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さあどうなるvsモンテディオ山形。敵はリスクを冒さず、堅実に。試合は我慢比べの様相か。

自動昇格圏内である2位との勝ち点は14にまで広がった。正直、自動昇格圏内に食い込むのはかなり厳しくなったのが現実だ。一方、プレーオフ圏内である6位との勝ち点差は8とまだ辛うじて挽回することができる位置につけている。今節、味スタで迎え撃つのは4位につけているモンテディオ山形であり、上位陣との勝ち点差を縮めるチャンスである。そんなプレーオフ進出へ絶対に負けられない試合を徹底分析する。

1. 直近5試合の山形の成績

第23節 vs ファジアーノ岡山 0-1 ●
第24節 vs 徳島ヴォルティス 3-1 ○
第25節 vs アビスパ福岡 1-2 ●
第26節 vs 大宮アルディージャ 2-3 ●
第27節 vs アルビレックス新潟 2-0 ○
リーグ順位:4位
得点数:32(リーグ14位)
失点数:21(リーグ3位)

2. 両チームの予想フォーメーション

ここ最近の試合と選手のコンディションを考えて、予想したフォーメーションは以下の通りである。あくまで、筆者の予想なのであまりあてにはしないでください(笑)。

モンテディオ山形の布陣は開幕からお馴染みである3-4-2-1システム。

一方、ヴェルディは新加入のクレビーニョが今節の選手登録に間に合わず、前節途中出場ながら1G1Aを記録した河野が久々の先発復帰か。

3. モンテディオ山形を徹底分析!

攻撃

・ビルドアップ

ビルドアップは基本的に3CB+2DHで行い、ビルドアップ時、両WB、シャドーはともに高い位置を取り、あまり下に人数をかけないことが特徴だ。敵からプレスを受けた際は無理に剥がすのではなく、迷わずロングボールを選択する。その際、ターゲットとなるのはジェフェルソン・バイアーノ(以下、JBと略す)あるいは両サイドの裏にシンプルにロングボールを送る。JBは中央に残るだけではなく、サイドにも流れて肉弾戦を挑んでくるため、この上なく厄介である。時折、南がライン間に位置することで、ビルドアップの出口になろうとしている場面も見受けられるが、「プレスを受けた際はロングボールで前進を試みる」と言い切っていいのではないだろうか。

・崩し

ロングボールに対してのセカンドボール回収、あるいは相手のプレッシャーが弱く、ローリスクでボールを敵陣まで運べた場合はシンプルにサイドからのクロスで得点を狙うことが多い。その際、ボランチが関わりに行くのではなく、ボールサイドのHVが積極的に攻撃参加を行うことが特徴だ。これは、ボランチがボールを失った際に中盤のフィルターとしての役割を求められているからに他ならない。サイドではWB、シャドー、HVが関わりながらサイド攻略を目指す。比較的シンプルなクロスに対しても中にはJBと逆サイドのシャドーの最低2枚は常時、クロスに対して備えているので、要注意である。


参照)Football LAB

このグラフは今シーズンのモンテディオ山形の全得点の内訳を表したものである。
グラフを見ていただければお分かりのように、セットプレー(PKを含む)・クロスからの得点が実に全得点の65%を占めている。グラフからも山形がローリスクかつ効率の良い攻撃を展開していることが読み取れる。

守備

山形は敵陣内と自陣での守備でフォーメーションを変えることが特徴である。

・敵陣内での守備

多くの3-4-3のチームは、守備時は5-4-1へと変形し、リトリートするのが普通だが、山形は5-2-3でボールを奪いに行く守備を行う。

そのために欠かせないのがシャドーの選手の守備の立ち位置である。シャドーはCB-SBの中間ポジションをとり、CBの球出しを絶妙な立ち位置で牽制する。そして、タイミングを見つけ、守備のプレスにスイッチを入れる。この動きに連動し、ボールサイドのWB・HVはスライドを行い、ボールを高い位置で奪い取り、カウンターを行う場面が今季はよく見られる。

