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作られた分断:第十一部 「民主主義を守るため」ハンストした若者 県民投票不参加の5市、反対派の切り崩しねらう

来月24日に、辺野古新基地建設の是非を問う県民投票が行われる。各種報道でも示されているとおり沖縄県民の大半は、辺野古への移設に反対だ。ただ、県民投票に向けた県内の自治体の動きは非常に鈍い。県民投票に不参加を表明する自治体が出てきたのだ。これまでに県民投票不参加を表明した自治体は沖縄市、うるま市、宜野湾市、石垣市、宮古島市の5市。
この5市が県民投票を実施しなければ、県内の有権者の実に3割が投票できないことになる。有権者から投票する権利を奪うのは、民主主義と参政権の否定である。

県民投票への不参加のおもな理由は、選択肢が「賛成」「反対」の2択のみだからだという。5市は、賛否2択に「どちらとも言えない」「やむを得ない」など選択肢を増やすよう要求している。幅広い民意をすくうためだ。
しかし、あくまでも私見だが、この要求は反対多数という情勢のなかで「どちらとも言えない」「やむを得ない」と「賛成」の色を抑えた選択肢を用意して反対派の切り崩しを狙うものではないかと思う。「どちらとも言えない」は確かに民意の一つではあるが、同時に辺野古の移設問題に真剣に向き合わない、いわば棄権しているに等しい。それに「やむを得ない」とは「賛成」を示すものであり、これでは「賛成」側の選択肢のみを広げることになり、公平に民意を問うているとはいえない。

そんななか、この県民投票の全市実施を要求するハンガーストライキがひとりの若者によって行われた。大学院生の元山仁志郎さんは、県民投票不参加を表明している宜野湾市の市役所前でテントで寝泊まりしながら水だけで過ごした。4日目に血圧が危険な数値まで下がったことからドクターストップがかかり、きょう1月19日にハンストは終了した。

この4日間、心配する支援者などから食料や水などが差し入れられたが、彼は水しか口にしなかった。彼のハンストには多くのいわれなき批判が集まった。「ただのパフォーマンス」、「本当は食べ物を口にしているのではないか」、「倒れても、自業自得なんだから病院には行くな」など見るに堪えないものばかり。40万人以上のフォロワー数を誇る医師の高須克弥氏もTwitterで、元山さんがハンスト中に受けた治療について「保険診療で治療費を請求するのは明らかに違反です。みんなの保険料から支払いをしないでください」と意見した。人の命を救うべき立場にある人間が、患者に対し治療費の全額負担を迫るとは医者としての資質を疑わざるを得ない。



(民主主義を守るための命懸けの行動に対して、これだけの数の的外れな批判が集まる。それが、この国の現実である。)

もっといえば、元山さんのハンストは民主主義を守ることに資する行動であり、意味を持たせることができる。では、なんの行動も起こさず病気にかかったとして、それは社会に貢献しているということになるだろうか。

そもそも、このハンストを批判する人たちは、大きな勘違いをしている。元山さんがハンストしたのは辺野古の埋め立てを中止させるためではない。有権者が辺野古の埋め立てへの賛否を表明する機会を奪うこの5市の方針に反発しているのだ。このなかには当然辺野古埋め立てに賛成する人たちの投票する権利も含まれている。彼は、すべての有権者に与えられた権利を守るためにハンストしたのだから、本来なら沖縄県民すべてが賛同してしかるべきなのだ。それを否定するのは、民主主義を否定しているに等しいことを理解してもらいたい。

ただでさえ、“中央”から民意を押し込められている沖縄県。もはやこれ以上の民主主義の否定は許されまい。

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