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相変わらず「好き」という感情についてあれこれ考える。

かなり前に恋愛がピンとこなくて悩んだ話を書いたのですが、この記事が意外にも多くの方に読んでいただけて(当社比)、反応を貰えているということは、似たような経験がある方も案外いるのかもしれないなと少し嬉しくなりました。

この記事を書いてから約3年が経ち、自分を取り巻く環境やセクシャリティに対する考え方もかなり変化したので、あらためて今の自分の中にある「好き」という気持ちについての考えを書き残したいと思います。

※書いている本人も具体的な描写を文章化することに抵抗を感じる為、この記事ではいわゆる恋人らしい行為をすべてひっくるめて「接触」と表現しています。それ以上の言及はしておりませんが、苦手な方はご注意ください。


この話をするにあたってまず挙げる必要があるのが、パートナーの存在です。私にはシスヘテロ男性のパートナーが居ます、パートナーとの出会いや交際に至った経緯は以前、書いたことがあるのでよければそちらをご参照ください。

過去の記事の紹介ばかりしていて恐縮ですが、ここからが本題です。
現在もパートナーとの交際は続いており、私の中でパートナーは着実に大切な人になっているのですが、正直、世の中でいうところの「(恋愛的に)好きな人」かと言われると、しっくりきません。
もちろんパートナーの人間性がとても好きで、面白いと思う部分もたくさんありますし、人として尊敬していますが、それはパートナーだけではなく、今も交流が続いている友達とも変わらないよなというのが本音です。
では交際というのは何のためにするのか、友達とは何が違うのかということが気になり常々考えているのですが、多くの人は恋愛と性愛が伴っているので、これらを満たすただ1人の相手が恋人なのではないかと考えました。
ではそのどちらも持っていない自分にとって恋人とは何なのか考えてみると、「パートナーがたまたまロマセクだっただけ」にすぎないという結論に至りました。
おおげさに前振りしておきながら、大したことない結論で拍子抜けさせてしまったらすみません。(と言いつつ私自身が一番拍子抜けしました。)
そもそも私の中に「この人と付き合いたい」という感情や願望というものが誰に対しても存在していないため、これまで誰とも交際に発展しなかったのですが、パートナーから交際を申し込まれ、それを私が承諾したことで今の状況が発生しただけ、ということにすぎないということに着地しました。おそらく今のパートナーとの交際が終わりを迎えたら、自分から誰かと付き合おうと行動することも無いと思います。(同じアロマ・アセクの方で友達やパートナー探しなどをする可能性はあるかもしれませんが)

いざ交際を始めてみても、パートナーとのセクシャリティの違いからくる感覚のズレを痛感する瞬間は多々あります。その度によくアロマ・アセクの私とパートナーが交際を何年も続けられているなと、不思議な気持になります。特に私は同性でも不用意に触れられるのが苦手なので、この性質を持っている限り、ロマセクのパートナーの交際相手は務まらないのではないかと考えていましたし、今もその懸念はあります。
パートナーからすると好きだから手を繋いだり、ハグをしたり物理的にも近い距離にいたいと自然に思うそうですが、残念ながら私の中にパートナーと同じ温度の気持ちは無い、ということだけをはっきりと自覚した私は、しばらく接触すること自体に難色を示していました。(今思い返すと交際相手との接触の必要性に、自分の中で納得がいっていなかったのだと思います。)
そのような状態が続いている間、幸いなことに(パートナーにとっては幸いでは無いと思いますが)パートナーは強行突破で接触を試みようとはしませんでした。しかし、このまま接触がない状態が続くと、私の心は平穏でいられますが、あらためて考えてみるとパートナーの心は同じように平穏なのだろうかという疑問を持ちました。
パートナーが私と同じアロマ・アセクであれば問題は無いのですが、パートナーはロマセクです。一時的に接触をしない状態を作ることはできても、パートナー次第でその状況は簡単に変わってしまいますし、なにより長期的に見て精神的なパートナーへの負担が大きい状態がずっと続くことが確定してしまうことに気がつきました。
私は交際するならお互いが対等で健全なパートナーシップを築きたいと考えていたのですが、今の状態はどう考えても対等では無く、このままでは長期的な関係は望めないと感じました。
私自身はパートナーの人間性が好きで、一緒に過ごす時間が楽しく、これからもそれがなるべく長く続いてほしいという思いがあったので、交際を続けていくためには接触を克服する必要があると考えました。(克服すること自体が可能か不可能なのかもわからない状態だったので、それを試してみようという心境です。最悪の場合、不可能の方だったらパートナーに謝ってお別れしようという思いで覚悟をきめました。)
私の場合は過去にトラウマになるような出来事があったわけではなく、単に他人に触れられるのが苦手だったので、あらためてなぜ苦手なのかということに向き合ってみることにしました。
「苦手」という感情には少なからず経験不足や知識不足も含まれているのではないかと考え、まずは正しい知識を得るための情報収集と手を繋ぐなどの軽い接触を実践することから始めました。
情報収集を行っているうちにたどり着いたのが、YouTubeで性教育についてのコンテンツを発信している、シオリーヌこと大貫詩織さんのチャンネルでした。シオリーヌさんの動画では、誰も教えてくれないのに曖昧になっている大切なことが、丁寧かつわかりやすく説明されているのでとても見やすく、たくさんお世話になりました。
特に性的同意のことやリプロダクティブ・ヘルス・ライツやルッキズムなど、自分と他人を大切にするうえでの基本的な考え方があるということを知り、非常に安心しました。特に接触をしたい・したくないという思いはどのセクシャリティの人でも、その時々でグラデーションになっていて、毎回自分の意思を大切にしていいと言ってもらえてホッとしました。
中高生向けに書かれたシオリーヌさんの書籍「CHOICE」は、私が中高生の頃にこの本に出会っていれば、あの苦しみやモヤモヤも少しは軽くなったかもしれないのに…!!と非常に思いました。
特に性的なことへの興味関心の度合いには個人差があって、興味があっても無くてもどちらもおかしくない、と明言されている箇所で思わず涙腺が緩みました。恋愛至上主義のこの世の中で、ちゃんとアロマ・アセクも存在していることになっていて、それだけでこんなに嬉しいのかと驚きつつ、日々、知らない間に傷ついていることも多々あったのだなと感じました。

