ホワイト解任は時期尚早。改善の兆しが見られる攻撃と課題多き守備。現在地と課題を整理する。

まさかの再逆転を許しての負け

 前節、今季初勝利をあげたヴェルディがホームに迎え撃つのは未だ今季勝利がない栃木SC。ホーム連戦で勢いをつけていきたいヴェルディであったが、この日も立ち上がりから苦しむことになる。13分、優勢に試合を進めていた中で中央を崩されて失点。しかし、直後の15分に林陵平が2戦連発となる同点弾をあげると、31分にはCKから李栄直が決めて逆転に成功する。後半も落ち着いてゲームを勧めるヴェルディであったが、栃木が2人同時投入からシステムを変更するという大胆なベンチワークを見せると77分、87分と立て続けに連続失点を喫し、再逆転を許し試合終了。試合終了後のゴール裏からは罵声が飛び交うなど険悪なムードで試合を終えることになってしまった。

徐々に見えてきた攻撃の形

 攻撃の形は少しずつ見え始めてきた。

 ヴェルディは、基本布陣は4-4-2だが、攻撃時は田村が後方のビルドアップを助ける形でDFラインに入り、左サイドの佐藤が中に入り、そのスペースに奈良輪が出ていく3-5-2の形に変形する。

 攻撃での約束事は主に2つあると推測する。

1.選手間の距離は5m程度
2.大外レーンに2人入る

1. 選手間の距離は5m程度

 選手間の距離が5m程度というのは、ポジショナルプレーの立ち位置をもとにしつつ、ボールサイドに寄るということだ。これにより、中盤3枚の立ち位置はかなり流動的になり、ワンサイドアタックの傾向が強くなる。故に中盤には攻撃的かつ守備をこなすことができる人材が求められており、守備的MFかつバランサーの内田が重宝されなくなったのはここに原因があると思われる。


 図は57分のシーンを取り上げた。自陣からのワンサイドアタックで一気にチャンスを作り出した場面である。梶川が運び、縦パスを受けた端戸がフリックで左サイドの佐藤優平へ。佐藤がボールを持ち運び、梶川のフリーランを囮に小池へスルーパス。最後は中の林陵平と合わなかったことでフィニッシュまで持ち込むことはできなかったが、ボールサイドに人数をかけるオーバーロードでチャンスを作り出した。今季はこのように意図的に狭いスペースを作り出し、突破をすることでチャンスを作り出すワンサイドアタックが多くなっていくのではないか。ワンサイドアタックにおいて、必要なのはコンビネーションとスピード感。なるほど、GAFFAがこうした練習テーマを多く採用する理由はここにあるのであろう。

2.大外レーンに2人入る

 大外レーンに2人入ることは約束事だろう。前節の金沢戦もそうなのだが、FWのうち一人(主に端戸)が流れる場面が多く見られた。得点シーンもこの形から生まれている。ハーフスペースからサイドに流れることでCBを外に釣りだすことができる。実際、林の同点ゴールもこの形から生まれている。端戸が3バックの左CBをひきつけることで生まれたスペースに梶川が飛び出す。こうして、空いた右サイドのスペースにスルーパスを送り、小池の完璧なアーリークロスから林の豪快なダイビングヘッドが決まった場面だ。まさに狙い通りのゴールだろう。


 また、もう一つの例として、前半30分の逆転弾につながるコーナーキックを獲得する場面を紹介したい。この場面では田村と小池が大外レーンに入り、小池が中に入る動きで対面するDFを中に誘導し、空いたスペースに田村が出ていくことでチャンスとなった場面だ。クロスこそ上がらなかったものの良い攻撃であった。

 攻撃 まとめ

 下からのビルドアップには未だ課題は残るものの昨シーズンまでと同様ポジショナルな立ち位置を取ることでボールの前進を図ることは同様である。しかし、違うのはここから。前進するボールサイドが決まると選手間の距離を狭くするワンサイドアタックや大外レーンに2枚配置することが行われている。ロティーナ時代の攻撃のキーワードである「幅を使う」「ハーフスペース」「大外からのクロス」というキーワードは残しつつも、ホワイト体制からのキーワード「スピード感」「コンビネーション」が融合しているような攻撃の形を披露し始めている。今後は下のビルドアップの安定感をさらに高め、コンビネーションで打開する形をどこまで作れるか、が重要になってくる。

安定感のない守備

 今季、サポーターが頭を悩ませているのは守備の安定感が前任者と比べ、圧倒的に欠如していることだろう。これについては筆者も同様の感想を持っており、守備面での改善が見られなければ今季の昇格は到底難しいと言わざるを得ない。
 何度もレビューで触れてきたことであるが、まだ取りどころが不明瞭であることは大きな問題点である。1失点目は小池の判断とチームの意識が合わなかったことで起きてしまった典型的なシーンである。本来なら中を切り、外にボールを誘導することでボールを奪うべき場面だった。このあたりのすり合わせの作業を今後のトレーニングで早急に行っていくべきだ。

守備とはいったい何なのか。

 そもそも守備とはいったい何なのか。守備とは相手に得点を許さない、すなわち失点を防ぐことだ。つまり、トランジションのようなスクランブルな状況ではなく、ある程度陣形を整えて攻撃を行う相手からどのような手段で相手にゴールをさせないのかということだ。ロティーナ体制においての守備での局面はゴール前にダムをつくり、ひたすらにスペースを守ることを徹底した。しかし、ホワイト体制下においてヴェルディは敵陣に近い場面でボールを奪うことに挑戦している。ボールを奪うことができる状況は以下の2つが考えられる。

・ボールホルダーに十分なプレッシャーをかける
・スペースをなくす

 ボールを奪うにはパスコースをなくし、ボールを運ぶという選択肢を消さなければならない。攻撃において、ボールホルダーの選択はパスをする、ボールを運ぶという2つの選択肢が主だからである。

4-4-2が持つ利点と欠点

 4-4-2の守備組織はロシアW杯でも多くのチームが採用していたようにバランスが良く、短期間で守備組織を構成しやすい。比較的シンプルに守ることができる。しかし、スカサカライブで岩政さんもおっしゃっていたように4-4-2は均等な分、均等に穴がある布陣でもある。つまり、ボールの奪いどころを共有し、あるスペースにおいて数的同数、あるいは数的有利の局面を作り出さなければならない

守備 まとめ

 守備においても自分たちから局面を作り出す積極性を身につけなければならない。そのうえで、より高いインテンシティでボールホルダーにプレッシャーをかける必要がある。まだ選手たちの間では強度の高いプレッシャーを懸けるか否かといった迷いが生じているように思える。選手の意識改革にはまだまだ時間がかかるのかもしれない。
 だがしかし、主将・近藤の復帰でラインコントロールが安定してくるなど改善されたところも多い。今後の守備組織の改善に期待しよう。

まとめー吹き出すホワイト解任論は適切かー

 開幕4戦で3敗を喫したホワイトヴェルディ。そこで突如として出てきたホワイト解任論。しかし、当ブログでも何度も述べたように「破壊と進化」の過程にあるチーム状況の中でも毎週着実に成長の証を見ることができている。にもかかわらず、ホワイト解任論が噴き出してきたのはなぜか。それはロティーナが偉大な指導者であったから。つまり、我々サポーターも前任者の影に苦しんでいるのだ。まず、我々がすべきことはまず、ロティーナの存在を忘れること、そして今のヴェルディを応援すること。監督に矛先を向けるのではなく、試合の中で何が起きているのかを整理すること、言語化すること。その参考に当ブログがなることができれば、筆者としても幸いである。