【日本代表】カタール戦は死んだふり作戦だった?【らいかーると氏対談】

今回も恒例になりつつある、私が主宰するサッカー戦術分析ゼミ「FIゼミ」で限定公開し始めた、独特の視点で試合を分析するらいかーるとさんインタビュー、を途中まで無料公開。
内容としては、
・アジアにおける日本の立ち位置
・森保監督の遅かった修正の不可思議さ
・実は森保監督の死んだふり作戦だった?
・ボール非保持よりも保持プランをどうにかしたかった
・日本が一番嫌だったはずの展開
・カタールの論理的な、日本4-4-2の倒し方
・戦術メモリの有効性と監督が音頭をとる必要性
・欧州と日本の代表の違い、レベルアップの難しさ
・カタールに負けたから日本の育成どうこうは思わない
と今回も1万1千字近くの長文で盛りだくさん。ではどうぞ。

サッカーアナライザー:さてアジア杯、カタール戦に敗退し、準優勝という結果になりましたが、まず結果に対してどう思いますか?

らいかーると:そうですね。すごい悪いわけでもなく、優勝できなかった意味では良くもないですね。アジア杯とはいえ、いつでも優勝できてたわけではないと思うので。
田島さんの言葉じゃないですけど、トーナメントってやっぱり「何があるかわからない」ので。ベスト4以上に行けてれば、日本のアジアでの立ち位置的には悪くないかなーと思いますね。

サッカーアナライザー:たしかに。

らいかーると:例えば、韓国はベスト8で負けちゃったから、国内では荒れてるんじゃないかと思いますけど。日本はベスト4ぐらいまでは最低でも上がろうねっていう立場だと思います。オーストラリアも韓国もイランもですけど。そこまでは上がらないと色んな人がうるさくなる。そういう意味では準優勝までたどり着いたことは、良かったよねという感じはしますね。

サッカーアナライザー:なるほどですね。では今回のカタール戦の雑感を前半から行きましょうか。

らいかーると:今回は珍しく色んな人の記事を読んだんですけど、やっぱりあの36分ぐらいに日本が修正するまでの間に、日本は何で動かなかったんだろうってところがみんな疑問で。

サッカーアナライザー:疑問ですね。

らいかーると:そこに対する気持ち悪い感じというか不思議な感じというか。あれは本当になんだったんだろうなーってのは思いますね。

サッカーアナライザー:何なんですかね。ぶっちゃけ少なくとも開始10分以内に気づきそうなもんですよね。

らいかーると:だと思いますよ。みんな何であれを不思議に思ったかって言うと、この噛み合わせだと、無理じゃねって思ってた人が大多数で。多分現場で見てる記者さんも、もっと言えばベンチで見ている乾選手も、テレビで見ている多くのサポーターも「これ無理じゃね」って多くの人が思ってて。

何でこのかみ合わせで頑張ってるんだろう。しかもそのかみ合わせで殴られて失点したじゃん。みたいな。

ある程度こうしたらいいのになっていう解決策が、試合を見ている人々にあるのにやらない、解決策をやらずにしかも負けてるっていうことに対する不可思議さはなかなか説明できないですよね。

サッカーアナライザー:ちょっと説明が難しいですよね。すごい不思議でした。

らいかーると:ただ、何だろう…色んな考え方があって、結構オカルト的になってるんですよね、色んな記者さんの記事とか見ても。やっぱりオカルト的に考えないと、森保監督が動かなかったことに対して説明ができないというか。

よく見るのが、選手の判断で考えて、自分たちで修正してきてくださいっていう、森保監督がわざと動かなかった説。っていうのを見ますけど。

監督の策としてあるんすよ。で、「ほらだめじゃん」っていう風なのは選手に対するショック療法としてはあるんですよ。ありっちゃありなんですよね。でもそれを代表のチームでやるの?っていうのは。

サッカーアナライザー:ですよね。

らいかーるとクラブチームだったらそんなに選手の入れ替わりってないじゃないですか。来シーズンになったら選手がガラって変わることはそんなにないと思うので、だからショック療法も選手たちを変えるきっかけとしては、あるあるな策だと思います。

そういうチームがトーナメントでやるかって言ったら微妙ですけど、リーグ戦で試合を捨てて、必要性を感じさせるために、わざとほったらかしにするってのはなくはないと思うんですけど。

ただ代表チームの場合って、4年後までに選手が結構入れ替わると思うんですよ。そうなると代表でそれやる必要あるのかなってのは思いますよね。

サッカーアナライザー:思いますよね。

らいかーると:このメンバーを固定でずっと4年間行くならありだと思うんですよ。
でもそうじゃないしなあ。
ショック療法だと考えると、不思議だなあと思います。やっぱり。

森保監督の死んだふり作戦?