年齢や性別を問わず性に関する正しい知識を得たいという方にはうってつけなので、シオリーヌさんのHPの書籍リンクを貼っておきます↓
(CHOICEは一番うえに出てくる本です。)

この本を読んであまりにも感動した私は、自分が理想とするパートナーシップを築くためには、この本の内容を共有していないと難しいのではないかと考え、パートナーにも読んで欲しいと貸しました。
パートナーは普段本を読まない人なので、断られるかもしれないし、なにより面倒な奴だなと思われないかという不安もありつつ、勇気を出して言ってみたところ「読むのが遅いから時間がかかると思うけど読んでみる」と前向きな返答が返ってきました。
無事、諸々足りていなかった知識を補完した後、ことあるごとにパートナーとコミュニケーションをとり、お互いの考えを共有し、現在も模索を続けている状態です。接触自体は慣れたらある程度は応えられる(※あくまで私の場合です)ということも新しい発見でした。
私はこれまでアロマ・アセクを自認していましたが、ここまで書いてきたことを加味すると、デミロマ・デミセク寄りの可能性が浮上してきました。間違いなくパートナーとは信頼関係が築けているから、接触にも応えられますし、交際を続けられています。また私自身の交際相手はパートナー1人だけですし、パートナーが他の人に対して恋愛感情等を向けることがあれば、嫉妬もするでしょうし、その人と付き合ってくださいと身を引くと思うので、パートナーという存在に案外、愛着があると思います。しかし自分から積極的に接触を持ちたいとパートナーを見て思うかと問われると、いや、そんなこと思ったことないな~。というのが本音です。
なので今はまだデミロマ・デミセクよりのアロマ・アセクと自分でカテゴライズするのがしっくりくる状態ですし、今後どのように変化していくのかが興味深いです。

また、周囲の人々にパートナーについて話す機会も時々あるのですが、私のセクシャリティについては周囲にカミングアウトしておらず、はたから見れば男女のカップルということになるので、当然のように「彼氏持ち」という風にカテゴライズされて話が進んでしまうことに、少し息苦しさも感じています。(話していくうちに、他の人との感覚のズレを感じることもしばしば)
一方で交際相手が居ることで「なぜ恋愛しないのか」系の話や、「いい人と出会えるといいね」的な言葉を聞く機会が格段に減るので、少し驚きつつもその点は非常に楽だなぁと感じました。やはりあの話は自分にとってストレッサーだったようです。

今回私は、たまたま出会ったパートナーがロマセクで、パートナーとの交際を続けたいという思いがあったので、接触に向き合ってみました。しかしトラウマ等の有無に関わらず、接触に対して抵抗感がある方にとってはこのような方法は試してみること自体に高いハードルがあると考えられるので、ロマセクの方とアロマ・アセクのマッチングにそもそも無理があるなというのが正直な感想です。私自身、接触については正直無い方が快適に生きられる(諸々のリスクを考えると対処が面倒の意)というのが本音で、パートナーが接触は不要という考えであれば全く無しの状態で交際していただろうなと思います。

長々と私が考えたことを書いてみましたが、実態はどうであれ初めてまともに交際というものをしてみたことで発見したことは、交際といえどもパートナーとの1対1の人間関係を築くことにすぎないのだなということです。「恋人同士なんだから普通はこうする」とか「好きな人だからなんでも許す」などの一般論は関係無く、私自身がどれだけパートナーを信頼して、パートナーからも信頼を得られるかにつきるなというのが今の考えです。
また、この文章を読んでいる方のセクシャリティがどのようなものかはわかりませんが、接触に関してはどのようなセクシャリティであっても「同意」が必要ですし、そこをクリアにするためには普段からパートナー間でどれだけスムーズに意思疎通が出来ているかが重要になると感じます。
私自身もパートナーとの信頼が揺らいでしまうようなことがあれば、この関係は終わると思いますし、いつかそういう瞬間が訪れてしまう可能性もゼロではないということを心に刻んで、これからも良好なパートナーシップを築けるよう努力を続けたいと思います。


今の思いを文章化したら思いのほか長くなりましたが、これからも考えは常に変化していくと思うので、定期的に文章化したいと思います。