傍聴記録3 妊娠している女性の夫になる男の覚せい剤裁判


今回の内容は、被告人質問、論告弁論、判決は主文のみです。

※プライバシー保護の観点から固有名詞や住所などはすべて変更しております。
2016年6月16日(木)
被告人氏名:村上正和 
平成28年(わ)第xxxx号
11:00-12:00 xxx号法廷 
覚せい剤取締法違反 新件
裁判官:小林健吾 書記:佐伯大貴 
検察官:栗田昌也 弁護人:須和幸男

裁判官「それではよろしいですかね?それでは開廷いたします。では被告人は証言台の前に立ってください。はじめに名前などを改めて確認をします。お名前はなんと言いますか?」

被告人「村上正和といいます。」
裁判官
「生年月日はいつですか?」
被告人「1963年8月23日です。」
裁判官「本籍はどこですか?」
被告人「東京都中野区新井6-7-53 新井ハイツA-201」
裁判官「住所はどこですか?」
被告人「東京都中野区新井6-7-53 新井ハイツA-201」
裁判官「現在の職業は何かついていますか?」
被告人「無職です。」

裁判官「それではあなたに対して今年の7月11日の事件が起訴されまたので、この事件についての審理を行います。まず検察官が起訴状を読んでもらいますから、そこで聞いていてください。では検察官どうぞ。」

検察官「はい。公訴事実。被告人は法廷の除外事由がないのに、平成28年4月下旬頃から同年5月9日までの間に、東京都内または、その周辺において覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン、またはその塩類若干量を自己の身体に摂取し、もって覚せい剤を使用したものである。罪名および罰条、覚せい剤取締法違反、同法第41条の3第1項1号19条。以上です。」

裁判官「これから、この事件についての審理を行いますが、審理に先立って被告人に伝えておくことが2つあります。まず1つ目、被告人には黙秘権という権利があります。黙秘権。要は黙っているという意味です。ですから、これからわたし裁判官や検察官、弁護人が、それぞれあなたに対して質問しますが、その際に、答えたくなければ、特定の質問についてのみ回答を拒んでも、あるいは終始沈黙していても、差し支えはありません。答えなかったという言いたくないことを無理に話したりする必要はありません。答えなかったという理由で話しをしないという、そのことだけで不利益に扱われることはありません。それは私から伝えておきます。それと2点目ですが、そのような質問の時に、あなたのほうから、この法廷で話しをする機会も、もちろん何度かあります。ただ、あなたがこの法廷で述べたことはね、あなたにとって有利になるか不利になるかは関係なく、この裁判の証拠となることがありますので、その点は十分注意をして話しをするようにしてください。よろしいですね?」

被告人「はい。」

裁判官「じゃあ以上の2点を気をつけてもらったうえで、まずは、いま検察官が読み上げた事実について、何か間違い、あるいは訂正など、言っておきたいことはありますか?」

被告人「間違いありません。」
裁判官「弁護人ご意見をお願いします。」
弁護人「被告人と同様で争いはありません。」

裁判官「被告人は、一旦元の席に、弁護人の前のベンチのほうに座ってください。では証拠調べ手続きに入ります。検察官は冒頭陳述と証拠の請求をしてください。」

検察官「検察官が証拠により証明しようとする事実について述べます。まず身上経歴等ですが、被告人は高等学校を中退後、職を転々とし、本件犯行当時は無職でした。離婚歴がございます。前科は同種前科5犯を含む前科13犯を有します。犯行に至る経緯および犯行状況等ですが、被告人は平成元年から平成17年までのあいだに、5回覚せい剤取締法違反で有罪判決を受け、いずれも服役しています。犯行状況は公訴事実に記載したとおりです。被告人は平成28年5月9日に警察官に尿を任意提出したことから、本件犯行が発覚しました。第3にその他情状等です。以上の事実を立証するため、証拠等、関係カード記載の各証拠の取り調べの請求をいたします。」

