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カリアリの快進撃キターーー!! ナインゴランってやっぱりすごくない?

学生時代、カルチョの魅力にどっぷりとハマり、今でも抜け出せない(抜け出す気もない)でいるライターの細江克弥さんが、序盤戦に起きた「なぜ?」に答えます!(11月15日発売の雑誌「SOCCER KING」より)

【SERIE A】 WHY? 20
カリアリの快進撃キターーー!!
ナインゴランってやっぱりすごくない?

文=細江克弥 Text by Katsuya Hosoe

 そういえば、このあいだ、アタランタ戦の中継を見ていて思わず口に出しちゃいましたよ。「ナインゴランうますぎ」って。カリアリは第11節終了時点で、なんと4位。序盤戦における最大のサプライズとなったチームを引っ張っているのは、もちろんラジャ・ナインゴランです。1試合でも見れば分かると思いますが、一人だけ格が違う。

 ローマですごかった頃と比較すると、体つきは2回りくらい大きくなりました。「まあ、ベテランだから仕方ないか」と思っていたら、実はまだ31歳。それでいて、キャリア晩年のフランチェスコ・トッティみたいに「ちょっと重そう」と感じる社長然とした体型をしています。

 当然、プレースタイルも変わりました。今のナインゴランは、ローマ時代のようには走らない。球際も至って冷静。つまりダイナモ的な要素は影を潜め、どっしりと構えて戦況を伺いながら、必要なときに必要なプレーをする、それこそトッティみたいなプレースタイルに変わっているのです。で、カリアリにとってはそれがめちゃくちゃ良かった。

 ナインゴランは第2節までアンカーを務めましたが、チームは連敗。ナインゴランが負傷離脱したことでヤバそうな雰囲気が漂いました。ところが、なんとその離脱期間に大ベテランのルカ・チガリーニをアンカーに据えると、これがどハマり。守備がぐっと引き締まってまさかの3連勝。ナポリにまで勝ってしまったチームは一気にまとまり、ナインゴランがケガから戻ると、ロランド・マラン監督は彼をトップ下に置いたわけです。で、これがまたどハマり(笑)。

 よく考えたら当然ですよね。“あまり動かないナインゴラン”は守備のカバーエリアが狭くウィークポイントになっていましたが、トップ下に置くと、“動かないのにうまい”から相手にとっては“飛び込みにくい”。ボールはことごとく足元に収まり、その威圧力で相手を牽制し、時間を作りながら前につなぐわけです。マジでゼロトップ時代のトッティみたい。

 中盤の脇を固めるマルコ・ログとナイタン・ナンデスには運動量があるし、ジョアン・ペドロとルーカス・カストロにはナインゴランと分かり合えるセンスがあって、ジョヴァンニ・シメオネは“ガンガン”ゴールに向かう。つまり、周囲との相性がいい。マラン監督はどちらかと言うと保守的で、もっと言えば良くも悪くも“つまらない監督”ですが、現状は、そういうスタイルが奏功してナインゴランを軸とするいい感じのチームに仕上がっています。かなり強い。

 ベルギー代表でもインテルでも、ナインゴランはチーム随一のプレーヤーでありながらなぜか構想外となってしまいましたが、本人は「俺が独りぼっちだったことは現在も過去にも一度もない。『インテルのロッカールームを乱す問題児』だったと書かれたが、俺は誰にも面倒をかけたことはない」と完全に否定しています。そもそも古巣カリアリに戻る決断をしたのは、がんを患っている妻クラウディアさんが故郷サルデーニャ島でじっくりと治療に専念できるようにするため。まだ31歳のトッププレーヤーにしてそういう決断ができる男が、「ロッカールームを乱す問題児」であるはずがないですよね。そう思うからこそ、今シーズンのナインゴランとカリアリにはめちゃくちゃ期待しています。

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