傍聴記録12 とある通信制高校の大麻事情


※プライバシー保護の観点から固有名詞や住所などはすべて変更しております。

前橋地裁
2017年4月20日(木) 8F 803号法廷 13:10-14:00
宮崎祐光
平成29年(わ)第xxx号 大麻取締法違反 新件
裁判官:鳥海正隆 書記官:石野加代 検察官:宮部礼奈 弁護人:中澤正二


裁判官「それでは開廷します。では被告人は証言台の前に立って、こちらを向いて立ってください。まず名前などの確認をします。お名前を言ってください。」
被告人「宮崎祐光です。」
裁判官「生年月日はいつですか?」
被告人「平成7年3月9日です。」
裁判官「住所はどこですか?」
被告人「東京都足立区瀬崎2-580-2。」
裁判官「本籍は言えますか?」
被告人「東京都足立区瀬崎までは覚えていますけど、それ以降は覚えていません。」
裁判官「5丁目478番地に覚えはあります?」
被告人「はい。」
裁判官「仕事は何ですか?」
被告人「運転手です。」

裁判官「はい。あなたに対しては、今年の4月7日付けで、大麻取締法違反での起訴がありましたので、今日はその件について審理をしていきます。」
被告人「はい。」
裁判官「まずは検察官が、あなたに送ってある起訴状に書いてある控訴事実というのを読み上げるので、そこでよく聞いていてください。では検察官お願いします。」

検察官「はい。公訴事実。被告人は、みだりに平成29年3月21日、東京都足立区瀬崎2-580-2、被告人方において、大麻である乾燥植物片約0.452グラムを所持したものである。罪名および罰条、大麻取締法違反、同法24条の2第1項。以上です。」

裁判官「はい。では、これから、検察官が読み上げた事実について、審理をしていきます。今あなたは被告人といって、まあ、裁判で訴えられている立場ですので、まず審理を始めるにあたって、被告人の権利を説明しておきます。被告人には黙秘権といって、まあ要は、言いたくないことは、言わなくて良い、そういう権利があります。この後の審理の中で、質問をされることがありますけれども、その質問全てに対して、黙って、答えないでいるということも出来ますし、一部の質問には答えて、一部の質問には答えないということも出来ます。もちろん全部答えることも出来ます。質問に答えないということをもって、裁判で不利益に取り扱われるということはありません。ただし、喋った内容については、あなたの有利にも不利にも、裁判の証拠として使われる可能性があるので、まあ、話す時は、そのことをわかったうえで話すようにしてください。」

被告人「はい。」

裁判官「ではね、さっそく最初の質問をしますけれども、検察官が読み上げた、3月21日に、家で大麻を持っていたという事実ですが、その通り間違いないのか、どこか違うところがあるのか、何か言いたいことはありますか?」

被告人「間違いありません。」
裁判官「その通り間違いないと。この件で有罪ということで、処罰を受けても構わないと。まあ、そういうことですかね?」
被告人「はい。」

裁判官「弁護人のご意見いかがですか?」
弁護人「はい。被告人と同意見です。」

裁判官「はい。では、この件については、検察官から、即決裁判手続きの申し立てがあり、まあ、その要件も満たしているということがわかりましたので、本件については即決裁判の手続きを適用して、まあ、簡易な手続きで行うということにします。ではこれから証拠を調べる手続きをするので、被告人は元に座っていたところに戻って、座っていてください。本件の事案概要等については、検察官が今提出の弁論に書いてある通り、まあ、身上や犯行状況等については、この通りということですかね?」
検察官「はい。」

裁判官「証拠等関係カード記載の証拠が甲1号証から甲7号証を請求されると。弁護人は、この証拠の取り調べに異議はありませんか?」
弁護人「はい。ありません。」

裁判官「では、この内容について検察官、告知するものがあればお願いします。」

検察官「ブツである大麻を被告人に示します。これ、あなたの自宅から押収されたもので間違いないですか?」
被告人「はい。」
検察官「この中身の大麻は、全てあなたの物ですか?」
被告人「はい。」
検察官「これ今後必要ですか?」
被告人「いや、いらないです。」
検察官「はい。以上です。」

裁判官「じゃあ、被告人は、元いた席に戻ってください。続いて弁護側の立証として、お父さんの尋問を少々したいということですかね?」

弁護人「はい。」

裁判官「検察官も異議ないですかね?」
検察官「はい。問題ありません。」

裁判官「はい。お父さんは証言台の所まで来てください。では、この事件についての証人として、お話を伺います。まずお名前等を確認しますね。お名前をおっしゃってください。」