・自陣での守備

自陣では5-4-1に変形し、スペースを守ることを優先する。だが、自分が守るべきエリアに敵が侵入してきた場合は執拗に潰しに行く。つまり、「ゾーンの中でのマンマーク」とも言い換えることができるだろう。

トランジション

ボールを失った際は前述したように本田-中村の対人に強い2人が中盤でのフィルターとなり、敵のカウンターを阻止する。

一方、ボールを奪った際には迷わず前線のJBにボールを預け、一気に選手が出ていく場面が多い。特にシャドーやWBはJBの裏を思い切りよく飛び出して行くことが多く、JBに起点を作られてしまうと、カウンターを食らう場面も出てきてしまうかもしれない。

4. 試合におけるキープレーヤー


JB

屈強なフィジカルを武器に山形を牽引する助っ人FW。今夏、主軸であった坂野が松本に移籍し、さらに彼にかかる期待は大きい。攻撃ではターゲットとして敵との激しいバトルも厭わないブラジル人ストライカーは過酷さが増す夏場に徐々にコンディションを上げてきている。今季6ゴールを挙げている頼れる9番がヴェルディに襲いかかる。

JBに攻撃の起点を作られないことはこの試合の戦局を大きく左右する。筆者は対人には滅法強い李をCB起用と予想したが、永井監督の決断やいかに。

5. 試合展望

山形は攻守において、リスクを排除し、堅い守備をベースに効率的に得点を奪う試合運びを狙っている。選手の戦術理解度も高く、徹底したスタイルで堅実に勝ち点を奪い、現在リーグ戦4位と2014年以来の昇格の可能性を十分に残している。

今節はやはり我慢比べの様相になるのではと筆者は予想している。そんな中、キーポイントは3つある。

1つ目は「立ち上がり」である。ヴェルディはここ4試合のうち実に3試合で最終ラインでのミスから失点を喫している。となると、試合の流れが不安定である立ち上がりの5~10分は、山形は高い位置からプレスをかけるのではないかと予想される。ヴェルディとしてはどのように相手を剥がし、自分たちに流れを引き寄せるか。京都戦では立ち上がりの2失点でリズムを持って行かれ、大敗を喫しただけに集中した立ち上がりが求められる。

2つ目は「ミスマッチ」である。ヴェルディのウイングストライカーと山形のWBはヴェルディの攻撃時、噛み合わせが合わないポジションとなる。敵DFの最終ラインを押し下げる役割がウイングストライカーには求められているが、永井監督就任以降、未だ効果的に敵最終ラインの背後を取った回数はないと筆者は記憶している。ウイングストライカーにはこれまで以上に敵の最終ラインを広げ、裏を狙うことで押し下げる役割が求められる。
一方、ミスマッチは攻撃時だけでなく、守備時にも当然ながら存在する。ヴェルディは残念ながら3バックに対する守備が苦手である。永井監督の初陣となった愛媛戦はヴェルディの4バックに対して敵は3バックだったが、後半からミラーゲームにすることでゲームを安定させた。今回はどのような守備の原則を設け、どこを奪いどころに設定するのか。守備戦術の構築が急務とされている中、ミスマッチに対する解決策が気になるところだ。

3つ目は「ボールの失い方」である。おそらく、ヴェルディがボールを保持することはできる。だが、どこまでボールを運べるか、どの位置でボールを失うかによっては失点に直結してくる場面にもなりうるし、ボールの即時奪回も可能だ。先日のSBGの記事内にて、永井監督は「いい失い方であれば、すぐに奪い返して攻撃を立て直せる」との発言を残した。果たして、山形戦ではボールを即時奪回し、ゲームを圧倒的に支配するヴェルディが見られるだろうか。

プレーオフ圏内にも黄色信号が灯りつつあるヴェルディ。まさに崖っぷちともいえる状況で起死回生の勝利を上位陣相手にあげられるか。注目のゲームは8/18(日)19:00味の素スタジアムでキックオフ!!!!!