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ブックメモ 夜と霧

アウシュビッツへの旅行が決まり、有名な日本人ガイドの中谷さんに何か参考図書のおすすめはありますか?と聞いたところこの本を勧められたので読んでみることに。

相当読み進めるのが苦しいだろう、と覚悟して読み始めたのですが、いわゆるアウシュビッツの悲惨な光景について書かれただけの本ではないということがすぐにわかりました。
心理学者という立場から、淡々と自分や周りに起きたことが記されています。
特に後半部は、ほとんどが現代社会にもつながる「どう生きるのか」ということがテーマにされているため、「昔に起きた酷い出来事に関する本」というよりも、身近に感じられる内容でした。

現代の日本では、最低限個人を守ってくれる制度はあるし、飢えや寒さやシラミや暴力、いつ殺されるかという恐怖におびえる日々を送る人は少ないと思います。
生きている時代が違う中、状況や数字などで一概に比較をすることはナンセンスだと思いますが、事実として2020年の日本の自殺者数は2万人を超えており、自らの命を絶ちたいと思い悩む人がいる現実から目を背けてはいけないなと思いました。

この本の話をしたときに、「私も読んだことがある。中学時代に先生から渡された」と言っていた人がいました。中学生が読むにしては、かなり内容が重い本だと思います。これは想像ですが、恐らく何か嫌なことがあって、すごく悩んでいるように見えたのではないか。どうか自分を傷つける道だけは選んでほしくない、何かこの本から読み取ってくれないか、と先生は思いながら彼女に本を差し出したのではなかろうか?
一体彼女に何があったのだろう、ということを考えながら読み進めていました。

以下が私が気になったポイント。
・酷い状況に置かれたとき、人間は「きっと私だけは大丈夫」と思いがち→災害で逃げ遅れるケースはこういう心理もあるんだろうな
・深刻な時ほどユーモアが大事
・人間の尊厳は決して奪うことができない→自らの心は選択できる
・希望が裏切られると、力尽きてしまう→生きる意味の大切さ
・生きる目的を持つ。人の役に立つ。→これを持つ人は色々なことに左右されず、強い。耐えられる。

フランクルにとっては、まだ結婚して間もないパートナーや家族の存在、あとは著書を書き上げたいという強い思いで何とか尊厳を保てたのだと思います。
フランクルはそれまでも成功していた頭のいい人だから…なんて特別視している自分もいましたが、どんな人にも自分だけの、生きる意味があるはず。


実際のところ、私はまだよく自分の道が理解できていません。フランクルの言葉をしっかり咀嚼できた感じもありません。
それでも、愛する家族がいる。この人達を守ることは私の大きな生きる意味であることは間違いないです。
そのほかにも、自分ができる、人の役に立つことは何なんだろう。芯のある強い生き方ができるように、色々と考えていきたいです。

崖っぷちに立った時に、都度都度読み返していく本になると思います。
間違いなくこれまで読んだ中で1番の良書です。

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