らいかーると:ただ動がなかった理由ってのは戦術的にはまだあって。
わざと死んだふりするってのはあるんすよ実際に。

わざと向こうの位置の優位性、ポジショニングのうまさに対して、日本気づいてません、って死んだふりをして。
相手に修正の手を打たせないために、ハーフタイム挟んで一気に修正して殺しに行くってのはサッカーの監督としてはあるある。

だから0-1の時点でまだ動かなかったのは、それが念頭にあったのかなっていう気がしなくはないです。
でも0-2になっちゃったから、ああもうこれ以上失点したら終わるね、って。それか3失点目になりかけたポストに当たったシーン。

サッカーアナライザー:酒井宏樹がギリギリまで詰めてたやつですかね。

らいかーると:あれでもうこれ無理じゃない?って、とうとう修正したのも考えられなくはない。森保監督が広島時代にも死んだふり作戦をやってたら、ここでもやったと言えるかもしれない。

サッカーアナライザー:なるほど。たしかにそれぐらいしかちょっと説明がつかないかなあ。

らいかーると一番最悪なのが、ライターの清水さんが記事にしていたんですけど、森保監督が完全な本気を出してあれだとしたらもう無理だろうっていう(笑)

サッカーアナライザー:(笑)いやあそうですね、あれが完全に本気だったら相当きつい。

らいかーると:うん、それが多分最悪のケース。「いやあ全力で修正して、全力で準備したんですけど無理でした」っていう。そしたら「えっあれでかよ」ってみんな思う。

サッカーアナライザー:間違いない。

らいかーると:2個目が、さっき言った采配ミスじゃないですけど、死んだふり作戦の失敗。
でも、本当に殺されちゃったっていう。それだと森保監督の計算ミスでしたって感じですね。

あとはもう選手に任せたパターン、もしくはショック療法。でももう試合が終わっちゃうから堪えきれず修正したパターン。それくらいですかね。あとありますかね。

サッカーアナライザー:いやそれぐらいかな。だと思います。

らいかーると:前半の不可思議さを予測するとしたらそのどれかだと思います。

サッカーアナライザー:そのどれかなのかってのはもうわかんないですね。

らいかーると:はい、監督か選手に聞いてみないと。でもベンチメンバーはすごい一生懸命試合見てるなと思いました。槙野選手の怒りは、すごいなんかわかりましたね。twitterで怒ってましたけど。

サッカーアナライザー:仲良し軍団?みたいなやつですかね。

らいかーると:今大会の途中で乾君が「何で交代枠使わないんですか」って森保監督に聞いたという報道がありましたよね。っていうぐらいにベンチメンバーにストレス溜まってたと思うんですよ。それがなんか不満とかに出てこなかったのは、今までの失敗が活かされてるんだろうなと思ってて。

ベンチメンバーとスタメンの乖離じゃないですけど。ドイツW杯でそういうのがいっぱいあった、みたいな話から、2010年は俊輔がすごい頑張ってたとか。今回ベンチメンバーはチームのために我慢してくれたんじゃないかなあーってのは感じますね。
それは当たり前なのかもしれないけれど、簡単にできることじゃないと思います。っで、ああいうこと書かれたらやっぱむかつくだろうなあってのは。

サッカーアナライザー:そりゃそうですね。

らいかーると:あの槙野選手の反応を見ていると、我慢してたんだろうなあと思いました。やっぱり不自然なぐらいにスタメンも固定でしたし、交代策も怪我した選手がメインでしたし、それも変でしたよね

サッカーアナライザー:うん、変でした。そんなに固定するのかって。ちょっとわからないですね。

らいかーると:いくら怪我人が多かったとはいえ。だから森保監督やっぱなんかに縛られてんのかなーって勘ぐりたくなるぐらい変なことが多いアジア杯でしたね。
じゃあその縛りが何もなかったんだよって言われたら、「森保監督マジ?」ってなると思いますし。

サッカーアナライザー:そうですねー。ところでその36分以降の修正内容自体は良かったと思いますか?

らいかーると:良かったんじゃないですかね。マークがはっきりしたと思いますし。
色んな手はありますけど、一番わかりやすいのは南野くんをアンカーにつけてっていう形だと思います。

サッカーアナライザー:で、SHを前に出して。

らいかーると:はい。

サッカーアナライザー:あれで、そのまま前半終えた感じですよね。

らいかーると:そうですね。ただ前半を振り返ると、昨日見返して思ったんですけど。
あの失点した場面は本当に酷かったんですよ。残念な感じだったんですけど。

それ以外の場面は意外に守れたりもしてて。それが前半は死んだふりだったんじゃねえか?っていうちょっとした根拠。

サッカーアナライザー:なるほど。

らいかーると:うん、結構ボールを取れてショートカウンターとか、あと守備で批判される柴崎選手は、パスコースを切ったりとか周りの中で待つ守備は得意じゃないと思うんですけど、でも結構積極的に飛び出して奪うとかはやってて。

サッカーアナライザー:やりますよね。

らいかーると:だからそういうの見てると、死んだふり作戦ってもしかしたらそこそこ勝算があったんじゃないかなって気もしました

どっちかっていうと決勝戦では、ボール持ってない時の酷さはたしかにあったけど、ボール持ってるときの方が、今大会の日本って表現してもいいかもしれないですけど、やっぱ良くなかったかなー。

相手の5-3-1-1に対してどうやってボール動かすのか、とか、前半で勝負すんのか、後半で勝負すんのか、とか。そういうプランっていうのがもう少し考えても良かったのかって思いますね。

フリーになるSBの長友選手がたくさんボール受けて、長友選手のサイドは原口選手が良いオフザボールの動きをして裏に飛び出したりとか。で、右サイドは酒井宏樹選手が結構前の方に出てって、っていうサイドの崩しをしてて。

でも5-3-1-1って、やっぱそう簡単には崩れないんですよね、人が多いんで。

サッカーアナライザー:そうすると具体的にはどうすれば良かったでしょう?

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