裁判官「ただいま請求がありました甲号証が5号証まで、乙号証が13号証までについて弁護人ご意見をうかがいます」
弁護人「はい。甲乙いずれも同意いたします。」
裁判官「まずは甲号証は全て採用して取り調べます。乙号証ですが、調べても差し支えないですか?」
弁護人「はい。」
裁判官「被告人の検察官、これらの証拠について要旨を告げてください。」
弁護人「ちょっといいですか?被告人の証拠等関係カードなんですけど、被告人の「和」という字が間違っているんですが。」
裁判官「訂正のほうお願いします。それでは検察官お願いします。」

検察官「はい。甲1号証ですけども、こちらは採尿の経緯に関する報告書でございます。平成28年5月9日に、被疑者の関係者に対する安否確認の通報があり、警察官が現場臨場し、関係者から事情聴取したところ、同所に居合わせた被疑者、被告人に覚せい剤使用が認められました。被告人が「どうせ警察署に行って小便採るんでしょ?今から行きましょうか?」などと申し出たことから、警察署に任意同行し、任意採尿をおこなったことが明らかになっています。甲2号証は被告人の尿の領置調書。甲3号証は鑑定嘱託書、甲4号証は鑑定書でありまして、これらによって被告人の尿から覚せい剤成分が検出されたことが明らかになっています。甲5号証は被告人の腕などを写真で明らかにする写真撮影報告書でありまして、左前腕の内側に注射痕が認められることが明らかにされております。乙号証ですが、乙1号証は、被告人の身上経歴に関する供述調書です。5号証は被告人の戸籍、6号証は前歴を明らかにするもの。7号証は前科調書で8号証から13号証までは、いずれも前科の内容について明らかにしたものです。以上です。」

裁判官「はい。証拠を提出していただきます。弁護人の立証方針も、お伺いします。」
弁護人「書証3通と被告人質問を行います。」
裁判官「書証について、検察官の意見をお伺いします。」
検察官「いずれも同意します。」
裁判官「それではいずれも採用します。弁護人はその要旨を告げてもらえますか?」
弁護人「弁第1号証ですが、被告人の作成の反省文になります。内容としましては、覚せい剤を使用してしまい申し訳ありません。もう2度と覚せい剤には手を出しません。現在は耳塚絵里子の身体が心配です。真面目に仕事をして彼女と子供と暮らしていきたいと思います。もう2度と犯罪はいたしません。というむねが記載されています。2号証は、被告人の甥による身元引受書でありまして、内容としましては、私が責任をもって身元を引き受けます。違法薬物に今後手を出さないよう日常生活においても、厳重に注意監督していくことを誓約します。などと記載されております。3号証は、被告人の職関係を業とする、有限会社 北別府工業の代表者の陳述書でありまして、内容としましては、被告人は仕事に熱心で真面目な性格です。社会に復帰したら、弊社と雇用契約を締結して、私のもとで働いてもらいたいと思っています。今後少なくても弊社での仕事中においては、違法薬物や犯罪に関与しないよう、私が指導監督していくことを誓約します。などと記載されております。」

裁判官「それでは証拠を提出してください。このあとは被告人質問ということになりますかね?それでは被告人、証言台の前で、今度は椅子を引いて座ってください。それでは、あなたに対して、まずは弁護人から、そのあと検察官、必要であれば、わたくし裁判官からもお聞きします。あなたには黙秘権があるから、答えたくなければ黙っていてもかまいませんが、答える時は大きな声ではっきりと答えてください。それでは弁護人から質問どうぞ。」

弁護人「弁護人から質問します。さきほど提出した反省文ですけど、あなたが書いたもので間違いないですか?」
被告人「はい。間違いありません。」
弁護人「前回の覚せい剤取締法違反の裁判のあと、いつから再び覚せい剤を使用するようになったんですか?」
被告人「11年振りだから、今年の4月あたり。」
弁護人「そこで再開するまで、覚せい剤は使用しなかったということでいいんですか?」
被告人「はい。」
弁護人「なぜ再び覚せい剤を使ってしまったんですか?」
被告人「仕事に嫌気がさしてて、仕事をしてもお金にならないという嫌気があったので、それを埋めるために使用しました。」
弁護人「仕事に対する不満とかストレス、あるいは疲れ、そういったところですか?」
被告人「はい。」
弁護人「今回の覚せい剤はどこで入手したんですか?」

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