証人「宮崎隆太です。」
裁判官「生年月日、お仕事、住所については、先程書いていただいたカードのとおり、ということでよろしいですか?」
証人「はい。」
裁判官「では、証言に先立って宣誓をしてもらいますので、その紙をですね、声に出して読んでください。」
証人「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。宮崎隆太。」

裁判官「はい。ありがとうございます。今約束していただいたことの意味ですけれども、これから色々と質問をされますけども、質問されたことに対しては、記憶のまま、そのままお答えてなっていただく。とそういう趣旨です。もし記憶と違うことを述べますと偽証罪という事で、証人自身が処罰される恐れがありますので、気をつけて話してください。」
証人「はい。」

裁判官「はい。では、そこにお座りください。では質問はまず弁護士の先生からあります。必要があれば検察官、裁判官からも質問をします。では弁護人お願いします。」

弁護人「はい。では、弁護人から聞いていきます。横から質問をしますけれども、前の裁判官の方を向いて答えてください。」
証人「はい。」
弁護人「あなたは、被告人と、被告人のお兄さんと、奥様と4人で暮らしているんですよね?」
証人「はい。」
弁護人「今回その3月21日の、この事件の日に、家に警察官が来て、被告人が大麻を持っていたということが、事件になったということがわかったんですよね?」
証人「はい。」
弁護人「その日よりも前に、被告人が大麻を持っているのを見たとか、そういうのを聞いたことはありましたか?」
証人「見たことはありませんし、聞いたこともありません。」
弁護人「被告人が大麻を持っていることを知って、どういうふうに思いましたか?」
証人「そうですね。まあ、おったまげたというか、まさかと思いました。」
弁護人「逮捕されて警察署にいる時に、面会には行かれましたか?」
証人「はい。1回行きました。」
弁護人「他のご家族の方も行かれましたか?」
証人「はい。家内も1回行っております。」
弁護人「面会の時の被告人の様子は、まあ、奥様から聞いたのも含めて、どういうような様子でしたか?」
証人「家族に迷惑かけて、そういう本人は口には出さないんですけど、その、表情とか、言い回しから感じ取れて、非常に反省しているな。ということは、親としては思いました。はい。」
弁護人「この後、本人が社会に戻った時は、一緒に暮らしていく予定ですか?」
証人「はい。そのつもりです。」
弁護人「もう2度とね、被告人がこういうことをしないようにしなきゃいけないとは思っていますよね?」

証人「はい。もっとよく息子に関心を持ってですね、一緒に暮らしていて、一緒に出かけたり、一緒に食事をしたりもしていたんですけれども、まあ、それでも、そういう、まあ、普段の生活と全然変わらない状況であったので、まさか大麻を持っていたということは、夢にも思わなかったですね。親としてもっと注意深く見てあげないといけないなと。それで、色々悩み事があったりしたら、よく聞いてあげたりしなければいけないなと。そういうニュースとかで色々大麻の話題とかも出ますけども、そういうことも、そういう話はよくして、そういうことを家族で話し合っていかなくてはいけないなと思っています。」

弁護人「まあ、色々とコミュニケーションを取って、監督をしていただけるといことですかね?」
証人「はい。」
弁護人「それから被告人の仕事は、お母様の仕事の関係で、仕事をしているということですかね?」
証人「そうですね。母親の知り合いの紹介で、運転手の仕事ですね、をしております。」
弁護人「今彼は拘束をされていて、仕事の方については、どのように聞いていますか?」

証人「仕事についてはですね、正直には言っていなくて、ちょっと体調を崩して仕事に出れないというふうに話しておきまして、2週間くらいした後に、休職か退職か、どちらか選んでくださいと、このまま保留には出来ませんと、会社の手続き上ですね。まあ、そう言われまして、休職なら診断書を出さないといけないということで、退職の方の手続きを母親が書いてまいりました。ただ、職場の人が、非常に祐光のことを、とてもよくやっていると思ってくれているみたいで、また元気になったら顔を出してくださいと。まあ、話のニュアンスから、また職場復帰も可能かなと思いましたので、本人が誠意を持って、職場の人に話をすれば、復帰も可能ではないかというふうに思っています。」

