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「お金をもらっているので反対できない」地元住民の苦悩|作られた分断#15

沖縄は四方を海に囲まれており、陸路で向かうことはできない。その地理的特性が影響しているのだろうか、デマが流布され、固定化しやすい。

「辺野古の座り込みは県外あるいは国外の人間がほとんどで、彼らは(日本の再軍備化を警戒する)中国や韓国から資金提供を受けている」、「(辺野古移設に反対する)玉城デニー氏が知事になれば、中国が沖縄を占領する」など誰でもデマだとわかるようなことがらが拡散し、固定化される。

辺野古移設に反対する座り込み抗議活動に県外や国外の人たちが多いのは事実だ。座り込みが行われるキャンプシュワブのメインゲート前一帯にしつらえられているテントには、ハングルや英語で書かれたメッセージもみられる。

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しかし、座り込み抗議活動に”日当”が出ているという情報はまったくのデマだ。私は、実際に抗議活動の一部始終を近くで見ていたことがある。もし、日当が出ているとすれば座り込みを主催する団体や代表者が参加する人の数を把握していなければならない。ところが、座り込みの事前説明の際には「参加するかどうかは自由です。ここでお帰りになるのも結構ですし、参加してもらうのも、近くで見てもらうのもすべて自由です」というアナウンスがなされた。座り込みが始まる時点で主催者側は参加人数を特定しようとする気配すらない。さらに、座り込みが終了した後も特段人数を数えるわけでもなく、当然ながらお金を渡す場面もいっさい確認できなかった。

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座り込み前には事前説明が行われる。参加も退出もまったくの自由。(2017年3月6日)


日当デマは、辺野古移設に賛成する人たち、またはどうしても辺野古に移されると困る人たち(政治家)が「座り込みに参加する人たちは、移設に反対しているからではなく金に釣られているだけ」という刷り込みを内外にすることで反対派のイメージダウンをねらったことで生み出されたデマだ。デマというのは、元をたどっていくと一種の希望や願望が入り交じっていることが多い。このデマもその一つであると考えられる。

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国道沿いで行われる座り込み抗議活動。後方には物々しい警察車両が複数待機している。(2017年3月6日)

ところで、キャンプ・シュワブの周辺に住む人たちは辺野古移設についてどう考えているのか。ひとりの男性に話を聞くことができた。男性は県内在住者で、座り込みにも参加している。以下は、そのやりとりの一部。(2019年2月24日)

-きょう、投開票を迎える県民投票ですがやはり情勢通り反対多数となるでしょうか。
「そうでしょうね。これ(移設反対)はもうこの先も変わらないと思います。」

ーキャンプ・シュワブ(辺野古)の周辺に住む地元住民は移設問題をどうとらえているのでしょうか。                                 「そりゃあイヤだと思っていると思います。ほとんどの人たちが。でもね、ここの人たちはみんなお金をもらってるから、表立って反対は言えないんだよ。」

ーということは、座り込みに参加している人たちも地元住民以外がほとんどなんですね。
「そういうことになるね。お金をもらっている以上、腹の中では反対でもそれを口に出すことはできない。だから、われわれ地元以外の沖縄県民やナイチャー(本土)の人たちが駆けつけて座り込みを行っている。」

ー米軍や日本政府から地元住民に出ているお金の金額に差はあるんでしょうか。   
「ありますよ。埋め立てられることで、漁業ができなくなってしまう人たちはたくさんもらってる。かれらは、海上でボートに乗って抗議活動を行う人たちが埋め立て区域内に入ってこないよう自身の船を並べてる。それには日当が出ている。ネット上では『抗議活動をする人たちが日当をもらっている』なんてデマが出回ってるけど、本当に日当をもらってるのはそうやって政府や米軍に協力している人たちの方なの。」
※漁業関係者に日当が出ているという情報についてはすでに裏取りがとれている。

ー多くもらっている人で実際にどれくらいの金額を受け取っているのでしょうか。  
「それはわかりません。私はもらってないから。」

ー辺野古新基地建設には2兆5000億円の工費がかかるといわれています。      
「一部の人たちだけがオイシイ思いをしている話にすぎない。この埋め立て工事を直接請け負っているのは琉球セメントという会社ですが、この会社が受け取っている利益はそんなに多くない。実は、この工事にかかるお金をより多く受け取っているのが、安倍さん(安倍晋三首相)が懇意にしている宇部興産(宇部セメント=山口県)や麻生さん(麻生太郎副総理兼財務相)が代表を務める麻生グループ傘下の麻生セメント(福岡県)です。これらの企業が琉球セメントの親玉として実権を握っている。結局、安倍さんや麻生さんが得するような図式になっている。だから、安倍さんは意地でも辺野古に新基地を完成させたいんですよ。

自分たちに都合の悪い考えや意見をお金で封じ込める。安倍政権は実に狡猾なやり方で民意を封じ込めている。また、今でこそ観光収入が沖縄県の財政を支えているが、本土復帰前にはGHQから地場産業を徹底的に潰され、基地がなければ立ちゆかない状態を作られてしまった苦難の歴史がある。それは、米軍や日本政府にとって本土から離れた沖縄県に基地を置いて基地問題を国民の目から逸らすために行われたことだ

実際にいま、その目論見が結実してみごとに本土の人たちは基地問題に関心を向けていない。それどころか、日本防衛のために沖縄県が過重な基地負担を受け入れるのはやむを得ないことであるという論調が色濃くなってきている。

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