小さく小さく、大きく長い戦い

体と隣のリュックが揺れる。
エンジンのリズムと道路にあわせて。

見えるのは駅前。
旅路のはじまり。
右手にはスマホ。
左手には財布を。

私は隣の県を目指す。
そう、私は今バスの中にいる。
目的地を目指しているのだ。

旅とは、
ワクワクと不安が交錯し、
ぶつかり合い、そこにロマンや生きる感覚を味わうものでもある。

しかし、
今回の旅路はいつもと違った覚悟があるのだ。

ただ、
1つバスをずらせばよかったのかもしれない。
何よりも時間がなく、
そして、不安の中にもどこかで大丈夫だという自信があった。

私の中の不安と自信は、
ぶつかり合い、自信の僅差での勝利であった。

私はおもむろに、
最近流行りのBluetoothのイヤホンに電源を入れ
今聴きたい曲をかける。

到着予定時間とちょうどいいくらいの
アルバムである。

その曲たちの楽しげな雰囲気、
そして音楽の時間を忘れさせる力を信じ、
信頼と好奇心を胸に、再生ボタンを押す。

そこには、
不安と私のもつ自信への疑惑と不信感が、
意識という箱の中の隅っこにひっそりといた。

私は気づいていたのかもしれないが、
知らぬふりをし、自信という鎧に己を包んだ。

少しの波と、
違和感を感じながらバスは進む。

私は、それを見ぬように、
気づいてないふりをするように、
意識を睡眠へともっていく。


ふと目を開けると、
そこは波打った壁に囲まれる道。

「あぁ、高速に乗ったんだ。」

現代の技術力や経済の活性化、
産業の発達による、生活圏の上にある道。
それが高速道路であり、
第二の道として、地域をつなぎ、
都心への入り口を紡ぐ。

高速に予測していたよりも早く乗った。

これが、
私の安心する材料となった。
私は意識、筋力共に安心し、脱力した。

しかし、
やつは隙を見せることを許さない。
獲物をみるチーターのように、
面を合わせ戦う戦士のように。

やつは一瞬の隙をつき、
間合いを詰め、私の懐へ入り込む。
感覚的にも物理的にも。

私はすかさず、
意識を集中し全身に力を込める。

戦いとは、力をいかに抜き自然体であるか。
力とはいかに入れるかではなく、
いかに抜けるか、
硬ばらず、力まないことが大切なのだろう。

しかし、
私にはその精神力も余裕もなかったのだ。

その瞬間に、
時間とは質量を変化させ、
形を変え、長さが変わる。
攻撃的にもなる。

イヤホンから流れる音楽も、
スマホを触って表示される、
定義づけられた時間の数値。

それらは、
突然にゆっくりとなり、
私に攻撃的だと感じるようになる。

時間とは、
思いに反し絶対的で相対的なのである。

ふとバスの窓を覗くと、
見える景色は壁の間にたまに見える、
民家と自然豊かな山々。

自然とは時間の経過を忘れさせ、
その壮大さを感じさせるが、
今の私にはそうはいかない。

居ても立っても居られず、
マップを開く。
文明の利器を用いて鳥の目を感じ、
この旅路は小さく、
取り留めもないと感じたかった。

しかし奴は、
私の私の腹部を掴み、ニヤリと笑う。

世は諸行無常、盛者必衰である。
奴は遠くへ行き、闇に消える。

私はふと安心するが、
すぐにまたやって来る恐怖と戦う。

時間は過ぎない。
数字は嘘をつかないが、嘘をつく人は数字を使うと聞いたことがある。
私は自分の本心に嘘をつきたかったのだ。

暑くてつけたクーラーは、
今や消し、暑くはない。
むしろ寒いくらいである。

しかし、
汗が止まらないのだ。

心が棒のように感じる。
しなってしなって、
今にも折れそうである。

奴が来て、
必死にその棒を支え、耐える。

折れないように、折れないように。

自分を信じ、繕いながら。

着実に目的地には近づいている。
それだけを心に刻み込む。

意識をそらすことと、
奴に対処すること。
矛盾したことを同時に行う。

これがよく聞くマルチタスクなのか、、
そんなことを考えながら。

しばらくすると、街へ出た。

たくさんの車が走り、
目的地はすぐそこである。

奴は隙を与えない。

バスの窓に反射するたくさんのブレーキランプ。

私には、
強すぎる刺激的な色である。

私はあと一息あと一息と言い聞かせ、
到着を待つ。


しばらくすると、
見覚えのあるターミナル。

「着いたんだ、、、」

私は希望と達成感に浸りながら、
最後の気合を振り絞る。

平然を装い、バスを降り、
落ち着いて自動ドアを抜ける。

ドアの鍵が青の表示になっていることを確認し、少し笑みがこぼれる。

磁器でできたそのボディと上に乗る、
プラッチックの蓋。

ドアの裏に抱えていたリュックと
背負っていた何かをかけ、
ゆったりと腰掛ける。

私は安心しきった。
いつの間にか、私の目的地はここになっていた。

しかし安心してはいけなかった、
私は集合時間に遅れ、あの公園へ間に合わなかったのだ。

でも、、、
頑張ったよ自分、、、
お疲れ様。


くだらないこと
読んでいただいてありがとうございます。

表現と捉え方、
切り口でたくさんたくさん1つのことから感じ取れて、なんだか面白い。

そんなことが伝えられればいいかなぁ、
と思って書いてみました。

そして、
少し余裕を持って笑顔で過ごしていきましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?