弁護人「お父さんや家族としては、本人は仕事に復帰して、家族でサポートしながら、もう2度と犯罪に関わることがないようにしていくということですかね?」

証人「そうですね。2度とそういうことをしないようにして、社会人として頑張ってほしいと思います。本人もあの、去年成人式を迎えて、その後免許も取って、働きながら通信制の高校に通っていたんですけれども、やっと、働きながらで大変だったと思うんですけれども、やっと3月に高校を卒業することが出来まして、簿記の勉強もしていたので、2月に簿記3級の資格を取って、本当に真面目に立派な社会人になったなあと思って、私も母親も、とても安心していたので、まあ、逆にこういうことになって、ちょっと面食らったんですけれども、2度とこういうことがないように、頑張れると思いますので、息子を信用して、また、親としてサポートしていきたいと思っています。」

弁護人「最後に1点、まあ、そういう風になることを信じているんですけれども、もし万が一ね、また何か罪を犯すとか、そういうことがあったら、今度はどうします?」

証人「そうですね。やっぱり悪いことは悪いとハッキリ言って、大麻っていうのは、色んな本で読んだりすると、再犯というか、中毒になってしまうと大変なので、そういうことがないようにしたいと思いますし、母親も、つい先日、大麻の色んな説明をしたセミナーというかシンポジウムみたいなのに参加して、色々と勉強してきましたので、家族で本当に協力して、2度とそういうことのないようにしていきたいと思っています。」
弁護人「弁護人からは以上です。」

裁判官「はい。検察官いかがですか?」

検察官「ございません。」

裁判官「息子さんは15歳の時に、傷害で児童相談所に送致されているみたいなんですけども、その後は、事件を起こしたとかは裁判所の記録には書いていないんですけれども、この後は問題なく、高校も働きながら卒業されたんですよね?」
証人「はい。」

裁判官「まあ、お話を聞いていると、ちゃんと仕事に就いて、ちゃんと真面目にやっているような様子で、あまりそういうことに関係しているとは気づかなかったんですかね?」
証人「そうですね。もう、その、中学校時代に比べれば変わったなと。色々と仕事も経験して、人の気持ちもわかるようになったので、安心して見ていたんですけども、ちょっと、まあ、あの、安心し過ぎたなと思っています。はい。」

裁判官「わかりました。では終わりましたので、元に戻っていただいて大丈夫です。では続いて被告人質問を行います。被告人は証言台の前の椅子に座ってください。」

被告人「はい。」

裁判官「じゃあ、同じような流れで、今度は、あなたから話を聞きますね。では弁護人からお願いします。」

弁護人「はい。では弁護人から聞いていきます。横から質問をしますけれども、前の裁判官の方を向いて答えてください。」
被告人「はい。」
弁護人「今年の3月21日に、自宅で大麻を持っていたことは、間違いないですね?」
被告人「はい。」
弁護人「これは、何の為に持っていたんですか?」
被告人「自分で使う為です。」
弁護人「使ったことはあるんですか?」
被告人「はい。あります。」
弁護人「今まで何回位使ったことがありますか?」
被告人「4回か5回位です。」
弁護人「大麻はどうやって入手したんですか?」
被告人「密売人から買いました。」
弁護人「密売人とは、どうやって連絡を取ったんですか?」
被告人「携帯電話で、売人とやり取りをしました。」
弁護人「どうやって密売人の連絡先を知ったんですか?」
被告人「友人から聞きました。」
弁護人「友人からどうして密売人の連絡先を聞いたんですか?」
被告人「その前に、別の密売人から買っていたのですが、その密売人が連絡取れなくなってしまったからです。」
弁護人「一番最初に大麻を入手したのは、いつ頃ですか?」
被告人「今年の初め頃です。」

弁護人「今年の初めに、どうして大麻を入手することになったんですか?」
被告人「今年の3月まで通信制の高校に在学していたんですが、今年の始め頃、その学校で体育の授業があった時に、同じ学校の男子生徒から、大麻が買えるという密売人の連絡先を聞いたことがきっかけです。」

弁護人「その同級生から密売人の連絡先を聞いて、自分で連絡を取ったんですか?」
被告人「はい。」
弁護人「どうして自分で連絡取ったんですか?」
被告人「興味本位です。」
弁護人「どういう興味があったんですか?」
被告人「実際に、そこから本当に買えるのかというのが、半信半疑ではあったんですけれども、まあ、大麻がどういったものなのかということに興味がありました。」

