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永田カビさんの『一人交換日記』を読んだ話。

永田カビさんのコミックエッセイ『一人交換日記』を1・2巻まとめて読みました。
デビュー作の『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』はなかなか読めなかったのですが(エロいのかな?と考えてしまって)、これはどんな感じなんだろうという興味の方が先に立ち、手を出しました。

愛されたい、認められたい自分

タイトルの通り、未来の自らに向かって永田さんが語りかけるように描いていく本作。
その中で、永田さんは心の中に押し込めていた気持ちを自覚して行きます。それは、ある意味シンプルなものでした。

愛されたい。
認められたい。
家族に、誰かに。

実家に住みながら漫画家として活動していた永田さんですが、家族(主に御両親)に人格を否定される日々を送っていたのです。
行動を縛られる事も、一人暮らしを許されない事も、それを話した他人に「御両親はあなたが可愛いんだよ」と言われていたから、愛されているのだと思っていた。それが愛だと思っていた。

でも、違いました。
永田さんが苦労して形にした本を読んだお父様からの言葉は「調子に乗るんじゃない」というようなものだったのです。
10年間鬱病で苦しんでいる永田さんに向かって、簡単に「(こんな状態じゃ)俺が鬱病になってしまう」と禁句を吐いてしまう親。それが愛だとは到底思えないでしょう。

この父娘の描写は心に突き刺さりました。
ああああうちの親父そっくりだ、もう死んでるけど……。もっと嫌味だったけど……。

それでも私だって親父に認められたかったけど……。

少しずつ歩み寄る家族達

2巻では、永田さんが2冊の本を出版した後の良くも悪くも変わって行く日々が描かれています。
「友達」との触れ合い。家族や親類との関係の見直し。そして、どうしても「表現」をやめられない自分との向かい合い。

悩みの中でお酒に頼るようになった永田さんは、入院することになります。その間に実感したのは、寂しさ。両親に会いたい、甘えたいという感情。

永田さんがそういう想いと向き合ったからなのか、両親との関係も少しずつ改善して行きます。特にお母様との関係が。
始めのうちは全ての依存対象がお母様だった永田さんでしたが、「お母さんは私とは別の人間なんだ」と思い始めます。性格も、物事の感じ方も違う。
そんなの当たり前だと思われるかも知れませんが、生まれた瞬間から一緒にいる人ですから意外と気付くのが難しいところもあるのでしょう。

お酒もあまり飲まなくなり、永田さんは変わらず漫画を描いて暮らしています。愛され愛して、認められ認め、そして表現をしながら生きていく。それが永田さんなのです。

自分との対話

おそらくお酒を飲んでいた頃のお話なのでしょうが、『一人交換日記』の後に永田さんは『現実逃避してたらボロボロになった話』を出版しています。それも読んでみようと思い、ネットで注文してしまいました。

このコミックエッセイの連載が始まったきっかけは、永田さんが中学生時代に一人で交換日記をしていたというエピソードだそうです。
『アンネの日記』を書いたアンネ・フランクが架空の友人に宛てた手紙のような日記を書いたように、寂しさを癒すと共に自らを客観視し向かい合うための方法として、一人交換日記というものも良いのではないかと感じました。

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