支持率を下げ、経済成長を停滞させてまで増税を実行することは、この理由以外に考えられない。

では、なぜ安倍政権は経団連の顔色をうかがう必要があるのか。

経団連とは、日本経済団体連合会の略称で日本の代表的な企業などから構成される団体で、経済界に大きな影響力を持つ。

いわゆる、”大企業役員の溜まり場である”。

そんな、経団連は安倍晋三首相率いる自民党に毎年数十億円もの政治献金を行っている。

要するに、「金をやるから俺たちの要望に応えろ」ということだ。

彼らの要望。それは、「法人税を引き下げ、その引き下げた分を消費税で穴埋め(補填)をする」こと。

実際、つい先日にも新体制となった安倍改造内閣に対し、以下のような提言を行っている。

一般社団法人日本経済団体連合会HP「新内閣に望む」より
(2019年9月11日)

この声明を端的に理解するとなれば、「年金などの社会保障制度を維持するために消費税を10%に上げなければならない」ということになる。

ここには明らかに法人税収が消費税収を大きく下回っている事実が欠落している。

上記のグラフは、財務省が毎年出す一般会計における税収の推移を示すものだ。

2008年に世界を襲ったリーマンショック時に比べれば法人税率は持ち直しているが、8%へ増税された2014年から年を追うごとに消費税収と法人税収の差は大きく開いていっている。

法人税は各企業が持つ資本金の規模によって税率が異なる。

当然、大企業よりも中小企業の方が税率は低い。

ところが、大企業が税制の抜け穴を利用して節税を繰り返しているため実質的な税負担率は中小企業のそれよりも低いことが各種報道で明らかになっている。

要するに安倍政権は、大企業の負担を減らす見返りに政治献金(=カネ)と選挙での組織票を得ているのだ。

この構図が今後も続く限り、言い換えれば自民党政権が続く限りは経団連の主張する通り消費税は上げられ法人税は下げられる。

◇累進課税強化に潜むリスク

その事実を知っている人たちが支持を向けたのが、今夏の参院選で消費税廃止を掲げ、220万あまりの票を獲得したれいわ新選組(代表:山本太郎)。

党代表の山本太郎は、法人税に累進課税(利益に応じた税率)の導入を訴えた。これは、れいわだけでなく立憲民主党(代表:枝野幸男)も掲げる主張。

これによって、大企業にも応分の負担を求めることができるとの考えだ。

ただ、仮に法人税に累進課税を導入しても法の抜け道を利用した節税や本社機能の国外移転が行われ、国力が減退する恐れも大いにある。

また、山本太郎氏は累進課税制度導入で消費税の税収分に相当する十数兆円の増収が見込めると言うが、それはあくまでも法の抜け道を利用した節税を行わず、企業が法定通りに税金を支払った場合の試算であることも留意しなければならない。

それらを鑑みると一概に法人税率の引き上げや累進課税制の導入が功を奏すとは考えにくい。

◇税金のムダ遣いをやめ、減税を

では、このまま消費税を上げるしかないのではないかと思われるかもしれないが、そんな義理は一切ないと言える。

先の法人税のように払える企業が法定通りに税金を払っていないのに、あまねく負担を求められる消費税だけが上げられる理不尽は到底受け入れがたい。

まずは、米国から大量に購入させられている旧式の武器や戦車などを”闇市価格”で買わないことだ。

また、完成しても日本の安全保障上なんの役にも立たない辺野古の新吉建設を中止するだけでも2兆円あまりが捻出できる。

なぜ辺野古の新基地が一切役に立たないかはこれまでにも散々書いてきたので割愛する。

他にも、株式投資などで得た所得に対してかけられる金融所得税(現行一律20%)の引き上げを昨年末に中止したが、消費税は上げるのに、これは上げないというのはあまりにも矛盾している。

政権が金融所得税を上げない理由としては、税率を引き上げることで株への投資が鈍り、政権が好景気を演出するために利用している指標である日経平均株価が下がってしまうからだ。

マスコミがアベノミクスを批判的に書き立てると、現政権支持者は口をそろえて「大卒就職率も過去最高で、株価も2万円台にあるのだから安倍さんはよくやっている」と言う。(大卒就職率が過去最高なのは、少子化の進行に起因する単なる人手不足)

つまり、安倍政権の印象操作は実を結んでいるといえるだろう。

話が冗長になってきたので、ここで消費税の減税に必要な政策を以下にまとめる。

・消費税を下げるために必要な方策
 ①法人税を法定通りに払わない企業への罰則規定を設け、応分負担させ

②金融所得税率の引き上げ
③辺野古新基地建設計画の即時撤回、F35戦闘機(1兆円/機)やポンコツヘ リコプター(オスプレイ)購入を中止
④企業がため込む内部留保の一部活用 
   

◇消費税の今後は

OECDは今年4月、消費税を最大26%まで引き上げるべきとの見解を日本に示した。

これは、法人税の未払いの横行を無視した暴論と言わざるを得ない。

法人税の応分負担が履行され、金融所得税の累進課税化もしくは引き上げを実施し、余剰な防衛費を削減しそれでもなお、社会保障の現状維持が難しいのであれば増税はやむを得ないといえるかもしれないが、持っている者から取らずして、社会保障が維持できないと喧伝するのは戯言にもほどがある。

しかし、これらの事実に目を向けようとせず政府の言うがままに増税やむなしと受け取る私たち国民にも非があると言える。

最後に冷や水を浴びせるようなことを言うが、仮にいま政権が立憲民主党を中心とする野党連合政権に取って代わったところで、増税は凍結できても減税はできないだろう。

その理由は以下の記事に書いた。

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