弁護人「大麻を持つことが違法だということは知っていましたか?」
被告人「はい。」
弁護人「その違法なものに、どうして興味を持ってしまったんですか?」
被告人「今思うと浅はかだとしか言えないんですが、その時は、こんなことになるなんて思ってもいなかったので、そこまで深く考えていませんでした。」
弁護人「実際に大麻を使用してみてどうでしたか?」
被告人「酒に酔ったような感覚になりました。」
弁護人「それは、あなたにとっては、よかったということですか?」
被告人「はい。」
弁護人「それで、4、5回使用したということですかね?」
被告人「はい。」
弁護人「まあ、依存性というかね、そういうものは、自分で感じたりしていますか?」
被告人「そこまで感じませんでした。」
弁護人「大麻に害悪があるというのは聞いていますか?」
被告人「依存性があって中毒になるっていう話は、多少なり聞いたことはあります。」
弁護人「そういうふうになりたいと思いますか?」
被告人「いいえ、思いません。」
弁護人「今後大麻との関わりはどうしようと思っていますか?」
被告人「密売人等との連絡を一切断って、連絡先を消すのと、必要とあれば、携帯の電話番号を変えるとかして、連絡を絶とうと思います。」
弁護人「大麻自体とも関わりを断つということでいいですか?」
被告人「はい。」
弁護人「そういうふうに思うになったのは、何故ですか?」
被告人「やはり、逮捕されたことによって、自分のしたことの重大さに気づきました。」
弁護人「どういう点に気づきましたか?」
被告人「まあ、法律に禁止されている物を使って逮捕されて、会社や家族に迷惑をかけて、自分も拘束された状態で約1ヶ月生活して、とにかく周りに迷惑をかけてしまうというのが、一番大きな点かなと思います。」
弁護人「自分が身体拘束されて捕まっている生活というのは、どうでしたか?」
被告人「とても辛かったです。」
弁護人「それから、仕事は運転手として仕事をしていたようですけれども、この仕事はどうでしたか?楽しかったですか?」
被告人「やりがいはありました。」
弁護人「先ほどお父さんが言ってくれたように、退職ということに一旦なっていますけれども、退職したかったですか?」
被告人「いえ、そうは思いません。」
弁護人「自分でまた会社に行ったら戻れるかもしれないということだけれども、戻れるなら戻りたいですか?」
被告人「はい。」
弁護人「家族にも色々と迷惑をかけたと思っていますか?」
被告人「はい。」
弁護人「法律に反することをすると、どういう風になるかということは、よくわかりましたか?」
被告人「はい。身に染みてよくわかりました。」
弁護人「今後ね、人生として、どういう風にしていきたいと思いますか?」
被告人「犯罪だったり違法なものに関わらず、真っ当に仕事をして、社会に迷惑をかけないようにして生きていきたいです。」
弁護人「その為には、どういうことをしていかないといけない?」
被告人「そういった要素のある友人との関係を絶つことです。」
弁護人「また興味本位で違法なものとかに近づくということはないですか?」
被告人「はい。」
弁護人「仕事をして、全うな社会人として、頑張っていきたいということですよね?」
被告人「はい。」
弁護人「それから、その15歳の時の傷害の前歴というのは、これはどういう内容の傷害だったんですか? どういう関係の人と傷害になったんですか?」
被告人「中学校の同級生です。」
弁護人「ケンカになったんですか?」
被告人「そうです。」
弁護人「それから、また今後、家族で家に戻って生活していく予定ですか?」
被告人「はい。」
弁護人「まあ、お父さんも受け入れると言ってくれていましたけれども、お父さんとか、家族のサポートをしっかり受け止めて頑張れますか?」
被告人「はい。」
弁護人「お父さんの先ほどの話をどういうふうな気持ちで聞いていましたか?」
被告人「普通に生活していたらまず裁判所に来ること自体がないと思うので、自分の為に、わざわざ来てもらって、申し訳ないという気持ちとありがたい気持ちです。」
弁護人「仕事も頑張って、高校も卒業して、真面目に頑張っている姿を見て。お父さん嬉しく思ってたって言っていましたよね?」
被告人「はい。」
弁護人「それを裏切ってしまったということは、わかっていますね?」
被告人「はい。申し訳なく思っています。」
弁護人「もう、そういうことはしないですね?」
被告人「はい。」
弁護人「弁護人からは以上です。」

裁判官「はい。検察官は何かありますか?」

検察官「少しだけ。友達から最初に密売人の連絡先を聞いたということなんですけども、その友達と何で大麻の話題になったんですか?」

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